憲法9条改正をめぐる三つ巴戦
・2010年ネット上に公開した文章の転載
1980年代までは、憲法9条を改正すべきと考えている人たちは少数派にすぎなかった。だが、90年代以降改正派の数は徐々に増えているだろう。
現時点で改正賛成派と反対派どちらが多いのか、正確な数はわからない。
もしかしたら半分半分といったところなのかもしれない。
そして、将来的には改正賛成派が多数派になるかもしれない。
「護憲派」と言われている人たちはそのような状況に危機感をもっているかもしれないが、仮に改正賛成派が多数派となっても9条が改正されるかはわからない。
といっても、それは国会議員の三分の二以上が賛成しなければ改正を発議できないからというわけではない。
9条を改正すべきだと考える人が多数派となったとしても、今度は9条をどのように改正するかをめぐって意見の対立がおきる可能性があるからだ。
私のみたところ、9条改正派は3つのタイプに分類できる。
1つ目は、9条を改正して日本が他国を武力攻撃できることを合憲化しようと考えている人たち。
この立場を「武力攻撃容認派」と呼んでおく。
2つ目は、日本が他国を不当に武力攻撃することは禁止するべきだが、海外でおきた紛争には介入できるようにすべきと考えている人たち。
この立場は「海外紛争介入派」と呼んでおく。
3つ目は、憲法は改正すべきだが、その改正案に自衛隊の役割を個別的自衛権の行使(専守防衛)に限定すると明記すべきと考えている人たち。
こちらは「専守防衛改憲派」と呼んでおく。
ただし、自衛隊の役割を個別的自衛権の行使(専守防衛)に限定すべきと考えている人たちは9条改正反対派(いわゆる「護憲派」)が圧倒的に多く、「改憲派」の中で3つ目の立場をとっている人は極少数にすぎないだろう。
三者の「改憲派」が合意できる改正案を作成できなかった場合は、結局改正反対派が多数派となり憲法は改正されないだろう。
もし9条が改正されるとしたら、それは次のような場合だろう(「専守防衛改憲派」は自衛隊の海外での武力行使に反対する立場で、実質的には「護憲派」とかわらないのでこれからは残り二者の「改憲派」に関して述べていくこととする)。
まず、どのようにでも解釈できる曖昧な改正案を作成し、「海外紛争介入派」がこれに同意した場合。
ただし、「海外紛争介入派」が「他国への武力攻撃を容認したと解釈できる改正案」には賛成できないとした場合には、両者の合意案は形成されないだろう。
次に、改正案に「日本の他国への不当な武力攻撃を禁止する条項」をいれるべきとする「海外紛争介入派」の主張を、「武力攻撃容認派」がいったんうけいれた場合。
1度目の憲法改正でまず自衛隊の海外での武力行使を解禁しておき、その後時機をみて2度目の憲法改正を行い、日本が他国を武力攻撃できるようにするという「二段階憲法改正路線」を「武力攻撃容認派」がとった場合。
ただこの場合も、「武力攻撃容認派」が「他国への武力攻撃を禁止する条項」を改正案にいれることに反対した時には、両者の合意はえられないだろう。
憲法9条が改正されるかどうかは、同床異夢ならぬ異床同夢、異なる考え方をもつ「改憲派」が、9条を改正すること自体を目的として妥協するか、それとも自分たちの主張を反映させた改正案の成立に固執するかによってかわってくるだろう。
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