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Newsletter【旅先案内人 vol.8】宿をアートの発信地に!革新的茶会を大成功に導いた仕掛け人
こんにちは。ホテルや旅館を運営する、温故知新です。
普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
noteではバックナンバーを掲載しています。ここからは【12月15日 配信 旅先案内人 vol.8】の内容をご覧ください。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f 等)
松山駅から約35分、山の中にひっそりと潜む宿「瀬戸内リトリート 青凪」
果てしなく続く瀬戸内海を眺めていると煩悩が消えていき、まっさらな自分に戻っていくのを感じられます。そんな、非日常ステイを叶えてくれるこの場所で、一風変わった茶会が開催されました。
宿が巨大な茶室へと一変、「瀬戸内リトリート 青凪」茶会を開催
「瀬戸内リトリート 青凪」では、今年10月、前衛的お茶のアート集団“The TEA-ROOM”とコラボレーションした茶会を2日間にわたって開催しました。
The TEA-ROOM
現代における「茶の湯」のあり方を探求し続けるアート集団 。
茶の湯を庭、建築、絵、書、香、華、音、器、食、衣、礼で構成される日本の総合芸術として捉え、茶の湯が持つ文脈をThe TEA-ROOMならではの解釈に落とし込み「千利休がもし現代に生きていたら、一体どんな茶を立てるのか?」をコンセプトに、アート活動を行なっている。
遠方からお越しのご宿泊のお客様のみならず、地元の方も多く訪れ、大盛況のうちに幕を閉じました。今回ご紹介するのは、このイベントの仕掛け人となった「瀬戸内リトリート 青凪」でマネージャーを務める木村直樹。
木村は松山出身の元料理人。地元のレストランで働いていた頃、支配人の吉成と出会い「ホテルをゼロから作れる人を育てたい」という吉成の言葉に感銘を受けて、2019年1月に「瀬戸内リトリート 青凪」の一員に。
茶会開催のきっかけとなった木村の想い
「瀬戸内リトリート 青凪」といえば安藤忠雄建築、元美術館というアートな宿。その類稀な環境下で働く中「宿からアートを発信する。」そんな仕掛けができないか、と自然に考えるようになりました。
もう一つの動機は「消費される宿」ではなく、何度でも訪れたい「心に残る思い出の宿」を作りたいと思ったこと。
SNSに写真をアップしたら満足されるのではなく、大切な日や自分へのご褒美に訪れたいと思えるような、お客様の人生に長く寄り添える宿にしていきたい、もしかしたら宿の個性を活かしたイベントを開催することが、そういった結果に結びつくかもしれないと考えました。
アイディアが浮かんだのはプライベートで通い始めた茶道教室。茶道には相手への配慮や思いやりから成る「暗黙の了解」ルールが多く存在します。
例えば、茶事でお客様をお迎えする際に、亭主は準備が整ったら打ち水をします。これはお客様に対して「お待ち申しておりました。どうぞ中へお入りください」という合図です。水が打たれていることを確認して、お客は中へと入ります。相手に気を遣わせない心遣いが感じられる行為です。
こういった暗黙の了解ルールを通じて、日本人らしいおもてなし精神や、気遣いの心を養うことができる茶道に魅了された木村は、いつか「瀬戸内リトリート 青凪」で茶会を開催したいと思うようになりました。
時を同じくして、往来の茶道スタイルにとらわれず、自由な発想で茶道を表現している“The TEA-ROOM”と出会いました。
五つ星ホテルとは思えない先鋭的な取り組みに励む「瀬戸内リトリート 青凪」と、“The TEA-ROOM”は同じ方向を向いている、タッグを組んで茶会を開催すれば間違いなく素晴らしいイベントになるだろうと確信しました。
「このタイミングで出会うなんて運命かもしれない・・・」と早速支配人の吉成に相談すると二つ返事でOKしてくれました。しかし、今まで一度もイベント企画を経験したことのない木村にとっては全てが未知数です。
価格設定や集客に至るまで、手探り状態で進めることになりました。なにより、前例の無いイベントにお客様がどれだけ価値を感じてくれるのか、当日まで不安で仕方なかったと振り返っていました。
しかし、結果は木村の想像を良い意味で裏切る形となりました。
茶会当日、朝から降り続いていた雨はまるで天が味方したかのように開始時刻にピタりと止み、雲の隙間から晴れ間が見えました。夕陽の光に包まれた神秘的な情景の中、水上茶室、そして生花パフォーマンスが行われました。
茶道を経験したことがある人もない人も、皆釘付けになり、会場に不思議な一体感が生まれました。「瀬戸内リトリート 青凪」を舞台とした“The TEA-ROOM”の圧巻のパフォーマンスは、茶道の新たな楽しみ方を伝えることに成功したのです。
宿を茶室に見立てるというユニークな発想で、思いもよらぬ感動を生み出した今回のイベント。インタビューを重ねるうちに、木村の真っ直ぐな想いがイベント成功の最大の要因だったのだろうと感じました。
きっとまた彼は「瀬戸内リトリート 青凪」を舞台とした新たなストーリーを紡いでくれるに違いないでしょう。
編集後記
先日初めて「瀬戸内リトリート 青凪」を訪れました。
そうしてここにいると、創作意欲が湧いたり、新しいことにチャレンジしたいなんて気分になれる理由が少し分かった気がしました。
個性豊かな仲間に沢山刺激を受けながら、人生の可能性を広げていけるこの環境が、木村にしっくりきているんだと思います。
これからも、深めていける仲間と共に、瀬戸内リトリート 青凪の新たな扉を開いていって欲しいと思います。
星子莉奈(温故知新 )
ABOUT:温故知新について
光を見つける。磨いて、届ける。その地域にしかないもの、魅力的なもの、守るべきもの。その光を見つけ、形を作り、国内外の皆様に届けること。それが私達のミッションです。その宿があるからそこに行きたいという「目的地になる宿作り」を目指しています。
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