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ムーミンコミックス 29話「ムーミン谷の宝さがし」あらすじと感想
ムーミンコミックス 29話「ムーミン谷の宝さがし」
Moomin Comic Strip No.29 “Moomin and the Goldfields”
![momi_takara01](https://assets.st-note.com/img/1738046045-QEpdj1QhHr.jpeg)
・あらすじ
偶然宝の地図を見つけたムーミン一家。こっそり宝を掘り出そうとするが、谷のみんなにバレて大騒ぎに。ムーミンママは、採掘者が成果無しでは可哀想と宝飾品をわざと埋めるが、学者に考古学的発見と勘違いされひと悶着。今度はニョロニョロ河に金脈がと騒ぎに。パパたちは砂金の採取に成功するが、採掘権をスニフに奪われやけっぱちで酒場で散財する。フレンチカンカンに見とれるムーミントロールに、スノークのお嬢さんは自分の方が上手いと踊りまくると客は喝采。帰り際にパパがもう一掘りすると噴水が。お宝とは縁がないと嘆くパパに、ママは貝殻の方がよっぽどいいわと慰める。
・読んだ本
「Moomin: The Complete Lars Jansson Comic Strip VOLUME SEVEN」 (Drawn & Quarterly) 楽天Kobo版
「ムーミン・コミックス 第10巻 春の気分」(筑摩書房)
・感想
今話は平成アニメ・楽しいムーミン一家の第52話において「宝探しで大騒ぎ」としてアニメ化されている。この原作コミックと比較してみると、意外にも相当アレンジされていて驚いた。例えばアニメでは宝の地図はムーミン谷にやってきた地質学者からもらうのだが、原作コミックでは地質学者など一切出番なし。また最後に荒らされた土地をヘムレンさんの花畑にするというアニメのオチも、原作コミックでは全く影も形もなし。かと思うと、地図に書かれた宝は裂け目のある岩から歩いて39歩めというコミックの描写は、アニメでも同じく39歩めと、なぜか妙に細かい所を忠実に再現していたりする。フィリフヨンカの親子が宝探しに参加する所も同じで注目ポイントだ。しかし基本的には大幅アレンジ回となっていて、比較してもあまり面白くない話の方に分類できるだろう。
今回最初に読んだのは英語版のコミック。その後で日本語版も読んだ。
いい大人の自分としては、やはりムーミンは英語で楽しむに限る。今話も英語だと読むのに歯ごたえを感じて、最後のオチにたどり着いた時には「終わったあーー……!」という、一つの冒険をやり遂げたような感慨めいた気分を味わえたのだが、一方で日本語版の方はサッササッサと読み進めることができるので、オチにたどり着いても感慨など全く無し。「フーン」って感じで、面白いか面白くないかというと、正直面白くない。特にマンガというメディアは日本人にとって、サッササッサと読み飛ばすものという前提条件が備わってしまっているので、ムーミンとマンガのミックスというのはちょっと食い合わせが悪いと思う。日本語しか読めないという方には、ムーミンコミックスを読むときはじっくりゆっくり睨めつけるが如く1コマ1コマ味わって読むことをお勧めしたい。
さて今話で特に印象深かったのは最後のオチ。正確には最後のコマの1つ前のコマ。
![momi_takara02](https://assets.st-note.com/img/1738046047-UQYpoG44HH.jpeg)
今話はムーミンパパがお宝を探し当てようとありとあらゆる骨折りをして苦心惨憺たる状況の末に、最後の最後に噴水を掘り当て、でも「こんな泥水じゃ誰も喜ばないわ」「そうだな、お宝とは縁がないようだ」って……いや!油田!あんた油田発見してますから!大金持ちだよ、よく見て!っていう。本人たちは最後まで気づかないで終わりという、おとぼけムーミン一家最高ですわ。で本当は大発見してるってことを物語上で一切説明せず、そこは読者の読みに任せるというアーティスティックなギャグを披露するラルスの技巧の光り具合を楽しめるのが今話の見所ですね。
そして同じコマにいるムーミントロールとスノークのお嬢さん。
フレンチカンカンに見とれるムーミントロールに、なにおー!!と奮起して酒場のみんなを無我夢中にさせるほどのダンスを披露して得意げにどうよ、感想は?と問うスノークのお嬢さん。ムーミントロールはお嬢さんの本意が分からず、でも「君の気持ちは分かってるよ、僕のことが好きなんだろ?」と上からのセリフでお嬢さんを呆れさせてしまう、お嬢さんが聞きたいのはそんな言葉じゃないのに…。……というような痴話げんかを散々披露しておきながら、でも…最後の最後には二人してポーカーフェイスで平然と仲良く踊ってるという。結局踊るんかい!と。で1コマだけなんだよね。パパの背景として1コマ踊ってる所を見せる。それで充分なんですよ。これだけで読者は「ああ平和だなあ」と満足することができる。本当に色んな事があった末に、でも…ムーミン谷はいつもどおり平和、という。いや良く出来た話だわ。そう思えたのも英語でじっくり1時間以上かけて読んだから。だからムーミンコミックスはじっっくり味わって読む、これがお勧め。
・満足点数
70点