不動峰中学校と、私
はじめに
この記事は、めんどくさいオタク語りである。
一言にまとめることができる。私は、テニスの王子様が好き。それだけの長文だ。
私に取ってテニスの王子様は、青春の1ページ。実際に通った中学よりも長い間、魂がそこにある。
テニプリはいろんなコンテンツへの入り口にもなってくれたし、最愛の声優さんもテニプリで一番好きなキャラクターを演じている方である。
テニプリ無くしてオタクの私無しだ。
そしてテニプリは何度も、私を救ってくれた。つらい時に何度もその展開が何もかもを忘れさせてくれたし、色んな友人との共通話題にもなってくれた。
「許斐先生はすごい」
「テニプリは最高」
そんなことを何度話しただろう。今日もその話したし、絶対毎月10回は言ってると思う。
好きなキャラクターについて
中学生の頃は、忍足侑士さんと忍足謙也さんが好きだった。大人っぽい忍足侑士さんと、等身大の共感できる忍足謙也さんをかっこいいなあと焦がれてきた、はずだ。
しかし改めて読み直したあたりで変わったのだ。不動峰が好きだ、応援したいと。そこからずっと応援し続けて、私の母校は不動峰である。中でも神尾くんが好きだ。
テニプリのキャラソンの投票企画が公式で行われた折に、神尾くんのソロに投票したら、そのメッセージが公式サイトに使われたという実績もある。(ソロ部門23位)私の小さな自慢の一つだ。
不動峰という学校に関する思考
不動峰は最初、めちゃくちゃ悪そうで怖そうな雰囲気を持って青学の前に現れる。地区大会決勝の相手だ。暴力事件を起こしたという噂付きだ。
しかしその実際は、理不尽な諸々から自分達の権利を守るために戦っていたというのが回想で明かされる。
そう、回想でだけだ。他のキャラクターに明かされていないかもしれない。しかし、彼らはそれをわざわざ訂正せず逆風に立ち向かっていく。どころか、ノーマークなところを利用していく。大好きだ。
当初は主人公の所属する青学と対象的なライバルチームとして考えられていたと聞く。
関東の強豪で、青と赤と白がユニフォームの青学。対して無名でレギュラーのほとんどが2年生の、黒と赤と白がユニフォームの不動峰。
こうして書くと正反対だ。
そして実際、他校の中でもかなり本筋に出てくる学校だと思う。お馴染み跡部様は不動峰の部長の妹である杏ちゃんをナンパするのが初登場だし。
大会の不動峰
彼らは都大会では無事戦術の無礼を働いた氷帝相手に(全員が正レギュラーではなかったとはいえ)勝利し、準決勝で山吹中に敗れる。
しかし、それは怪我を負っていて万全の調子ではなかった。関東大会の準々決勝再戦した時には成長し無事に勝利している。
そこで描かれる神尾君の成長、繰り出される音速球。あれを見るだけで私は泣く。
あのVS千石戦までにあったドラマも見過ごせない。
青学戦でゴールデンペア相手に2ゲームとったダブルスペア、森君と内村くん。新渡米くんと喜多くんを下している。忘れられがちだがこの二人は、あの天才不二周助とパワーの男河村隆というダブルス相手に勝利しているのだ。
ちなみに、不二くんが明確に負けたとされているのはこのダブルスペアと四天宝寺の白石戦だけであるというのを考えても、かなりすごいことだと思うのだ。
さすがに地味とはいえ実力者である南・東方ペアには惜しいところで敗北するが、3年生である錦織くん相手に伊武君が勝利して繋いであの試合につながっている。
不動峰という学校らしさが詰まった試合内容で、とても好きなエピソードだ。
しかしその後進んだ準決勝は常勝で知られる強豪立海大と言うこともありストレート負けだ。その後の3位決定戦では六角と戦い、接戦ながらも勝利を収めた。
つまり、都大会・関東大会共に準決勝で敗れている。主人公が決勝に行くのは物語上必然のため、かなり善戦していると言って良いだろう。
そして無事に進んでいった全国大会第三試合。青学と最初に戦った際、特に印象的に描かれた「パワーの波動球」「スピードの特化した選手」の完全なる上位互換に敗北する。
そこで、不動峰が目指してきた全国大会は終わる。あまりにも、あっけなく。
不動峰と四天宝寺
正直に言えば、最初読んだ時は悔しくて仕方なかった。なんでこんな人たちに、絶対叶わない敗北をするのだろう。せめて氷帝だったらリベンジされちゃったな、って思えたのに!
しかし、これは後々に主人公越前リョーマが会得する『天衣無縫』に四天宝寺の方が近い理念だったと言うのもあるのだろうと今なら思える。そう、今なら。
不動峰と四天宝寺は、対比的に見えるがわざと近く作られているのだろう。
黄色と緑のユニフォーム。黒が印象深い不動峰と違い、とにかく明るいように見えるが、原作では落ち着いた色合いで、若干グラデーションがかかっている。明度としては近いだろう。
四天宝寺の理念は「勝ったもん勝ち」である。そしてそれは不動峰がやって来たことにも近い。伊武くんが主人公であるリョーマ相手にやった試合なんかは特にそうだ。
オモシロで油断させて来た四天宝寺、ノーマークだからこそ油断させることができた不動峰。その姿はニアリーイコールと言えなくも無い。
不動峰の終わりに関してさらに述べるなら、彼らの目指す終着点は「優勝」では無かったというのも大きいのだろう。
「橘桔平が率いる不動峰」の終焉は、他の誰で無く、かつての相棒である千歳千里の居る場所で無ければならなかった。
そして、目指してきた目標である「全国」を果たしたその先を見つめられる存在がそこにはあった訳だ。
より速さを、より力強さを。各々感じたものは多々あっただろう。
こうしてあらためて見つめなおすと許斐剛という漫画家の構成力に圧倒される。本当にすごい。
初期案としては不動峰がライバルだったからこそ貼られていた「橘桔平は2年生の時に現れたテニスの上手い転校生」という伏線。
それが「以前起こした事件」や「指導に当たらねばならず現状に至っている事実」という重みに繋がる。きっちり回収して昇華させてくる許斐剛先生には脱帽である。
不動峰という学校
繰り返すが不動峰は無名校である。橘さんは頼れる部長だが15歳だ。
いくらこの世界で15歳が大人びているとは言え、その重圧は相当なものでは無いだろうか。
コーチもいない、トレーニング器具もないしそんな場所も見受けられない。人手も用具も足りないだろう。そんな中で泥臭く戦ってそこまで這い上がった彼らを思うと胸が締め付けられる。
私は極論、試合結果を見ているだけで泣く。
よく描かれる3人はもとより、「実力ではシングルスに劣る」と自分達で言うダブルスの4人の成長が見て取れるのだ。
先述の通り内村・森ペアがどんどん力をつけて勝っていることや、桜井・石田ペアは強豪の三年生を相手取ることが多いこと。
そして何より、チーム内でシャッフルしてダブルスをすることはどの学校もあるのだが……不動峰において、橘さんは唯一、絶対にシングルスで配置されているのだ。
1人だけ三年生ということ。監督も兼任しているという事実。そして、見え隠れする「来年」の存在。彼らの成長を橘さんが誰よりも考えていることを感じてしまうのは、私の過大解釈では無いと思うのだ。
友人とよく話すのだが、それぞれの学校にフォーカスを当てれば同じくらい感慨深さが生まれるのがテニプリのすごいところだと思う。
例えば立海は『常勝』として背負って来たプライド、氷帝は氷帝でレギュラー200人の中での切磋琢磨など。
余談だが、ユニフォームもそれぞれの学校のカラーをそのまま反映しているような気がしてとても好きだ。
不動峰は最初に悪そうな印象を植え付けるためであり、ダースホースとなるために黒なのでは無いかと推察している。
不動峰の「来年」
「行こうぜ、全国」という言葉を掲げて奮闘した橘桔平率いる不動峰という学校は、きちんと目標を達成し周囲の意識を変えた。
しかし、これからの不動峰はどうなるのだろうかと思いを馳せずには居られない。次の目標とは何か。橘さんの後任である部長は誰がなるのか。そもそも不動峰はレギュラー人数が不足してしまう。
期待も大きいが問題も大きいというのが正直なところだ。
全国大会という荒波を経験したこと自体は有利に働くだろうが、氷帝VS立海で描かれたように玉川くんなど、他校の層だって厚い。もう彼らは「ダークホース」ではない。立派な「強豪」だ。
あまりに偉大過ぎる「橘桔平」が居てもなお果たせなかった全国制覇を、どうか成し遂げてほしいと思ってしまう。
彼らの活躍を未だ魂の在学している、不動峰の1生徒として祈っている。