第2話【モテる会話力】自分の好感度が上がる話題と下がる話題!!
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鬼、壁に刺さっている。
ぶあつい本を読んでいる。
うさぎのミミ子がそのそばで座って、
棒で、地面をぐりぐりしている。
アリの巣壊すんやめ。
……(鬼を見る)
(本を閉じる)
今日は《自分のイメージ》を
操作する方法を教えたるわ。
……自分のイメージを、操作する?
おまえ、クラスで一番気になるオスウサギ
思い浮かべて。
……(考える)へへへ。
茶太郎あたりかな。
茶太郎か。
ほな、茶太郎から見て、
おまえは、どんなウサギやと思われてると思う?
虫が好きで、
意外と礼儀正しい、
チャーミングなウサギちゃんかな。
ほんまか?
……(うつむく)
「暗くて、
何考えてるかようわからん
変なヤツ……」
……うっ、うううう……
当ててもうてごめんな。
でも泣かんでいいど。
それ、変えれるんや。
……え?(鬼を見る)
茶太郎がおまえを見て
どういうイメージを持つか。
それは、おまえが決めれるんや!
はぁ!
だから、こんなこともできるで。
茶太郎の好きなタイプを探り出して、
おまえがそのイメージ通りのメスやって思わせる、
なんてことがなぁぁ!
あー……!(頭上を指さす)
ん?(指さされた方向を見る)
サソリや!
(立ちあがり、棒を振りまわす。)
フン! フン! フン!
危ない! やめ!
やめぇ、て!
……フウー。
(枝を下ろす)
(ポケットからメモ帳とえんぴつを取り出し)
(鬼の前に座る)
おらん? もうおらん?
サソリ……おらん?
はよう!
お、おお……。
あんな。
自分のイメージを操作する、
その方法はな、
その場にいない人をほめるんや……!
い、いない人をほめる……?
これは、
自発的特徴変換っていう
心理現象を利用してるんや。
じ、じ、じは、じはつて、
じはつテキサスバーガーや!
自発的特徴変換っていうのは、
会話の中で出た人のイメージが、
それを話している人自身のイメージに
置き換わってまう現象やねん。
お、おきかわ……? (頭をかかえる)
例えばな!
おまえが茶太郎に、
「ピョン子って、
虫が好きで
意外と礼儀正しくて、
チャーミングやんなー」
って言うと、
ちゃう!
え?
ピョン子は!
ぜんぜん虫好きじゃないし!
ぜんぜん礼儀正しくないし!
ぜんぜんチャーミングじゃない!
ピョン子は!
ずるがしこくて
腹黒で
オスウサギに媚びまくりの
イタメスや!
イタメス?
イタイメスや!
お、おう……。
でも、
ピョン子の本当の姿はどうでもいいんや。
な?!
ピョン子が
ほんまは虫が好きじゃなくても、
意外と礼儀正しくなくても、
チャーミングじゃなくても、
おまえが
「ピョン子って
虫が好きで
意外と礼儀正しくて
チャーミングやんなー」
て茶太郎に言うたら、
茶太郎の中では
《おまえ》が
《虫が好きで意外と礼儀正しいチャーミングな子》
っていうイメージになるんや!
ななななな?!
すごいやろ?
ぬーーーーー!(床を指さす)
うん?
(ミミ子が見ている床を見て)
サソリや!
フン! フン!
(棒で床をバシバシ叩く)
やめえ! やめえ!
破裂して飛び散ってまう!
む? どこや……
もう、ほっとけやぁ……。
ウウウウン……(座る)
ん……。
あんな。
「ピョン子って礼儀正しいよなー」
っておまえがウワサをしたら、
なんで
「ピョン子が礼儀正しい」
じゃなくて
「おまえが礼儀正しい」
ってことになるんかって言うとな、
ある心理学者が考察したところ、
2つの原因に思い至りはったんや。
1つは、人の記憶が曖昧であること。
もう1つは、
褒めた人が、その褒めた部分に気を配ってる
っていうイメージを
相手に与えることになるから、なんや。
むむむ……?(棒を持つ)
人の記憶っていうのはほんまに曖昧でな、
会話の内容を
全部正確に覚えてるヤツなんか、
ほぼおらんねん。
だから、
《おまえと会話したっていう事実》
と
《褒めてたワード》
が勝手にリンクされて、
《おまえ自身にその褒めてた要素がある》
って思ってまうんや。
それに、
《何かを褒める》っていうことは、
その点を普段から注意してるから、
そこに気付いて褒めるわけやろ。
だから、
おまえが《礼儀正しい》ことを褒めたら、
「ミミ子さんは
普段から礼儀正しいことに
気をつけてはるんやな」
って相手は思って、
おまえに対しても
同じイメージを持つってことや。
アッ……!?
(棒で地面をぐりぐりする)
出てこい!
出てこいや!
出てこいや!
おまえ、人にどう思われたいんや?
え!?
どう見られたら嬉しいんや?
あ、あ、あの……あの……
虫が好きで
意外と礼儀正しい、
チャーミングなウサギか?
キャバ嬢。
え?
キャバ嬢に見られたい。
おまえ、キャバ嬢なりたいんか?
(うなずく)
なんか、意外やな……。
じゃあキャバ嬢のどういうとこが好きなんや?
かわいくて……
明るくて……
きゃぴきゃぴしてて……
楽しそうで……
たまにカゲがあって……
オスウサギを支配してて……
かっこよくて……
おけーおけーい。
なんか……ほんまに好きなんやな。
でも
「オスウサギを支配したがってる」って
見られたら、
ほとんどのオスウサギは引いてまうやろからな。
そうは思われへんほうがいいわ。
……じゃあ、
「いつも楽しそうやけど、たまにカゲがある」
っていう印象を与えたいことにしよか。
ハア……!(激しくうなずく)
よしそしたら、おまえ、
茶太郎にこう言え。
「いやー、クロ美ってさ、
いっつも楽しそうでいいよなー。
この前もな、
のぼり棒から落っこちたんやけどさ、
そんときも大爆笑しててさ。
見ててこっちが楽しなるねんなー。
でもたまにちょっとカゲあるんよぉ。
昼休みとか、皆教室で騒いでんのに、
ふと見たら、窓の外じっと見てたりして。
そういうとこ、
ミステリアスでカッコイイねんなー」
って感じや!
はあ! ……はあああああ!
(勢いよくメモする)
理想のイメージやったんやな!
よかったわ!
……(手が止まる)
どないした?
……!
(突然、鬼の首を絞めはじめる)
うぐ! ど、どない、ぢだ?!
クロ美の……!
クロ美のことを気に入ってまう……!
茶太郎が、クロ美を気に入ってまう……!
おまえ!
クロ美の手下やろ……!
クロ美に言われて
ここで刺さってるんやろ……!
ち、ちが……!
ちが……!
ウガアアアアアア!
(鬼らしい怖い威嚇)
ワアア!
(思わず手を放す)
フウ、フウ、フウ……
……ううううう!
(うずくまる)
鬼に……
鬼に、だまされてたぁ……
おい! 鬼はだましてないど!
……(鬼を見る)
もし茶太郎が
これでクロ美を好きになるんやったら、
クロ美と茶太郎は、
前からかなり仲いい状態やったんや。
実際に話もあんまりしてへんのに、
ウワサだけで好きにはならへんやろ。
……は!
どうした?
悪い、
悪いウワサを流したらどうや?
クロ美がカブトムシをちぎり捨てた
って教えたったらどうや?
アホぉぉ!
(ミミ子を殴る。)
ヒャア!
(しりもちをつく)
言うたやろ!
自発的特徴変換!
悪い噂を流したら、内容がいくら正しくても……
!!(鬼をパンチ)
な?!
!!(鬼をパンチ、パンチ。パンチ。)
ご、ごめん! ごめん!
殴ってごめん!
……(パンチをやめて座る)
フウ……10倍返しか……。
ん、だからな、
誰かの悪いウワサをしゃべってもうたら、
その悪い雰囲気としゃべってるお前が
結びつけられてまうんや。
カブトムシをちぎり捨てたんは
おまえや
というイメージが生まれてまうど。
ガーン!
だからおまえ!
絶対にオスウサギに悪いウワサなんか言ったらアカンからな。
ガーン!
だからおまえ!
絶対にオスウサギに
悪いウワサなんか
言ったらアカンからな!
わ……わかったぁぁ……
よし。
ほな次は、
茶太郎の理想のメスのタイプ探ろか。
は……!
それを聞き出して、
おまえがまるで
茶太郎の理想通りやって思わすんや!
ウワアアア……!
でもな
「好きなタイプはどんなメスや?」
って聞いてもな、
オスウサギは、本音を話さんねん。
建前を気にしてな、
「一緒におって楽しい人かな」とか
「笑顔がステキな人かな」とか
当たりさわりのないことしか言わんねん。
ヌウ……!(メモ帳を地面にたたきつける)
ムカつくな?!
でも本当に好きなタイプを聞き出せる、
心理テストがあるんや!
ワア……!
(メモ帳を拾いあげ、メモする準備をする)
すぐ使える、めっちゃ簡単やで!
ヒョオォォォ!
おまえはほんま、簡単が好きやなあ。
相手に真正面から
「好きなタイプはどんなメスや?」
と聞くんや!
なんっでや!
(メモ帳を鬼にたたきつける)
「聞いても言わん」
言うたん鬼やん……!
その次に!
「好きなタイプ、3つ教えて」て言え!
む?
ほんなら相手は、
さっき言ったように建前用の答え、
3つ答えてくれるやろ。
「えー、明るくて、
笑顔がかわいくて、
あと、面白い子がいいなあ」
とかな。
ほんならすかさず、おまえは聞くんや!
「ほんなら、
その3つの条件を満たしたメスが
急に2人現れて告白してきて、
今すぐどっちかに決めんとあかんかったら、
なにで決める?」
ほんなら、オスは慌てて
「え!
そしたらまあ……鼻が湿ってるほうかな!」
とか言うわ。
そしたらその最後のやつが
より本音に近い答えやわ!
鼻っ……! (メモする)
建前でも、3つもタイプ答えんの大変やねん。
だからさらにもう一個、
って言われたら困ってまうねん。
しかも、
せかされて、とっさに出る行動とか言動に
本性が現れるからな。
たいてい
最初に好きなタイプ聞いた時点で、
本音の答えも
頭の中にはふわっと浮かんでるから、
だから、
最後にせかされて答えさせられるときに
本音をつい言うてまう
っていう、しかけや!
ふうん…………
ま、これは単なる心理テストやから。
本当の好みなんか
自分でハッキリわかってない時も多いからな。
会話の一個ぐらいに思って、
まあやってみたらいいわ。
あっ!(天井を見る)
サソリやあ!
ハン!
(天井に棒を突き刺す)
しとめたど!
……(食べる音)
今のおまえの印象は、
「キャバ嬢」よりは断然、
「無人島で最後まで生きのびるヤツ」やわ……
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今日のまとめ
★「自分の印象を操作する方法」のやりかたは
「その場にいない他人のことをほめる」や!
★ほめる内容は、
「自分が相手に思われたい理想と同じ内容」
を話すんや!
実際ほめる奴がそうじゃなくてもいいんやで。
★これは【自発的特徴変換】っていう、
「会話の中で出た人の特徴とか印象が
そのまま、
話してる人自身の印象に置き換わる」
っていう心理作用が働くから
効果があるんやで。
※だから悪口は言ったらあかんで!
★相手の好みを聞き出せる心理テストがあるで!
【やりかた】
①好みのタイプを3つ最初に挙げてもらう
②3つ挙げてもらったらすかさず
「その全てを兼ね備えた子が
2人目の前に現れて
今すぐどっちか選ばなあかんかったら
何で選ぶ?」
って言う
③そんで挙がった「4つめの答え」が
一番の本音やったりするで!
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