見出し画像

ムーミン谷のなかまたち シーズン3 第4話 あらすじと感想

令和アニメ・ムーミン谷のなかまたち 30話(シーズン3 第4話)「発明家スノーク」
Moominvalley Season3 EP4 Inventing Snork


・公式予告編


・あらすじ
譲り受けたダイヤの指輪の扱いに困っているミーサに、スノークのお嬢さんは派手な装いをさせて釣り合いを取ろうと画策する。一方、谷のみんなとうまく付き合えないスノークに、ムーミントロールは助言して彼なりの人付き合いの仕方を伝授する。しかしスノークは納得がいかない様子で……。


・英語理解度
1回め(字幕なし):40%
2回め(英語字幕あり):85%

字幕なしで観たら、例によって肝心なキモのセリフを聞き取れず。
2回めはかなり話を理解できたが、肝心な所は何度も巻き戻して字幕をちゃんと読んでセリフを確認した。
「観る」だけではお話をしっかり理解できない、という今の自分のリスニング力。


・感想
第4話は、発明が得意なスノークと、お手伝いのミーサが話の主役となっています。

スノークは、空気が読めない、他人の気持ちが分からない、相手の気持ちを考えずズバッと真実を言う、感情より事実を重視する、好きなこと(発明)には徹底的にこだわる、という描写がなされ、アスペルガー的傾向のあるキャラという設定です。

また英語版のミーサの声を担当するレベッカ・ルート(Rebecca Root)は、自身がトランスジェンダーであることを公表しています。

空気の読めない学究派のマイノリティと、性的マイノリティが演じる疎外されたキャラ、二人のマイノリティにスポットを当てた今話。

トーベ・ヤンソンは、性的マイノリティかつフィンランドにおける少数派のスウェーデン語話者であり、芸術家としても少数派の女性であり、社会活動においても女性という立場自体がマイノリティと、本当に社会の際の際、端っこの世界のその端っこで作品を発信してきました。

だからムーミンの物語において最も重要な登場人物と言えるのはスナフキンでもリトルミイでもなく、実は名前を持たないはい虫やクニットたち、またはトゥーティッキの言う「この世界には、夏や秋や春には居場所のないのがいっぱいいる」というようなものたち、あるいは水浴び小屋にいる姿を見えなくしてしまったとんがりねずみのような、いつもは後ろ側にこっそり隠れているような存在などです。

トーベがそういう日の当たらない者たちのことを真剣に考えてくれていることが十分わかるからこそ、寄る辺なきもの、居場所のないもの、自分に自信を持てないものたちがムーミンを支持するのです。

ところがムーミンという作品がマイノリティだけに対象を絞ったものなら、これほど人気は出ません。
ムーミンの目指す方向は排他(exclusive)でなく、包摂(inclusive)です。
共存であり共生です。

マイノリティが共生の道を指向しなければならないのは、現実的な話としてマジョリティを排除することが不可能というのもあるのですが、それよりは心地よさ、フィーリングの問題として、敵対排除より対等な共存を目指す方がより健全で気分も晴れやかになると既に悟っているからです。

世の中の流れも排他から包摂へと徐々に傾いている最中で、ムーミンのような作品が世界で人気を博しているのもその潮流の一つの顕れです。
なにしろ排他というのは要するに「現状維持」のことに他ならないですから、世の中というのは絶えず変化するものであって、いつまでも現状維持を許すほど甘いものではありません。

この第4話「発明家スノーク」も、そんな世界の変化の顕れの一つであり、世の中の向かうべき先がどんなものかを我々に垣間見させてくれるエピソードとなっています。


さて、これより先ネタバレあり。注意です!


ムーミントロールはスノークをみんなと仲良くさせようと彼にあれこれ注文を付けるも失敗し、最後に「君を変えようとしてすまない。変わるべきは僕の方だったんだ」と言います。
これにスノークは「でも僕は変わってほしいとは思っていなかった」と返します。
またスノークはミーサに、メイクを落とした方が本来の君らしくて良いとも言い、本来の自分を大切にするべきで、心根を捻じ曲げる必要はないという考えです。

スノークは発明でみんなを変えようとして失敗するのですが、発明でみんなの心を変えてやろうという意図は無かった。
彼にとっては自分の発明が受け入れられることが一番で、その結果としてみんなが変わってくれればなお良いという立場です。

ラストシーンでムーミントロールは夕日を見て、スノークに「今では君のような見かたができる」と言い、スノークは「それは実際は無理だが、言いたいことは分かる」と言います。
これは「相手の立場に立つことが重要だということは私にも理解できるようになった」という意味であろうと思います。
スノークはみんなの気持ちを考えず発明品を作り拒絶されるのですが、最後には相手のことを考える必要があることを学び、彼自身も変わりました。

マジョリティは現状維持を目指し、マイノリティは改革を求めます。
しかし改革派の方も、相手を無理に変えようとしては駄目で、あくまで相手が望むなら変革の手助けができるよ、という立場でないといけないのでしょう。

相手の心根、本性はそのままでよい。しかし共存するには現実的な問題が立ちはだかるので、お互いが相手の立場、事情、気持ちを慮ることが必要になる。そうして諸問題のすり合わせをしてゆく、歩み寄って生きてゆくというのが現実的なやり方なのだと思います。


・おすすめ度
★★★★★

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集