羽ばたいてないけど戻らない
多分、3ヶ月くらいの私だったら。
この文章が面白かった話を、
あの物語についての見解を、
その音楽を褒め称える言葉を、
あなたに話しかけに行ったんだろうな、多分。
あなたの話が聞きたかった。見解を知りたいし、言葉を届けたいと思えていたのに。
「まあ、いいか」
数行書いたけどやめた、2ヶ月前。
「別に、いいや」
便箋を開いたものの閉じるしかなかった、先月。
「特に、いいわ」
何をすることさえ諦めた、今。
あなたの作ったものたちを身内の色眼鏡をかけて褒め称えてきた。けれど、その色眼鏡が粉々になった今の私は、それらをどう思うのか。
我ながら気になっていた問いの答えは、思ったより酷だった。
好きの反対は、どう足掻いても無関心だ。
作品を見る時間さえ、あなたに100%費やすことができなかった。
片手間に横目で流し見たそれらを、“以前の私”なら全て汲んで気付いて喜んだのだろうか。
びっくりするくらいに、なにもわからなかった。
一人では解けない愛のパズルなら良かったのに、一人で解く気もないゴルディアスの結び目に成り果てている。
きっと第二第三の私みたいな人が、代わりに汲んで解いてくれるんじゃないかな。知らないし興味もないけどね。
本当はずっとずっと前から私の独りよがりだったのに、気付かないふりをしてただけだ。罪悪感に塗れる関係なんてさっさと終わらせるべきだった。
決定的に違えたのは、きっと秋。
林檎が落とされた時に終わりが始まり、
葡萄を求めたことを貶して亀裂が入って、
柘榴を食べ切ってしまったことを、どうしても許せないから決別をする。
私は私を生きていく。
新しい箱庭で植えた種からは、思ったよりも大きな花が開いて鮮やかな気がする。
このまま、あなたの目につかないどこかで、賑やかな世界の一部になるよ。
あなたもあなたで生きていってね。
不幸になれとは思ってない。せいぜい勝手に生きていってね。何にももう興味ないから。
それでは、せいぜいお元気で。最後にひと匙残った搾り滓の愛だったものを込めて。