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物語の芋虫まとめ

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物語になる前の物語の芋虫。のまとめ。
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2023年6月の記事一覧

【獅子をかぶる】

【獅子をかぶる】

合コン。合同コンパ。だいたい初めましての男女が出会いを求める場所。そんな場所に私はいた。今日のためにメイクも決めて服装もバッチリだ。別に飢えているわけでないが変に見られたくないのはある。だからバッチリしていく。
一通り自己紹介も終わり各々気になった人と雑談をしていく。
「ねぇねぇ」と早速声がかかった。見た目も爽やかだった少し気になる男性だ。

「それ何?」
「それって?」
「頭の上のやつ」

と指

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折る

折る

“折る”と“祈る“は似ている。

餃子を作る時、餃子の中身を作ってそれを皮に包む。皮に包んだらその皮を折っていく。あの餃子ですよとわかるような独特なあの形を折る。折っている時間は無心になれるし、折っている時間が好きだ。
折り目がついていく。あの感覚。あの1秒にも満たない時間で世界は回っている。私が餃子の皮を折っている間に誰かが何かを思い、誰かが希望を覚え、絶望に呑まれる。そんな一瞬。そんな祈りに似

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ぎりぎりやめて

木こりである僕は木を切っていたはずだった。だが今は女神のような人にすこぶる説教をされている。

「そういうのはダメだよ」

と怒られている。なんで怒られているのか全然理解ができない。商売道具である斧を下に置いて説教をされている。状況が読めない。仕事をしていたら急に「おいおい」と声をかけられた。この女神は近くの湖の中にいた。そこから出てきたかと思うと説教だった。
僕は手の握力が人より強かった。握りつ

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びーん

びーん

鉄の柵を金属バットとかで強く叩くと力が戻ってきて手がビリビリする時がある。表現するな
らビーンって感覚。あれで生きているなと実感する時がある。
それと同時に“バーン”とか“ガーン”とか“ギーン”と音が響く。それに気づいて皆が振り返る。音のスポットライトである。このスポットライトには当たりたくはない。何故ならスポットライトに当たりたいわけではなく、手のビーンを感じたいだけだからだ。手のビーンを感じら

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そんな感じだった?

そんな感じだった?

体を重ねて時間が過ぎる。愛という言葉で片付けていいのだろうか。この行為。でも、幸せではある。だから愛なのだろう。横でぐだっとしているこの男のことは私は好きだ。大好きだ。この男もそう思っているということにしておこう。虚しくなる。
付き合いは長い。もう5年は経った。結婚まではまだ進まないが私は進んでもいいと思っている。家族になることより先に一緒に住んでしまったのがこのダラダラの原因なのか、よくわからな

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