化粧品大手オルビスから見る業界動向
今回は、化粧品業界のオルビスをみていきたいと思います。
オルビスは、カタログ通販を通した顧客とのダイレクトマーケティングにより成長してきた企業です。
化粧品業界の中で大きな売上をもつオルビスがどんな変化をしようとしているかを整理しました。
オルビスとは?
オルビスは、通販化粧品の業態で1988年に販売開始をした会社。化粧品・ボティウェア・栄養補助商品などを扱っています。
現状、売上高は500億円を超え、ファンケルやDHCなどのブランドと並ぶ御三家企業と呼ばれます。
化粧品業界では、通常メーカーと消費者の間に卸売店や小売店などの中間業者を介して消費者に商品を届ける企業がほとんどでした。
しかし、オルビスは中間業者をいれずに、顧客と直接コミュニケーションをするOne to Oneマーケに注力して、成長してきました。
消費者に直接商品を届けるため、自社で物流施設を抱えており、
・最短次の日までに届ける
・初回は送料無料(2回目以降は3,300円から)
などの特典を提供しています。
では、ダイレクトマーケティングを強みとしてきたオルビスがどのように変化をしようとしているかを見ていきます。
①店舗とECサイトの役割転換
化粧品は、店頭で利用しないと購入を決められない商品とされています。
そのため、業界全体のEC化率は6%と低く成長の余地があります。
ダイレクトマーケティングを行っていたオルビスでもオンラインでの購入体験やブランドに対する愛着をより高めるため、オフライン店舗の位置付けを変えようとする取り組みが始まっています。
具体的には2020年7月にオルビス初の体験型店舗「オルビススキンケアラウンジ」をオープンさせました。
この店舗は、オルビスのブランドミッションである「ひとりひとりが持つ美しさが、多様に表現されるここちよい社会へ。」を体現する場所です。『「ここちを美しく」とはどういう場所か』という問いから生まれています。
肌相談やメイクアップレッスン、肌質チェックなどを通して、自分に合ったスキンケアを理解できる店舗となっているようです。
以下のような店舗の役割変化が見てとれますね。
【購入体験の変化】
・店舗:購入場所→体験場所
・オンライン:店舗販売の補助→購入場所
②BA(Beauty advisor)のオンラインシフト+デジタル化
オルビスのリアル店舗ではBAと呼ばれる肌ケアやメイクに関するスペシャリストが所属し、顧客それぞれにあった美容のアドバイス、商品紹介を行っていました。
・肌のカウンセリング
・メイクアドバイス
・スキンケア商品の正しい使い方
・オルビスの各商品についての相談に応じる
コロナ渦ではBAへの相談はオンライン化されており、どこでも気軽に無料相談予約ができるようになっています。
空き時間や仕事終わりに相談がしやすく、商品購入後のアフターフォローとしても使われているようです。
また、ビューティーアドバイザーの知識を蓄積し肌質診断やパーソナライズカラー診断などのコンテンツに転換を行い、診断からの新規会員獲得や商品の提案なども行っています。
③ユーザーデータを活用した体験価値の向上
オルビスは自社でアプリを開発しており、アプリダウンロード数は2020年8月時点で230万ダウンロード、MAUは50万人を超えています。アプリでは、主に、肌診断やパーソナルカラー診断、美容記事などの美容コンテンツを多く提供しています。
これまで蓄積してきた顧客データの活用により、顧客それぞれにあったコンテンツ提供にも取り組んでいます。
化粧品を販売して終わりではなく、コンテンツの提供を通して、コスメや美容に関するメディアとしての側面も強めていますね。
顧客がオルビスに触れる時間を伸ばしつ、オンラインでのスピーディーな購入体験を提供することで、リピート率やLTVの向上に寄与していきそうです。
まとめ
今回は化粧品ブランドオルビスの取り組みを分析していきました。
整理していくと以下に集約されるかと。
①購入はオンラインで行い、店舗はブランドビジョンを体験する場所
②オフラインで行っていたサービスのオンライン化により、
物理的な縛りがなくなり、幅広いエリアにサービス提供が可能に
③パーソナライズデータをもとに、顧客それぞれに合った商品や情報の提供
これまでダイレクトマーケティングでやってきたOne to One マーケティングを時代に合わせて強化しつつ、オフラインとオンラインの境界線を意識させない体験になりつつありますね。
化粧品企業のEC化率の引き上げの点に関して、競合企業の資生堂は、2023年までに売上のEC化率を25%(2019年13%)まで引き上げると発表してます。
ここ数年は化粧品業界全体でEC化率引き上げに取り組む年になりそうです。
また、オルビスは、最近メンズブランド「オルビスMr.」の販売も強化しており、メンズ化粧品市場でどのようにシェアを取りに行くかも気になる点なので、引き続きみていきたいと思います。