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無言電話の話

(雑談集『◼️』にて2024 3/21に公開済の雑談を、雑談部屋でも公開。)


 ある日、僕は家賃を滞納してバスに乗っていた。
 食費も碌に捻出出来ない日々の中で、約七年使ったスマホデビュー機のバッテリーが流石に音を上げ買い替える決断をした為、二千円札と100ニュージーランドドル札以外小銭しか持ち合わせがない僕は、降り注ぐ滞納者宛の書類や電話を躱しつつ利子代わりの振り込み手数料を支払い家賃を借金していた。

 身を削って購入して早々横断歩道へと冒険に出たじゃじゃスマをポケットに入れて、運転手の乱雑さ故か普段より揺れるバスで移動している最中、ふとメモが取りたくなったのでスマホを取り出した。
 すると思い描いていたロック画面ではなく、電話の履歴画面が開いていたのである。
 指や服が当たったのかもしれぬなあと不思議に思いつつも画面を閉じると、何かの音と共にホーム画面に帰ってきた。
 流石に違和感を感じたので改めて見てみると、なんと僕のポケットのスマホ発信で電話していたのである。え、なんでっ?
 履歴によると電話は約三分行われており、相手は家賃保証会社であった。
 つまり僕が家賃を滞納して保証会社からの連絡を全て躱している間に、ポケットの彼奴は保証会社に無言電話をお見舞いしていたのである。化け物めが。

 エネルギッシュな彼奴に説教をしつつ発見した振動で自動的に色々やっちゃう謎機能をオフにし、相変わらず妙なものばかり標準追加するAppleに小言を言いながら、取りたかったメモと家賃のことをスッカリ忘れてバスに揺られるのであった。

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