コロナ化の吉野家で#マーケティングトレース
吉野家とは
今回トレースするのは、牛丼チェーンの吉野家です。2021年2月期の決算では、売上高は518億86百万円と、コロナウィルスの影響もあり前年同期比5.2%減でした。
【2021年2月期 第2次四半期決算説明会】
また、吉野家といえば、常務取締役に元P&Gの伊東正明さんが務められていることでも有名です。今日はコロナ化の2020年の吉野家をマーケティングトレースしていきます。
マーケティングトレース
PEST分析
外食業界の外部環境の特徴としては、
・コロナウィルスによる外食習慣の落ち込み、外出の落ち込みが売上に影響しやすい
・コロナを機に、お家でご飯を食べる習慣が国民の中で増えた
・テクノロジーの導入で自動化や省人化がこれから進みうる
・食糧不足の問題や環境問題への影響などが示唆されており、代替肉の開発が進んでいる。
といった特徴を持っています。
競合分析
STP(セグメンテーション・ターゲティング)分析
正直、飲食店の場合は顧客層が幅広く一概にはターゲットを決められないのですが、仮置きとして、以下を出してみました。
これまで吉野家が惹きつけてきた典型的な顧客像に加えて、最近取り込もうとしている女性層を想定しています。
STP(ポジショニング)分析
ポジショニングでは、吉野家は創業時から作ってきた牛丼を始めとする牛肉製品をサービスのコアと捉えて、牛肉製品のクオリティを上げているのに加えて、安定的な低価格で提供している企業として、市場の中で位置付けられていると思います。
成功要因の要約
ここからは、コロナ化において、吉野家がどのようなマーケティング施策を行ってきたのかを分析していきます。
まず、吉野家の売上モデルを分解して、要素ごとにどんな施策を行っているかを分析していきましょう。
吉野家のサービスは、店舗と公式オンラインサイトにおいて、牛肉関連の商品を作り、販売する事業です。そのため、売上のモデルは、
売上=来店客数(利用者数)+来店頻度(利用頻度)+来店単価(利用者単価)
で分解することが出来ます。例えば、もし吉野家の売上を2倍にする方法を考えるとしたら、来店頻度を2倍にする方法を考えてみるなどのアプローチが出来ます。
それでは、それぞれの施策を見ていきます。
①来店客数拡大の施策
これまで吉野家がターゲットにしてきた働く男性とは異なるターゲットに向けた施策が多かったです。
たとえば、糖質を気にされている女性向けの施策やファミリー層向けのテイクアウトセット販売。ポケモンとのコラボ丼の提供など、これまでより幅広い層に向けたサービス提供に挑戦しています。
②来店単価アップの施策
単価を上げる施策としては、なるべく店舗側のオペレーションを増やさずかつ牛肉を主軸とした新商品や増量商品の販売、家で食べれる商品の開発・提供などです。
焼きそばや缶詰など、オンライン販売ではこれまでのビジネスにとらわれないサービス提供をしていますね。
③来店頻度を上げる施策
来店頻度を上げる観点では、いままで来店していなかった朝を狙った朝ごはんメニューの充実やテイクアウト時に利用していなかった家ごはん需要など、より来店頻度を上げる施策を行っています。
④その他施策=LTVの向上
その他の施策としては、家で吉野家を食べる頻度を上げるために、「スマホオーダー機能」や「デリバリー専門店」、「#おうちで吉野家企画」など、より利用頻度と利用客層を広げる様々な施策を行っています。
また、PEST分析で出していたfoodtechの活用も進めているようです。
学び
①自社のビジネスを因数分解する
まず、吉野家の施策に見える、自社のビジネスを因数分解して、それぞれに対して、改善施策を打つというセオリー通りの施策展開をされている点です。
もともと興味がない人を連れてくるのは大変ですが、1回の人を2回にすれば、それだけでビジネスは2倍になります。これは当時のファブリーズも一緒で、購入者数を増やすより、購入頻度・使用頻度を上げる方が大きかった。『吉野家 伊東正明氏が明かす、ヒット商品を生み出す「アイデア開発とフレームワーク」』
②顧客に選ばれるために、自社のCOREを理解し、活用する
吉野家は一時期、増える他の競合に勝つために、牛肉以外の製品が増えていました。しかし、それでは吉野家のブランド価値が下がってしまいました。
ブランド価値を上げるために、牛丼というCOREに立ち返っています。
そこでまず、初めにするべきは、“肉”“や牛肉”と吉野家のリンクを高めて、その引き出しの一番手前に来ることだと考えました。とにかく牛肉関連商品の販売構成比をひたすら上げて、それ以外の優先順位をどんどん下げることを決めたんです。これが、外部にも言っている「コア&モア戦略」の「コア」です。
例えば、世の中で「高タンパク・低糖質」の食事を食べたいというニーズがあれば、顧客の頭の中に想起中で上位3つの中に入る必要があります。
そこで吉野家では、ライザップとコラボして、「高タンパク・低糖質」の引き出しの中で、上位に入る施策を行いました。
人が1日3回365日、つまり1095回の食事の中で、うちがどこで勝てるか、そこそこのサイズがある引き出しを見つけて、キャンペーンや商品の企画を続けています。
食事市場を年間1095回と捉えて、その1095回に占める自社の割合を増やしていく思考は大事ですね。
1095回の専有割合を占めるという観点では、朝ごはんメニューの充実をしています。お店に通う頻度を上げて、牛丼を食べる習慣を増やす狙いです。
これらの施策を通して、より多くの人により多く牛肉を食べてもらい、吉野家へのライフタイムバリューを上げる狙いがあるようです。
③ユーザーのインサイトの変化を常に見つめて、変化に合わせた施策を実行
全体を通して感じたことは、自社がサービスを提供している・これから提供したいユーザーの生活の変化やそこから生まれるインサイトの変化を捉えた施策を実行することの重要さです。
例えば、コロナで学校が休校になり、子供のお昼ご飯を作る必要がある親御さんたちは、「毎日ご飯を作るのは大変だから、簡単にしたいけど、同じだと子供が食べたがらない。。」といったインサイトの変化を捉えて、解消するアプローチをしていたり、
仕事が終わりで疲れたお母さんが「自分でご飯を作るのは大変。。簡単においしく済ませたい。。」というインサイトに対してもテイクアウト強化やテイクアウトの効率化などを通して、対応をしていたり、
インサイトの変化を捉えて、適切にそして数多く施策を打っていく姿勢が印象的でした。
アイデアを出すには、ずっとアンテナを張っているしかないと思っています。私の場合、吉野家の平日/休日・時間帯、そして立地別の客数、客単価などが頭に入っています。そして、どのタイミングでどの店舗へどんな客層に来てもらいたいのかを通勤している時も、どこかの店に行く時もずっと考えているわけです。『吉野家 伊東正明氏が明かす、ヒット商品を生み出す「アイデア開発とフレームワーク」』
この、いつ、どこに、どんな人が来るのかというパターンの多さが「アンテナの数」です。だから、なぜできるのかと問われれば、たぶんアンテナの数が多いという答えになるでしょう。『吉野家 伊東正明氏が明かす、ヒット商品を生み出す「アイデア開発とフレームワーク」』
そして、このパターンごとの戦略の精度が「アンテナの感度」。これを高めるためには、店舗の冷蔵庫にある食材や現場のスタッフの力など、吉野家ならではと言える強みやブランドイメージといったリソースを組み合わせることが必要です。『吉野家 伊東正明氏が明かす、ヒット商品を生み出す「アイデア開発とフレームワーク」』
(吉野家の)ライバルは飲食店ではなく、コンビニやスーパー、冷凍食品だ。年365日、1095回の食事のうち、平均的な外食回数は100回程度と言われている。ということは、われわれにとっては、あと1000回もチャンスがある。『吉野家、P&G出身役員が変えた「牛丼の売り方」』
自分でマーケティングをする際も、現状のビジネスを構造分解し、分解した要素それぞれを改善する上で、既存のユーザーや新規のユーザーの生活の変化や行動の変化などを捉えて施策を出す
といったことを意識したいと思いました。
また吉野家に関しては、食に関する社会的な問題や時代の変化に対して、今後どのような施策を打っていくのがが気になります。
引き続きウォッチしたいと思います。