ドラマティックなアーバンライフの始まり | セントキルダ・フォーショアプロジェクト
(写真: jcba.com.au)
ビーチと言えば、メルボルンよりシドニーが有名ですが、メルボルンにもビーチはあります。その中でシティからも近く、最も人気がある場所がセントキルダです。これはセントキルダのビーチ沿いのプロムナードに大胆な造形のウッドデッキを配したプロジェクトで、メルボルンっ子もびっくりしたその見どころを3つご紹介しましょう。
01. 造形的なランドスケープデザイン
まずは何といっても、造形的なウッドデッキのデザインが見どころです。それはプロムナードとビーチのエッジを有機的に結び付けているダイナミックな形状を持つデッキで、風によって砂が盛り上げられたようにも、意図的に大地に彫刻されたもののようにも見えます。また、コンクリートのベンチや木製のベンチも同じく有機的なデザインでつくられています。
この造形的なデザインは、絵になるランドスケープをつくり出し、コマーシャルの背景としても使用されました。また、その造形はアーバン・ライフにシアター性をもたらしています。それを見ているだけでも美しいのですが、そこで生まれるアクティビティはあたかもステージ上のパフォーマンスのよう。訪れる人をさらに生き生きと美しく演出してくれるのです。
(写真: jcba.com.au)
02. 造形が促すアクティビティ
このダイナミックな造形物であるウッドデッキの斜面は、横になって日光浴をすると気持ちよく、昇って少し高いところから景色を眺めるのにも最適で、またサイクリングの人たちには、自転車でアップダウンを楽しむための障害物になるなど、多様なアクティビティを誘発します。それらは、計画されたものだったり、偶発的なものだったりと、パブリックライフに刺激を与えるアクティビティなのです。
このプロムナードで見られるアクティビティの例は他にも、ジョギング、ローラーブレード、散歩、犬の散歩、食べ歩き、写真撮影、スケッチ、砂浜のベンチでのんびり日光浴、カフェ近くのベンチで飲食などと幅広く、また、ある時は子供のプレイグラウンドとして機能したり、大道芸などのイベントスペースとして機能したりすることもあります。
このようにいくつかのアクティビティが一か所で起こる場合には、その場所を使用するためのかけひきが必要ですが、わざわざ標識でこれをするな、あれをするなと言われることもなく、人々はお互いに距離をとって上手にそのスペースを共有しています。
(写真: www.siteoffice.com.au)
03. 人工物と自然の密度
最後の見どころは、プロムナード沿いに散りばめられた人工物と自然との心地よい密度バランスです。ゆるりと散歩しながら、座ったり、昇ったり、眺めたりするのにちょうど良い密度の配置なのです。このプロジェクトはプロムナード沿いの全長700mで、砂浜と商業施設(レストランやカフェなど)の間に位置し、プロムナードを歩くと、まるで波が引いたり押し寄せたりするように、緩やかな間隔を持って人工物のデッキが出てきた後に、シンプルな舗装に戻って周辺の砂浜や植物を楽しめたりと、人工物と自然が、興奮と平静が入れ変わりに立ち現れる感覚を体験します。そして、プロムナードを歩き終えたときには、とても満足した気分になるのです。
また、そこを訪れる人の数も極端に多すぎないのは、まち全体にパブリックスペースが散りばめられているため、この場所だけに人々が殺到しないからでしょうか。
(写真: www.siteoffice.com.au)
このプロジェクトを通して、ビーチプロムナードがこんなにドラマティックになるんだと、当時のメルボルンっ子はとても驚いたと思います。そして、ここは誰もが居場所を見つけられ、思い思いに過ごせる素敵なソトなのです。
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