『子どもがスマホを使うのは何故良くないのか』という問い
『子どもがスマホを使うのは良くない』は本当かな?
この問いにもう長いこと向き合っています。一時は小中学校を回って情報についての出張授業をする講師も担当し、いろんな角度からこの問いについて考えてきました。
「目が悪くなる」「エッチなサイトを見ちゃう」「依存症になる」「犯罪に巻き込まれる」
この辺りがよくある懸念点でしょうか。どれもよく分かります。
一方でGIGAスクール構想は進んでいますしSTEAM教育もますます盛り上がっていますよね。もはや子どもにもICTは必要です。
では何に気を付けてICT機器を使えばいいのでしょうか。大人も子供も、どこを抑えてICTと付き合えばいいのか。
「利用時間を区切る」「家族でルールを作る」など細かい提案はいろいろありますが、何かもっと根本的に抑えるところがある気がする…とずっと思っていました。手段ではなくて「コレが問題なんだよ」という点があるんじゃないかと。
ようやく見つけた、人間とスマホの問題点
最近2冊の本を読んで、ようやく納得のいく答えに出会えました。
別々の機会から読んだ本だったのですが意外にも似たことが書いてあって、「そういうことかぁ」とすんなり腑に落ちました。
平たく言うと「人間の脳は現代の情報処理に対応していない」ということです。脳の進化よりも技術の進化の方が早すぎるんですね。
みなさん、SNSで繋がってる人は何人いますか?その人たちの顔や関わりを思い出せますか?
思い出せなくても大丈夫です。
山極先生の本によると、人間の脳に適した集団サイズは150人なのだそうです。先生はこれを『年賀状を書くときに思い出せる人』と表現されています。
人間が生物として長い時間をかけて「これくらいの集団で過ごすのが安全」「そのためにこういう機能が要る」と発達してきた脳。他の霊長類とは違う大きな特徴です。
ところがこの20年ほどで情報量も情報速度も爆発的に上がってしまいました。わたしたちは毎日スマホを使いこなして、この爆発的な情報の波を泳ぎ切っているように感じますが、実は脳は付いて行ってないのではないでしょうか。
囲まれている環境と生物として備わっている機能が合ってない、とてもアンバランスな状況が現代の課題だと思います。
子どもがスマホに気を付けるべき理由
そんな中で特に子どもがスマホに気を付けたほうがいい理由は、まだまだ発達の途中だからです。
…って言葉にするとものすごく当たり前のことなんですけど笑
山極先生の本を読んで「人間の子どもって本当に手間暇かかるんだなぁ」と感じました。ゴリラやチンパンジーに比べてとてもゆっくり育つんですね。それもこれも、他の生物にはない大きな脳を育てるためです。その脳があるから複雑な人間社会を営んでいけるわけです。
言うまでもなく人間は集団のなかで学び生活する生き物です。子ども時代はそのことをたっぷり経験するためにあります。その大事な時期に脳の機能を超えた情報処理に追われているうちに、生き物として大切な発達をおろそかにしてしまうのではないでしょうか。
「発達段階に応じた社会性・人間性を育んでいる幼少期に、人間が適していない情報処理を多く行うことで、社会人として必要な能力を損なう恐れがある」
これが、子どものスマホ利用の根本的なリスクだと思います。目が悪くなるのもスマホに過度に依存するのもその副産物です。スマホでの情報処理で現実の関係を代替えすることはできないのです。
スマホの問題点って何?という問いへの私の仮説は「思考をとられること」でした。特に背景のない直感だったのですが、この思考でようやく裏付けされた気がしています。
大人にできることは何だろう?
…ってここまで書いて、わたしはいま我が身を振り返って辛いです笑 しまったー、しょうもない情報処理に時間を割いて子どもの目をちゃんと見れてない時あるー。遠くのウワサ話よりも目の前の我が子でしょうが…イテテテ(心が)
まずは、こうしたスマホの課題点をちゃんと意識することだと思います。
明日の天気とか緊急連絡とか便利に使うのは大丈夫。そんな中でときどき「いま大丈夫かな、現実での関わりも大事にできてるかな、スマホの情報に気を取られすぎじゃないかな」と振り返ってみるとか。身の回りの情報環境が自分に合っているか、ときどきチェックするといいかもしれませんね。
時には現実の関係が辛すぎてスマホのコミュニティに癒されることもあると思います。それはそれで必要なことですね。そんな時にも、誰かひとりでもいいから、現実で信頼できる人がいるといいなと思います。その人を頼りにまた現実の関係を見つめ直せるかもしれないから。
最後に、子どもとスマホの関係に悩む親御さんに対してよく言われるアドバイスをご紹介します。もうお決まりの言葉なのですが、考えれば考えるほどこれに尽きます。
「お子さんと話し合いができる関係を作るように頑張ってみてください。どうしたらいいか一緒に考えて一緒に話すんです。そのためにお子さんのお話を聞いてあげてください。親に相談しても大丈夫と思って貰える関係を続けましょう」
うわー、また痛い~!耳も心もいたいー!
一緒に頑張りましょう!!まずは私のスマホを置いて、子どもの目を見る時間を増やします!!