丁寧に生活する

僕はネットベンチャーの社長をやっている。

創業してある程度軌道に乗るまでの1年半くらいの間の仕事ぶりはなかなか壮絶で、週に2、3回の徹夜は普通で、当然土日も朝から晩まで仕事をしていた。

会社を作り、サービスを新しく作ることが楽しくて楽しくて、大変さは全く感じなかった。

その会社の立ち上げ中に待望の第一子の妊娠が分かった。結婚して6年目のことだった。そんなタイミングだったこともあり、初めての出産は妻がほぼ一人で乗り切ってくれた。今考えてもとても申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが入り交じる。

妻もかなりの働き者で、忙しく仕事をするのが大好き。会社の立ち上げも手伝ってくれいた。

そんな妻は、産休に入ってからは退屈そうにお腹をさすっていた。

第一子が生まれてからも、僕の仕事スタイルは特段変わらず、平日は完全に妻のワンオペ(その後妻はフルタイムで仕事復帰をしたが、平日ワンオペをずっとしてくれていたm(_ _)m)。僕は週4回くらいは会食があり、帰宅するのは深夜1時〜3時くらいという日が多かった。

土日は、家族でずっと一緒に過ごした。

僕はもとから「規則正しい生活」というものに関心が無くて、お酒を飲み始めたら楽しくなっていつまでも飲んでいるし、海外ドラマなんかを観始めたら次の日が仕事でも朝まで観てしまう。

惰性的で快楽主義的な日常は、大学生くらいから送ってきていて、社会人になっても、結婚しても、第一子が生まれてからもあまり変わっていなかったように思う。

そんな僕の生活は2ヶ月くらい前から、突如こう変わった。

5:00 起床
5:00〜7:30 作業系の仕事を自宅でしながら、猫の世話など
7:30〜8:30 家族で朝ごはんを食べて、身支度
8:40〜9:00 チャリで保育園に送る 保育園で絵本を1冊一緒に読む
9:30〜20:00 仕事
20:30〜21:00 自宅で夕食
21:00〜22:00 子供と風呂に入って、一緒に就寝

規則正しくこの毎日をルーティーンのように繰り返している。

会食に関して言うと、いざ実際、必要な差し迫った会食だけに絞ってみたら、そんなに数は無かったし、それまでは誘われたもの全てに行っていた。なんとなく楽しい飲み会に行ってただけだなと思う笑

妻のつわりと、さらに新型コロナウイルスの流行による時差通勤や、会食(というか飲み会)の激減がこのルーティーンの始まりの狼煙になった。

で、いざ実際この生活を2ヶ月ほど繰り返してみてどうかと言うと、穏やかな心地よさを感じている。「この生活最高!」みたいな強い感情ではなくて、なんだか穏やか。

1日の工程が決まっているので、以前の惰性的な生活よりもむしろ時間には追われているかもしれない。でも、ある程度決まったスケジュールの繰り返しをすることで、丁寧に生活するための工程みたいなものが生まれてきたんだと思う。さらに、二日酔いや寝不足というステータスが今の生活には存在していないのも大きい。

朝食にはパンをトースターで焼いてハムを挟んでみたり、寝る前に美肌パックをしたり、スウェットではなくちゃんとパジャマで寝たり。

妻のつわりも早く収まって欲しいし、コロナウイルスも早く終息してほしいけれど、この2つは、惰性的で快楽主義的な僕に意外なものをもたらしてくれた。

丁寧に生活するのは、悪くない。



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