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とあるすき焼き屋の閉店
(雑談集『◼️』にて2023 11/20に公開済の雑談を、雑談部屋でも公開。)
16日の昼、遠方のとあるすき焼き屋が閉店するという情報を目にした。最終営業日は同月の19日らしい。え、三日後やん。
あまりにも不意の出来事であったが、僕は少考の末に最後にもう一度食べる為だけに弾丸移動する決意をした。
本店は別に個人経営店でもなければすき焼き屋でもない。自分が住んでいる西日本の店舗数が特段少ないだけで一応チェーン店であるし、すき焼きのみではなくしゃぶしゃぶやお寿司などの和食メニューも取り扱う飲食店である。
僕自身もしゃぶしゃぶ食べ放題目的で訪ねたことも何度かあり、何れも思い出深い時間である。
しかし僕個人の本店での印象深い思い出は、父親に誘われて牛すき焼き御膳肉増しを二人で食べに来た日々である。口数が少なめで多くを語らない父親と会話することがあまりなかった若かりし日の僕にとっては、二人でユックリした時間を過ごせる機会が貴重だったのである。
ということで一応家族にも連絡を入れておいた。「11/18にランチ食べに行きます」と。
閉店に際して時間も金銭も不足している中で態々帰るという暴挙を遂行する当日、ランチへ行こうとすると、なんとなく来てくれそうな父のみならず、母と妹まで一緒に行くことになっていた。わお。
「土曜昼に四人揃って食事なんて珍しいこともあるもんやなあ」
「お前が帰って来るのがまず変やねん」「閉店することぐらい説明してよ」「最後やから」
いつもガラガラの広大な駐車場が目に見えて埋まっていることに驚きつつ入店し、少し待ってから席へ案内された。
席への道中、客は「へえ、閉店しちゃうんやなあ」などと言いながら大体が食べ放題を注文していた。
当然我々は違う。全員でいつものんを注文である。僕なんか態々来ているのだ、鍛えが違う。
来た甲斐はやはりあった。辛さと甘さのバランスが素直で巧妙な万人受けする割下の味、野菜や平麺やマロニーも食べられる、そしてごはんとお味噌汁とたまごがおかわり自由で約千円。食材の味は言うまでもないが十分に美味しい。家族全員が舌鼓を打った。
良いお店が、自分が見初め気に入ったお店が、店を畳む瞬間に立ち会う度に「これからも大切なものの大切さを失う前から認知して生きていくぞ」と胸の痛みと共に再確認し決意するのである。
不意に有効期間が短縮したクーポンを使って貰った初めてのコーヒーの味と共に、閉店の悲しみと新たな思い出を記憶に刻んだ一日であった。
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