Newsletter【 旅先案内人 vol.1】瀬戸内リトリート青凪の、『DJ支配人』の試み
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こんにちは。ホテルや旅館を運営する、温故知新です。
昨年より、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたストーリーをお届けするニュースレター「旅先案内人」を発行致しました。
普段、私たちの運営施設にご宿泊くださったお客さまなどを対象に、ニュースレターをお届けしております。
noteではバックナンバーを掲載しています。ここからは【10月04日 配信 旅先案内人 vol.1】の内容をご覧ください。
個性あふれる旅先案内人たちのエピソードで、みなさまをまだ見ぬ旅へとお連れできれば幸いです。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f 等)
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【10月04日 配信】
※文中のイベントは既に終了しております。
旅先案内人 vol.1
愛媛に“アソビ場“を作る。
瀬戸内リトリート青凪の、『DJ支配人』の試み。
「愛媛には、"遊べる場所"があまりないなあ。」
愛媛にある、私たちが運営する『瀬戸内リトリート青凪』(以下、青凪)の総支配人の吉成(よしなり)は、自然豊かで落ち着いた愛媛の暮らしに充実感を感じていたものの、どこか少し、物足りなさを感じていました。
吉成は、ホテリエとしてはちょっと変わった経歴の持ち主。青凪の支配人を務めるかたわら、DJとして個人でも活動をしていて、アートイベントやカルチャーイベント、野外音楽フェスのオーガナイズを並行して続けているのだそう。言わば、DJと支配人の二足のわらじを履いた、「DJ支配人」。
都会にいると、週末になればアートイベントや音楽フェスが日常的に行われています。しかし、愛媛にはそういった場所があまりありませんでした。エッジなカルチャーが集まり、人々がアートや音楽を起点に集まる、「開けた場」がなかったのです。
「自分自身が楽しめるような、楽しいアソビ場を作りたい」
そんな、吉成の”遊びゴコロ”が、一つのプロジェクトを動かすことになりました。
待っていては始まらない。愛媛を盛り上げるために自分たちにできること。
青凪がある愛媛は「瀬戸内」と呼ばれるエリアです。ここ数年、香川や岡山などの”東瀬戸内”エリアで行われている「瀬戸内国際芸術祭」の影響で、多くの観光客が押し寄せ、海外からも注目を集めています。
瀬戸内の持つ文化や自然、美しい景観を活かし展開されるアート作品や建築の数々。それらは地域の魅力を最大限に引き出し、多くの人を魅了しています。
実は、ここ青凪も、そんな瀬戸内の美しい環境を活かして作られた、1つの「作品」なのです。建築家の安藤忠雄 建築・設計の建物で、かつては、「美術館」と、限られたゲストのみが滞在する「シークレット・ゲストハウス」として使用されていました。
しかし、青凪のある愛媛などの"西瀬戸内"は、芸術祭が開催されていないエリアなのです。
「芸術祭はどこで開催していますか?」
「愛媛ではやっておらず、ここ(青凪)から、5時間程かかる東瀬戸内で開催しているんです。」
瀬戸内にアートを鑑賞しにきたゲストと、こんなやり取りをすることもしばしば・・・。
「いつか、私たちのエリアでも芸術祭が開催されるようになるだろうか?」支配人の吉成は、そんな風に考えることも多々ありました。しかし、一体いつなのだろう?
待っていても始まらない、それだったら自分たちでやってしまえばいいのではないか?そう企てたのです。
一人の遊びゴコロから生まれた、小さな「芸術祭」
「自分も楽しめる”アソビ場”がほしい」と考えていた吉成は、自分のアソビ場となる、「芸術祭」を作ってしまおう、そんな大胆なことを考え始めました。
安藤忠雄の作品の1つでもあり、今までも地元アーティストとコラボ企画を実施したりと、アートとの関わりが深かった青凪は、瀬戸内の魅力を伝えるショーケースとしては、最高の舞台でした。
しかし青凪は、普段は全7室のラグジュアリーホテルとして機能していて、宿泊できるのは1日7組のお客様のみ。
「自分が思い描いている”アソビ場”は、もっと人が集い、訪れる人の交差点になるような場所。特に、地元の人々に、当時美術館だった頃足を運んでいたように、青凪に訪れてもらいたい。」吉成は、そんな思いを抱きました。
そこで、ホテルという枠組みを越えて、宿泊者だけでなく一般の方々にも、建築やアートやその日の様々なコンテンツをお楽しみ頂ける「芸術祭」を、今月10月に行うことに。
地元の人も観光客も一緒になって、新しい文化に触れ、楽しんでもらう場を作る。10月12日~14日の3日間、そんな場を、地域に開けた「芸術祭」として実現することになりました。
吉成の”アソビ場を作りたい”という遊びゴコロは、多くの人や、地元の企業、アーティストを巻き込み、ホテルという概念すらをも壊し、芸術祭という形でアソビ場をつくってしまいました。
好きなことへの熱量が、地域を動かしていく。
「自分たちではじめれば良い」とは言っても、芸術祭の実施を目指すには人もお金も必要でした。そこで青凪では「クラウドファンディング」を活用して、自分たちのプロジェクトの応援者を募り、資金を集めることにしました。
しかし、地方のいちホテルが声をあげても、初めは思うように賛同者が集まらず、クラウドファンディングの進捗も芳しくありませんでした。そんなときも、発案者の吉成自身が、粘り強く、日々協力者を集めるために走り回ったそうです。
そして最終的には、クラウドファンディングでは、目標の206%の達成率と、非常に多くの応援者に支援して頂くことができました。そして、愛媛県や、松山市の後援までも取り付け、多くの方にご協力頂くことになりました。
吉成自らが熱量をもった発信源になることで、ホテル全体、そして地域全体、更には県までも巻き込み、芸術祭のプロジェクトは、どんどん熱量を持った塊になっていったのです。
熱量を持って手を挙げる人がいれば、なんでもできる。そんなことを、この芸術祭が証明してくれました。
新しい感性から生まれ、共有される場を。
これからの地域のカルチャーを築く。
【地域、アート、地元の人、訪れる人の「交差点」、芸術の集う場所に】
吉成の遊びゴコロを起点に動いた1つのプロジェクトが、これからの青凪に1つの使命を与えてくれた気さえします。
私たちは、ホテルという枠組みを越えて、新しい地域のカルチャーを築いていく。そうすることで、愛媛に少しでも興味をもってもらったり、旅するきっかけになる。そんな流れを生み出していけたら良いな、と思うのです。
芸術祭当日は、もちろんDJ支配人(吉成)も、大いにフロアを盛り上げる予定。遊びゴコロ溢れる支配人はきっと、彼なりのユニークな視点で、訪れる人に愛媛の魅力を伝えてくれるはず。
<文化音楽芸術祭 概要>※こちらのイベントは終了致しました。
会期:2019年10月12日(土)〜10月14日(月) 3日間
会場:瀬戸内リトリート青凪
【 吉成太一 プロフィール】
瀬戸内リトリート青凪 総支配人。福島県出身。コンサルティングファーム出身のホテリエとして、イベント企画を中心にアート活動を行い、40もの音楽イベントやアートインスタレーションをオーガナイズ。2017年より、瀬戸内リトリート青凪の総支配人へ。ミシュラン最高評価をはじめ、国内外での評価を獲得している。
編集後記
遊ぶように、働く。働くように、遊ぶ。良い意味での、「公私混同」。
支配人の吉成を見ていると、この言葉が浮かんできます。青凪はきっと、彼の“好き“で溢れているんだろうなあ、と。“好き“だからこそ、高い熱量を保て、めまぐるしいスピードで、しなやかに変化もできて、チャレンジしていくことができる。
遊ぶように、働く。働くように、遊ぶ。誰かの強烈な“好き“の渦に巻き込まれるのは、とても気持ちがよく、思わず楽しさが伝染してきます。
文・編集担当 小林 未歩
(温故知新の旅好き社員。普段は、ホテルの企画プランナーや新規ホテルプロデュースを担当。)
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