HSPのわたしがキャバ嬢でNo.2になったお話。[後編]
みんなが普通に、めちゃくちゃ頑張って生きていることが分かって
みんなが普通に、めちゃくちゃしんどくて
みんなが普通に、少し逃げたいことが分かって
わたしはこの街でどうしようもなく救われた。
お店に会いに来てくれた人と
毎晩、「一緒に少し逃げること」を繰り返した。
一対一は苦手じゃなかった。
わたしはいつも、「はじめまして」の言葉に目いっぱいの気持ちを込めた。
どんなに失礼な態度をとられても、
心無い言葉を掛けられても。
今日もどこかで、何かを思い、生きていた相手に、お疲れ様とありがとう。
少しでも、ここで過ごす時間が報われてほしかった。
だってそしたらわたしが報われる。
手の抜き方なんて知らないから、
考えすぎながら、抱えすぎながら、きっちりと全員に同じ温度の気持ちを返した。
わたしは結局一度も、一瞬たりとも別人にはなれなかった。
気が付いたら半年くらい経った時にNo,2に入った。
小さなイベントもやってもらったけど、
ずっと、嬉しさよりも、達成感よりも、
いつか必要とされなくなる恐怖の方が大きかった。
タイトルにしたくせに、
HSPのわたしはこの結果に見事に身動きがとれなくなった。
ある日、店で突然キスをした。わたしから。
次の週、その人は「彼女と別れてきた」って言った。
本当は全部分かってた。
こういうことじゃない。
背負ったり、背負わせたりとか、全部違う。
本心だとか、本心じゃないとか、正しいとか、正しくないとか、そんなんじゃない。
本名も、年齢だって、なんだっていい。
全部分かっているのに、
「わたし」のままだった「わたし」は、
ずっと真正面から向き合いすぎていた。
ある日、代表から、
「アオちゃん、枕(営業)はしなくていいからね。っていうか、しないでね。」
代表は全部分かっていた。
わたしはいつも裸で何の武器も持たず、無防備に自分をさらけ出していた。
傷つけられても、傷つけてもやめなかった。
なぜか。
それは、HSPであるわたしが、
いつも嘘が嘘だと分かってしまうからだと思う。
正しいとか、正しくないとか、そんなのどうでもいいはずなのに、
正しいことしか必要じゃなかった。
本心じゃないと、苦しかった。
一対一の異性が、恋愛以外に成り立つ関係を知らなかった。
好きじゃない相手と、なんとなく過ごせなかった。
まぁ、だから多分、
No.2になれたっていうのは、そういうこと。
結局枕は一度もしなかった。
がっかりする人もいたし、それでも会いに来てくれる人、
そもそもそういうことを求めない人もいた。
求めないことも、わたしにはちょっと理解できなかった。
その後すぐに本格的に就職活動が忙しくなって、辞めた。
あの時出逢った名前も知らない方々は、
一人残らず魅力的で、うっすら好きだった。
完璧に作られた世界の中でも、
人と人が本当の意味で繋がれた時間は、絶対にあった。
ただわたしは、わたし以外になれなかった。