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僕たちはわからないままだ

子供の頃、漫画って悪いモノ扱いだった。
読んだら馬鹿になるとかさ。
そんなもん読んでも何にもならないとかさ。
だから単行本なんかあんまり買ってもらえなくてさ。
何度も同じ雑誌を読んだり、途中の一巻だけ持ってたり。
なんか全巻揃って持ってるとかはあんまりなかった。

線も太くて、真っ黒に塗ってる箇所が多くて。
少年漫画ですら、いわゆる劇画風が多かった。
だから鳥山明先生のDr.スランプと、江口寿史先生のストップひばりくんを初めて見た時は、こんなポップな漫画があるんだ!って思った。
もっともポップなんて言葉も知らなかったから、なんか別の言葉だったんだと思うけれども。
少女漫画を初めて見た時にその線の細さに驚いたんだけれど、それに近い衝撃を受けたと思う。

スポーツ選手、アーティスト、政治家。
それ以外でここまで全世界からお悔やみが届くのは初めてみた。
漫画家はもちろんだけれど小説家とか作家の世界で初めて。
それもジャンルを超えてあらゆる業界、大使館まで。
海外のニュース速報についているコメントの数も物凄い。
全世界って西欧だけじゃなくてアジアや中東、アフリカ、南米と、もう地球上のあらゆる地域から届いている。
KAMEHAME-HAが全世界で通用する言葉になっている。

文化として世界規模ですでに認められていた。
いつの間にか。
あんなに大人たちに読むなって言われていたのに。
そこまで文化として成熟しているんだなぁ。
全巻揃って漫画を持っているのなんか当たり前になってる。
一つの文化をそこまでの高みにおしあげるってことのすごさ。
想像を圧倒的に越えていて、感動的ですらある。

僕は、がっちゃんが好き。
くるくぴぷ。って言うとさ。
アラレちゃんには何を言いたいか伝わるの。
他の登場人物や読者には何を言っているかわからないの。
ものすごくかわいいのに、なんでも食べちゃう。車も地球も。
見た目は天使なのに、なんか電撃みたいなのを出したりする。
実はとっても危険な存在。実は最強。
だけど、アラレちゃんとだけは会話が成立して楽しそうにしてるの。
なんだよ、がっちゃんって。どうやったらそれが生まれちゃうのよ。

アラレちゃんもロボット。
生まれたばかりだから無邪気で幼い。
でもロボだから人間より力が強い。
その割には眼鏡をかけてたりするんだけど。なぜか。
そのアラレちゃんだけが言葉がわかるっていうのがさ。
なんか、もう好きだったなぁ。
たぶん、こんなこと言ってるんだなーって想像しちゃうのがさ。
ペンギン村はおかしな登場人物ばっかだったけどさ。
がっちゃんはなんか特別だった。

たくさんの悟空をみた。
皆に愛されていたんだなぁ。
悟空は確かに最高だったからさ。
僕は少しだけ世代がズレているからかなぁ。
がっちゃんが、アラレちゃんと笑っているのが思い浮かんだ。
鳥山明先生の周りに、がっちゃんが飛んでいる。
それで無垢な笑顔で笑ってる。
アラレちゃんも笑ってる。
鳥山明先生も思わず笑っちゃって、ほよ?とか言い出す。

アラレちゃんだけじゃなくてさ。
鳥山明先生もあの言葉の意味がわかる限られた人だからさ。
僕たちはそれをみても何を言っているかわからないままだ。

くるくぴぷ。
くぴぷぅ。くぴぃ。
心の中でその言葉だけを届けてみるよ。


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