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テーマ取りが革新の成否の半分を決める

岡村 衡一郎

イノベーションのテーマ、すなわち、変革する対象をどうとらえるかで成果の半分は決まる。革新や改革という言葉は便利な言葉で、営業革新、人生制度改革、業務革新など何かの後につければ、内容はともかく、大きく変えていこうとするニュアンスは伝わってくる。しかし、10のうち八つから九つの取り組みは怪しいものだ。

革新と名のつく活動の多くは、実践レベルの問題に焦点をあてている。
これらやり方改革は、一定期間の好転で元に戻る宿命にある。
実践を規定している、ものの見方である認識、ものの見方を規定している存在へ影響をもたらせないためである。
根っこが変わらなければ、活動期間中の縛りがなくなれば、もともとの存在を規定するエネルギーには逆らえない。

ある企業がコミュニケーションに革新をもたすオフィスをつくろうとワンフロアにこだわって移転した。一時的に話し合っている姿が増えたが、以前より静まりかえる空間になっていった。「仕事中の雑談は暇の証し」という暗黙の価値観のもと、見通しのよさがかえってあだになってしまった。
隠れられる空間がなくなってしまったためにコミュニケーション不全を促進してしまうという皮肉な結果になってしまった訳だ。

革新とは、なりたい姿に近づく活動だ。
表面に表れる問題を裏返しにした課題設定や、やり方を問題にしたものとは異なる。

図 1 で示したように Aライン上にいた自分たちからBライン上にいる自分たちへ存在意義を深めていく能動的な飛躍である。
革新テーマを考える上で図 1 に示したように、実践、認識、存在の三つの階層と相互の影響を見ていく必要がある。
実践と認識、認識と存在を有機的につなげ、テーマをあぶりだしていく必要がある。

ある総務人事部が仕事への活気を取り戻しイキイキと仕事をする人が増える仕事革新を成功させている。
彼ら自身で人事総務部の存在意義を「ブランド力と業績向上に貢献する」と置き直せたからである。
以前のどことなく暗い雰囲気や一人一人が黙々と作業をしている姿は、攻めより守りに重きを置いてきた価値観の肥大化により起こっていた現象であった。

以前の総務人事部の存在意義は「母たれ」に集約される。
言葉にした十数年前はそれでよかった。
不具合の解消や仕事に専念できるためのサポートが求められていたからである。しかし、それらの仕事が定型化していく中でマンネリや違う役割を取りに行くアクションが後回しになっていたのだ。
ミスのない仕事を行なうという価値観に縛られていたと言える。

革新とは今までの自分たちを含んで超えようとする持続的なエネルギーに支えられる。総務人事部の仕事革新で言えば、社員が安心して仕事に取り組める環境づくりはやりつつも、ブランド力と業績向上に貢献する存在のシフトが軸になっているから続くのである。

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