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人生を左右する 薬を差し出す人   瀬川幹央さんインタビュー

たたずまいが静かな人。それが瀬川幹央さんの最初の印象でした。
奈良盆地の南の方の橿原市、近鉄八木西口駅前で、エスプレッソとパスタの小さなお店noshを開いて11年目の幹央さん。その淡白で飄々とした姿からは想像できなかった、熱さ、激しさ、秘めた野望のお話を伺いました。瀬川幹雄さんの無名人インタビュー、お楽しみ下さい。

今回参加して下さったのは瀬川幹央さんです


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イントロ〜「やってる感」の気持ち悪さ

オンキ:さて、今日は何のお話しましょうか。ノーテーマ、ノープランなんですよ。

ミキオ:ノープランで。

オンキ:いろんな人の話を聞きながら、風通しのいい世の中ができたらエエなあ、みたいな感じです。

ミキオ:素敵じゃないですか。

オンキ:今、幹央さんは、どういう感じなんですか?

ミキオ:今ね、こちらは橿原が5月の連休前に、奈良県から緊急事態措置というのが出まして、各市町村に決定権が委ねられて。今は橿原市が時短要請っていう形で、営業を8時までって感じになってます。別に、アルコールの提供とかは大丈夫ですけども、もう大阪、京都、兵庫、三重。周りが蔓延防止法をやり始めたので「奈良、どないかせい」みたいな感じになってて。

オンキ:奈良、結構多かったですもんね。

ミキオ:なんかね。感染者数が上がってきてるのと、周りの県が締め出したので、絶対人が流れ込んでくるだろうっていう話で。
奈良市とかは、ゴールデンウイークの最初の方は、一気に来てたらしいんです。見るに見兼ねて、奈良県の各市町村が、もう何とか出してくれと要望した結果、こうなって。ただ、同業の人たちとかと話してると、奈良は別にやりたくないんだなと。県自体がやると、お金をたくさん出さないといけない。

オンキ:要請した上は補償せなあかん、と

ミキオ:そう。各自治体でやれば、1日1万円ずつ市町村から出る。プラスアルファ、県からも出しますっていうことなので。支払う額としたら、奈良県は少なくなって結果オーライみたいな。

オンキ:奈良県、貧乏だっていうことですか。

ミキオ:貧乏というか、そんなところにお金を使いたくないというのか。僕的には、荒井さん(奈良県知事)のやり方は、逆に良かったなと思ってまして。一気に緊急事態とか、まん防(まん延防止等重点措置)とかやり始めると。各店でアクリル板を設置したりとか、半強制的にさせられて。しかも見廻り隊が出だして。強制的に守ってない人たちから罰金を取るとかの話になってきて。そうなってくると、もはやどこに本当の問題があるのか分からないと思えたので。コロナが云々、感染が云々っていう話じゃ、どんどんなくなっていっている気がしてね。

オンキ:なるほど。

ミキオ:だから、もはや感染者数を減らそうとしているわけじゃない。名目というか、形というかね。やってる感を出せばいいみたいな。

オンキ:なんかどっかで聞いたような感じですね。

ミキオ:すべてそれで動いてる気がして仕方がなくて。時短要請が出た後、すぐに見廻り隊らしき人達が市から出てたんですけれども。最初だけサクッと回って、もう終わりっていう。よくよく聞くと、やってる感を出しとかないと、県からお金が下りないという話らしいです。

オンキ:なるほど。

ミキオ:っていう全てがもう、やってる感だけを出さなければいけないっていう日本のやり方が、すごく気持ち悪いなと僕は思ってて。

オンキ:それ、コロナのことだけじゃないですよね。

ミキオ:だけじゃなくて、全てにおいてパッケージ感というか。僕はお店をやってるから、食を仕事にしてお店をやってますけども、仕事というよりも、いろんな人がお店をやってるの見てても「っぽくすればいい」みたいな。流行りモノが流行るパッケージがあって。
何かに似つかわしくパッケージして、ぽくやれば、それなりに集客ができて儲かる、お金になるという。そういう構図が、すごく気持ち悪くて。コロナにも当てはまると思うんですけど、大きな闇に流れると言うか。 

オンキ:本当にしたいことをやってるんでもなく。それが本当に人の役に立つからということでもなく。

ミキオ:なく。

オンキ:なく。「今、こうしとけばいいんだろ?」っていう、よく分からない、誰かがいいって言ってる事に「乗っかっときゃいいんだろ」みたいな感じですね。

ミキオ:そうなんです。そこすらも考えようとしてないのじゃないか、っていう危険感というかね。

オンキ:考えんの、面倒ですもんね。

ミキオ:面倒くさい、楽ですよね。毎日それなりに過ごせるんでしょうけど。

カウンターの中から10年眺めて

ミキオ:いわゆる「あなたは誰ですか?」みたいなところというか。「僕はこう生きてます」的なものが一切開発されないんじゃないかって。「あなたは今、何をして生きてますか」っていう風なところに「いやなんか面白そうやから」とか「格好良かったから」とか。入りとしてはいいんでしょうけど、その奥に潜む理念というか。思いというか、そういうものがないと、話が面白くないなって、いつも思っちゃう。そんなこと、ずっとここ何年か考えております。

オンキ:お店に来るお客さん同士の会話聞いても、そういう流れに乗ってるだけの、上辺の演技みたいなものを感じることって多々あったんですか?

ミキオ:もう、それしかないぐらい。一般的な会話の中では、もうそれしかないぐらいです。聞いてると。

オンキ:でも、そんな人でも「もう、あれ、本当に素敵だったよ、びっくりしたよ。自分にはズキンときたよ」みたいな、その人ならではの感じたことを、誰かと「お前と話したくてしょうがなかったよ」みたいな感じで話す人とか、たまには現れないんですか?

ミキオ:年に10人もいないと思います。うちの店のスタイルだと、ふらりと突然初めましてで来るお客さんが、それほど山ほどはいないので。確率的には低いとは思うんですけど。僕なりの思いで作ったお店の感覚というか、食べ物プラス空気感と、音楽だったりとか、そこにあるものを察知して、会話ができるような方って本当にまれです。そこにセンサーを張ってくれないというか。そうであればいいなあとは思ってますけど。いらっしゃいませって入ってきた瞬間に、空間に対して別に関心も寄せず、女性は特にですけど、お二人で来られると、基本的には二人で話をする、それが目的であって。そのための場所をとりあえず選んだというか。悪いイメージですけど。

オンキ:作った人ならではのこだわりというか、美意識が働いてるとピンと感じたら、つい「これ何なんですか」と質問したりしますよね。そういうのがないんですか?

ミキオ:ほぼほぼ、ないですね。

オンキ:なんか、寂しいですよね。

ミキオ:ただ、いつも定期的に来てくださるお客様は、そういうところが好きで来てくれている感じはするので、伝わってるなっていう。特にきっちり話をした訳じゃないですけど、そういうところに良さを感じて来てくれている。食べ物も好みであるとか、なんか癒してもらえるというか。

オンキ:そういう、せっかく設えてある空間であり、食べ物でありに何も反応しない人って、外国行って出会えるはずないものに出会ったとしても、やっぱり同じように反応しなくて、ガイドの通り「行っとけばいいよ」っていうお店に行き、「見とけばいい」っていうものを見て、お終いにするんでしょうか。

ミキオ:ねえ。そういう傾向はあるんじゃないかな、特に日本人は、とかって言うのはあんまり好きじゃないですけど、そこがなんでなのかなって、ずーっと思ってて。お店が長くなればなるほど、その疑問がずーっとあって。

人を左右する作業

ミキオ:いろんなお客さんに、僕が一人でお店やってることに対して「なんで一人でやってるんですか?」みたいのとか「なんでやろうと思ったんですか」みたいな話をされることも、結構、今まであったんですけど。まあまあ人の人生に関わってきて、左右を、影響してるというか。

オンキ:左右を影響してる、とは?

ミキオ:人の道しるべと言うのか、何と言うのか。今まで、結構そういうことが多々あったんですね。
例えばで言うと、一人の女の子が海外にワーホリで行ってみたいと。長年普通に会社員をしていて、ずっと思っていると。興味があって、ワーホリのビザをもう申請したと。でも会社に辞めると言えてないと。3ヶ月先の予定は立てて、ビザも取ったけど、まだどうしようか迷っていると。会社には言えてないと。なんかその「パッションはあるのに現実的にまだ踏み込めない」というところの、選択のひと押しを僕がする役というか。

オンキ:最後の背中のひと押しを幹央さんに期待してるんですか?

ミキオ:たまたまそういうことが、よくあるんです。この11年間で言えば、10人以上はそういうお話をして、方向転換した人達がいるという。僕という人間を知らなくても、たまたまお店に来て、僕がやってる事を見て。「何、この人」みたいな感じで話をしているうちに、その方の悩みなり、迷いだったりの相談みたいになって。最終的に、僕が話を聞いてたら「いやそっちでしょ」っていう話に落ち着くというか。

オンキ:それは、幹央さんが「本当はこっちへ行きたいんじゃないですか?」みたいに結論づけるような、促しみたいなのは、なされるんですか?

ミキオ:話を、とりあえずは聞くんです。聞いてると、そういう風にしたいと思ってる風にしか僕には聞こえないので。そうしたいんじゃないですか?みたいな形では言いますね。

オンキ:そうとしか感じられない。声、姿、言い方からも、迷っているようでいて、あなたはもう迷ってないんじゃないですか、的な。

ミキオ:そうですね。

オンキ:人と人が話すって、そういうことですよね。自分で自分を鏡見てもわかんないけど、その反応?話した相手の反応によって、自分が本当は何を求めているのか、感じてるのか分かる、みたいなことがあるのかもしれない。

ミキオ:なんかそういう作業っていうか。僕はどっちかって言ったら、そういう作業をずっとしてきた方なので。

オンキ:作業と仰いましたよね。

ミキオ:作業。作業と呼んでいいのか。こう、大きくなる中で、したいことが明確にあって、それをやってきたような感じなので。

オンキ:それは、お店を始めてからそうなんですか?それとも、もっと前、他で働いてた時や、学生の時や、もっと若いころから幹央さんの周りの人が「気がついたら幹央さんに背中を押されてた」っていうことが、ずっとあったんでしょうか。

ミキオ:なんか今思い返すと、僕はそういう仕事を、この世でしてるなというか。変な言い方をすると。

オンキ:おっと、役割。

ミキオ:はい。僕の使命はそれなんだっていう、最近感じるようになった。こんな話は、なかなか気持ち悪いのでしにくいですけど。だから僕は、きっとお店をやって、そういう人達と話をして、いろんな人の人生に左右、っていうか影響を与える部分もあったりとか。必要なときに話を聞けたりとかっていう。

オンキ:そのいい影響を与えれた時って、幹央さんも嬉しいんですか?

ミキオ:僕はそうですね。その後に、人が結構変わっていく姿を見ていると、うれしいなっていう。

オンキ:その後の姿もずっとフォローしてるんですね。その後の変化も見続けられるスタンスにあるんですね。

ミキオ:うん。分からない方もいらっしゃれば、その一日の話によって変化して。なんか違う人生を歩み出して、時々顔を見せにきてくれるという人達もいて。そういうところを見てると、嬉しいなっていうのがあるので。いわゆる飲食店っていう枠ではなく、僕のやることはそれなんだなっていうところを、いつも思いますね。

オンキ:その自覚に至ったのは、この数年ですか?

ミキオ:そうですね。そういうものだっていうのは、本当にこの10年の境目ぐらいで、今までやってきたことを振り返ると、あ、そういうことを僕はしなければならなかったというのか。自然とそういう仕事をさせられてたというのか。

電車の扉が開くと現れる人たち

ミキオ:お店のスタート自体も、かなり、いろんな瞬間的な出会いで成り立ってるので。今思うと、すごい全部がスピリチュアルな感じなんですよね。

オンキ:何かに導かれているような感じが、実感としてあったんですか?

ミキオ:そうですね。あの瞬間は、かなりまあ鳥肌ものですけど。

オンキ:その鳥肌ものの瞬間のこと、もう少し伺ってもいいですか?

ミキオ:はい。11年前スタート、2010年3月1日オープンですけれども。2009年の夏ぐらいまで、別のお店で働いていて。飲食店ですけど。その時点で僕は31歳。で、27歳で飲食業に転職してるんですけど。途中、30歳の時に父が、がんで亡くなりまして。その時点で飲食の道を一回諦めたんですね。僕、一人っ子で母一人なので。その当時、母も調子崩してて。時間もある程度安定した仕事じゃないと、ちょっと無理だなという感じだったんです。なので、会社員に一旦戻って働いたんですけど、どうしても合わなくて。もともと会社員に合わずに辞めたのに。やりたいと思ったことを、結局捨てきれなくて。どうしても飲食やりたいという思いが強くて、また舞い戻ったんですけど。最終的に働いたレストランのお店が、今までで最強に一番厳しいお店で。

オンキ:厳しい?

ミキオ:イタリア帰りのシェフのお店で。カフェイメージで働いてた自分の感覚とは全く違う、戦場にいきなりぶち込まれたかのように。他にスタッフさんいなくて、僕一人が雇われで入っているというスタイル。結局、精神も身体もボロボロになって。

オンキ:集中攻撃受けたんですね?

ミキオ:そうですね。もう理不尽なことも全て。まあシェフが絶対王政なので。刃向かえないというか。

オンキ:これは絶対黒でしょって思っていても、白だと言われれば、白なんですね。

ミキオ:そうなんです。そういう世界だと知りつつも、結局、最終的に働いたお店がそういうところで。洗礼を思いっきり受けて。
それで3ヶ月、なんか肺炎みたいな感じになって寝込んで。で、辞めさしてくださいみたいな感じで辞めて。で、もう僕はやっぱり飲食はダメだと思って。しばらく休養を取って、2ヶ月ほど、ずっと家で。結果、母を心配させるという形になってしまったんですけど。

オンキ:逆に(笑)

ミキオ:で、どうしようかなっていう時に。今のお店で野菜とかお世話になってる方が、同級生の旦那さんなんですけど。その同級生の女の子が、たまたま駅のホームで電車が止まった目の前の扉から出てきてですね「最近どうしてるの」みたいな話になって。これこれこうで、もうボロボロだと。どうしようか迷ってるみたいな話をして。したら、彼女の旦那さんが「ウチの旦那もこの間まで、ずっとお店をやりたくて物件探してたのよ」みたいな話で。その旦那さんは、もうお店をやるのは止めて畑をしようと思ってると。

オンキ:なるほど。

瀬川:で、会って話をさせてもらうことになって。話して、ちょこちょこ一緒に遊んでもらったりして。なんか、それぐらいのタイミングで、僕もまた違う同級生から、今のノッシュ(ミキオさんのお店)の物件、空いてるらしいよっていうのを聞いて。で、畑の旦那さんに「なんかこういう話があるんですけど」と伝えると「じゃ、見に行ってみようよ」と。「僕、電話しとくから」って言われて。

オンキ:旦那さんが。

ミキオ:その人が大家さんに。たまたま、店の横の角地、服屋さんになってますけど。もともと大家さんの娘さんがお店をされてて。そこに電話番号貼ってあったので電話してくれたんですよね。で、「見に行く事になったから、空けといてね」みたいな感じで言ってくれて。僕が一緒に行くという。

オンキ:なんかこう、引きずられてる感じですね。

ミキオ:そうなんです。なんかやっぱり、その方は慣れてたというか、お店探しをずーっとしてきはったので。いろんな物件を見る中で、結局もう止めたって方なので、「とりあえず見てみたらいいじゃん」みたいな。それでまあ、僕がやってきたお店の事とかも知ってくれてて。僕の料理とかも食べてくれたりしてて。見に行った結果「イメージに近いんじゃないの」っていう話になって。で、大家さんに会って話をしていて、パンパンパンと、サクサク物事が決まりだして。

オンキ:はい。

ミキオ:そしたら、また電車で同級生に会って。

オンキ:また?

ミキオ:はい。違う同級生に会って。

オンキ:都合良すぎますね。

ミキオ:はい。またその同級生の旦那が。

オンキ:また旦那?

ミキオ:そのご夫婦は同級生同士結婚した、長いこと会ってなかった友達で。実は、うちの旦那、店の店舗工事をやっていると。

オンキ:都合良すぎ。

ミキオ:良すぎですよ。んで「今、お店をやろうとしてる。見にきてくれるかな」っていう話で。こんな風に、あんな風にしたいと思ってると、今までずっと溜めてきたイメージを伝えたら「そんなん2週間あればできるよ」みたいな話で。結局、工事の段取りもサクッと決まり。物件を見に行ったのが、9月か10月ぐらい。で、12月ぐらいで大家さんとの契約とかも決まり。工事は1月-2月かな、みたいな話で。で、2月に2週間ぐらいでサクサクっと決まり。で、3月1日でオープンしてるという。

オンキ:理想的に早いっていうか。トントン拍子もいい加減にしろっていうか。

ミキオ:いい加減にしろっていうぐらい。「あ、僕はもうやるしかない」という。あ、もう自分は、僕は自分でやるんだという。

オンキ:でも、さっき幹央さんは「どっちに行こうかな」っていう人の、話を聞いてるうちに「どう考えてもこっちに行くに決まってる」って、その人の背中を押すっておっしゃいましたよね。

ミキオ:はい。

オンキ:幹央さんも、お店を絶対やりたいって言ってるわけじゃないけど。たまたま会ったPeople?同級生の方々は、「幹雄はそっちに行きたいでしょ、だってそう見えるもん」っていうのが分かって。勝手に背中を押してくれたんじゃないですかね。

ミキオ:なるほど、そうですよね。もう滲み出てたというのか。

オンキ:で、そのものすごく都合のいいエンジェルが、電車の扉を開けると次々現れるっていう。

ミキオ:次々現れると。

オンキ:ご都合主義みたいな、漫画みたいな展開ってのも。

ミキオ:本当にそうなんです。

オンキ:野菜育てて店探してる人、内装やってる人が、電話するわけでもなく全部電車の扉が開いたら出てくるって、おかしいでしょ。

ミキオ:そうなんです。で、またあの、エスプレッソマシンも出会いがありまして。

オンキ:そこも?

ミキオ:そこも、たまたま「あそこの物件空いてるらしいよ」って話をしてくれた友達の同級生が。

オンキ:また。

ミキオ:その同級生は、店やろうとして止めたんですけど。コーヒーが大好きで、エスプレッソの機械を買おうとしていた業者がいた。その業者の方から、僕が店やるって決めた後に「売約済みでキャンセルになった機械がある。余ってるから要らないか」って話になって。で、結局、僕のとこに来るという。

オンキ:エスプレッソのお店やろうとして止めた同級生と、またまた出会ってると。

ミキオ:そうなんです。

オンキ:それ、なんかありますよね。

ミキオ:結局、その物件の話をくれたのは高校の同級生。で、マシンを紹介してくれたのは、その高校の同級生の中学校の同級生。そのコーヒーマシンの連絡をくれた子とも、何回かは会ったことがあったぐらいなんですけど。突然繋がる、全部が繋がるという。だから(スティーブ)ジョブズが言ったように、点が線に繋がるという感じというのは、あ、本当だなっていうのは。

オンキ:思いがあればね。

ミキオ:はい。捨てなければ、頭の片隅にでもずっと置いとけば、繋がる時がやってくるっていう。

オンキ:気がついたら背中を押され続けてきた幹央さんが、今度は背中を押す役割になってるっていう。順繰りに。

ミキオ:だからステージとしたら、これまでの5年から10年の間で、そういう人のお助けをするっていうことを、よくやってきたなと。10年目以降、今の店の雰囲気、テイストに変えてからが、いろんな昔のお客さんによく言われるのが。あ、本当にやりたいことをやれたんじゃないかっていう風に言ってくださる年配のお客さんがいて。ステージが変わっていってる感じはありますね。

オンキ:それは気がつかないうちにゆっくりと進んできました?それとも「ここで変わったな」って実感みたいな、何度か大きな区切りみたいなの、ありました?

ミキオ:なんか気がつけば、最近、こんなんばっかりしてるな、みたいな。最初の頃は、必死こいてお店を回さなければいけないって5年やりましたけど。5年経ってからは、ある程度仕事も手に付いて。お客さんともゆっくり話ができるようになったりとか。この5年から10年目の間は、なんかこう、駆け込み寺かっていうぐらい、いろんな人が悩みを持ち掛けたりとか。

オンキ:駆け込み寺なんですね。

実は薬を作っていた

ミキオ:ここ最近、僕はなぜかスピリチュアルなことを、よく勉強していて。実は母が学会員さんでした。僕が、なかなか生まれなかった時に、学会員さんの中で信心した結果、僕を授かったっていうことがありまして。母は凄く信じてる。それも思いの力だと思うんですけど。僕はそういうのを見ながら、ちっちゃい時から育ってまして。全然興味はなかったし、橿原神宮も近いけど、初詣にも行かない家だったし。神社みたいなのは、別に「ふーん」っていう感じやったんですけど。


橿原神宮は初代天皇を祀る巨大神社です。

ミキオ:この10年を境目に、なぜか最近、気がつけば神社にやたらと行きまくっているという。結構それも、身体の不調の時に出会いがあって。

オンキ:身体が不調になったんですか?

ミキオ:そうです。10年を手前に、結構身体崩して。今までお店やってきた中で一番、最強に体調悪くて。2ヶ月ぐらい咳止まらなくて。40歳を区切りにね。なんか、身体崩した中で得るものって大きいですよね。その時に出会った自然療法であるとか。西洋医療じゃなくて、東洋医療的な考え?予防医学的なものに携わっている方と、たくさん知り合った時期なんですけどね、

オンキ:それまた同級生じゃないでしょうねえ。

ミキオ:それは、同級生じゃないですね。

オンキ:良かった。

ミキオ:それは、お店をやっていく中で繋がった人達かな。僕は、料理を作って飲食店をやっているけれども、イタリアンとか言ってカフェ、エスプレッソってやってるけれども。結局のところ、僕は、薬を作るというか。

オンキ:薬?心の薬ですか?

ミキオ:それは、食べ物、料理。医食同源というのか、食医同源というのか。どっちかって言えば、僕は食医同源と言いたいというか。
という所に今は行きついて。結局、たくさんの人達が僕の店を、医療現場として使うので(笑)

オンキ:「ちょっと腰痛いなあ、ノッシュ行こうか」みたいな感じですか?

ミキオ:に、これからなっていくんじゃないかと。駆け込み寺で相談を受ける、話を聞く場所、寺的な場所。プラス心の癒しでありながら、食の事でも何かを得るというか。食の大事さを知るというか。で、ある同級生。また同級生が出てきた。

オンキ:出た、また来たぞ。

ミキオ:久しぶりに。アメリカに嫁いで、ずっとアメリカにいた大学の同級生が、去年ぐらいにコロナの影響で帰ってきてですね。言ってくれたんですけど。彼女なりにいろんな人を見てきて「絶対センス」というものがある人がいると。

オンキ:「絶対センス」ですか?

瀬川:はい。例えば、スピリチュアル方面に行くと、みんな麻の服着て、肌が浅黒くて、みたいになるとか。たとえば、ロックを聞いたらみんな墨入れるとか。なんというか、結局、外側のイメージというか。

オンキ:「制服1、制服2」みたいな。

瀬川:そういうところじゃなくて「絶対的なるセンスを持っている」と言ってくれたんですね。そういう人は、何をやってもいい感じに仕上げてくれると。そして去年、体調崩した時に、レイキっていう日本発祥のヒーリングの療法に出会った。


レイキについてはこちら

オンキ:そこで、食事療法的なものも受けたんですか?

ミキオ:食事のことも勉強して、西洋医学と東洋医学の違いとか。西洋医学のメリット・デメリット。東洋医学なり自然療法なり、オカルトとされるそういうヒーリング的なものが、なぜ日本で広まらないか。広まると変なことになるのかっていうところを勉強していくと、結局、日本の歴史を遡らないといけないんですね。戦争前の話であったりとか、戦争後にどうなったのかの話とか。っていうところを今、すごく勉強してて。そこにすごくスピリチュアルな部分が密接に絡まり合ってるっていうか。日本の本当の神聖な部分っていうか。自然由来のものっていうのかね。結局、それまでどうでもよかった宗教というかなんというか、信仰心というものが、僕の中でちょっと芽生えた気がして。

オンキ:なるほど。それは、名付けられない自分の中の信仰心なんですか?それとも、何かの教団や教義や宗派みたいなものへの共感だったんですか?

ミキオ:いや、名付けられない。特定の何かじゃない。まあ言うなれば、自然に返る的な感じなんですかね。

オンキ:バック・トゥ・ネイチャーですね。

ミキオ:それをパッケージングしちゃうと、気持ち悪いことになっちゃうので。

オンキ:なりますねえ。

ミキオ:それを、いかにシレーっとやって。これまた、僕の生き方を見た人達が「なんか最近何してんの?」みたいなのを感じて。向こうから聞いてくるように仕向けるというか。

オンキ:町の中に洞穴のような、蟻地獄のようなものを作って、そこに彷徨い込んだ人に呪術をかけていくみたいなイメージですね。

ミキオ:確かに。かかったなっていう感じの。それを、ここ何年かやり始めてまして。そういう自然療法なりの方と出会った時に、和歌山の温泉の水に出会って。

オンキ:水療法って、胡散臭いのもいっぱいありますけどね。

ミキオ:そういう見えないものに対しては、言葉にすると胡散臭いっていう感覚が、のし上がってくるじゃないですか。だから、そこをシレっと、何も言わずに勝手にやるっていう。で、聞いてきた人に「実は、こういう風にしてます」ってだけを言う。

オンキ:なんかあるぞって感じた人からのアプローチがあって初めて「実は」って種明かしするんですね。

ミキオ:感じてもらわないと言えないというか。その基本的なところで、知らんうちにみんなが元気になっているというか。みんな水道水の浄水が出されてると思いながら、すごくいい水を飲んでて。なんか知らんうちに、すごいお腹の調子が良くなってる、的な。

和歌山の温泉の水は「月のしずく」


オンキ:その行いを、誰かに引き継いでもらって。どんどん増殖していく夢みたいなのはありますか?

ミキオ:なんか、それをやろうとすると、結局また。

オンキ:運動とか組織とかいう話になりますよね。

ミキオ:そうなんですよね。きっとそのやり方をすると、今の日本の社会じゃあ、結局また同じ感じの、気持ち悪い系に入っちゃうんで。スピリチュアル感とかっていうのは、ちょびちょび匂わせながら、シレーっと、ジワーっと勝手にやってるっていう。まあ僕の中でも、まだ探り探りな部分もあり、勉強中なところもあるので。

繋いでゆく想い。

ミキオ:うちの爺ちゃんがいた、母の実家が滋賀県の日野っていうところにあるんですけど。日野町って日野商人の町なんですよね。



日野商人とは

ミキオ:僕が、なんでこんな自営業をやってるのかって、突然変異のように。うちの両親は、両方とも公務員で、病院関係で、奈良医大で出会ってるんです。だから、この場所でお店やってることに、すごくやっぱり意味があるっていうか。(奈良医大とノッシュの距離は近い)二人とも医療関係の人間なんですけども。僕が医療に行かずに、なぜ、結局、食の道へ行ってるのかって考えると、さっき言ってた「薬を作っている」とこに、結局行き着くんですけど。知らんうちに医療関係のことをやっているという。

オンキ:知らんうちに。

ミキオ:現世では、別に医療ではないのかもしれないですけど。爺ちゃんは、本当は商売やりたかったらしいんですね。僕の「幹央」という名前をつけてくれた爺ちゃんなんですけど。で、日野の商人のことを勉強すると、なんか陰徳という。

オンキ:陰の徳ですね。

ミキオ:陰徳っていう言葉が出てきてですね。「三方よし」というか、そういうのが出てきまして。

オンキ:近江商人の「三方よし」は有名ですよね。

ミキオ:近江商人の血筋の人っていうか。そういう思いがあった爺ちゃんなので。何か引き継いでるのかなっていう感じもあったりとか。

オンキ:ご先祖さまの思いが、生体濃縮されて幹央さんの中に息づいてるのが感じられるんですね。

ミキオ:そうなんですよね。だから「シレーっとやる」っていうのが大事かなと思ってて。そこに使命感っていうものを40歳にしてちょっと感じたというかね。

オンキ:いや、全くもう大丈夫な感じがしました。

ミキオ:大丈夫かな。なんか、壮大なテーマが、すごい奥の奥にあるので。それがすごく楽しいですね。やっていてっていうか、この瀬川幹央をやっていて、すごくそこが楽しいなっていうか。

オンキ:自分のことを「瀬川幹央をやっている」って言うんですね?瀬川幹央っていう器に入っている本体「セガワ ミキオ」さんは、「この器に入っとこうか」みたいな感じですかね?

ミキオ:なんかまあ、この器に入ってやることがあったのかな、っていう風の。こういう話を表立って言うと、気持ち悪い方向に行くんですけど。

オンキ:全然。輪廻転生的には、次の何百年後かに、その爺ちゃんから引き継いだ魂が、ちょっとリッチになって、またどこかの器に入るんですよ。

ミキオ:ね!

オンキ:うん。で、続いて。

ミキオ:繋いで行ってる感じが、すごくリアルに感じるので、そこは。

オンキ:リアルなんだ。手応えあるんだ。

ミキオ:手応えを、本当に感じるので。

オンキ:それは、本当に幸せですね。

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アウトロ 〜木になる男

オンキ:そうやってバトンを渡されたんだから、幹央さん、またバトン渡せますよ。

ミキオ:そう、渡すことになるのか、人間で生まれてくるのが、これが最後なのか、ちょっとわからないですけど。

オンキ:次はイグアナになるかもしれませんからね。

ミキオ:かもしれないですからね。もう人間は最後かもしれないですからね。

オンキ:「もうそろそろいいかな」みたいな。幹央の名前になったから、今度はわりとデカい大木になるかもしれないですね。
わかりました。じゃあ、現状「瀬川幹央(仮)」さん、今日はありがとうございました。

ミキオ:ありがとうございます。

オンキ:素晴らしいお話、ありがとうございました。


インタビューを終えて

人を変えてしまうかもしれない小さな丸薬。とっても小粒なその薬を、幹央さんは日々こしらえては、そっと、訪れるお客さん達に差し出しているのかも知れません。見える人には見える、感じる人には感じられるお薬。飲んだ人が、その人自身に立ち帰れるお薬。今回は、釣り糸を垂れている陰徳の仙人様のお話でした。次回は、男運以外のすべてを両手いっぱいに抱えて、東北の農の恵を世界に届ける元気印女性のお話です!


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