第1話【これで気まずい沈黙を回避】会話が永遠に続くテクニック!
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鬼、壁に刺さっている。
ぶあつい本を読んでいる。
うさぎのミミ子が、そのそばで座っている。
緊張感を持って、地面に飛びつく。
もう一回。
なあ、おまえって、会話、ガンガン続けられるタイプ?
え……?
ミミ子、地面に飛びつく。
バッタ追いかけんのやめ。
(鬼を見る)……アッ!(飛びつく)
おまえ、モテたないか?
えっ?
クラスのオスウサギどもに囲まれて
ワイワイおしゃべりしたないか?
ハアア!(鬼にずいっと近づく)
な、なんや……?
したい。
おおお!
学校中のオスウサギを
我(われ)の足元にひざまずかせたい。
お、おお……
メスウサギどもを
嫉妬で泣きわめかせて、
学校来られへんくなるぐらい、
追いつめたい。
お、おお……
めちゃめちゃ怖い目標を持ってる
ウサギやったんや……。
わかった。
ほんなら、鬼が、
コミュニケーションの技を教えたるわ!
ヌワッ!(立ち上がる!)
ヒッ!?(身構える)
ミミ子、鬼の頭に手を乗せる。
……な、なんや……?
ミミ子、てのひらを開いて鬼に見せる。
バッタ。
バッタ、飛んでいく。
ミミ子と鬼、目で追う。
……
……
(メモ帳とえんぴつを取り出し、鬼の前に座る)
ん。
おまえ、会話、続けられてる?
会話を続ける?
話しかけられて、
一言、二言返したら、
なーんか
何しゃべっていいかわからんくなって、
シーンってなって、
「へへへ……」
とか愛想笑いしてみたものの、
またシーン、
ってなったりしてない?
アアッ!
やっぱな!
おまえなあ!
会話が続かんで、すぐシーンってなる、
そんなおもんないヤツとは、
誰もしゃべりたないで!
そんな一人ぼっちの
暗~いメスウサギの周りに集まるんは、
ナメクジぐらいや!
ぬあ!
ミミ子、鬼の目にえんぴつを刺す。
ぎゃー! ……な、なんや?!
ナメクジの話、聞きたない。
ご、ごめん……
ナメクジの話は、二度とせん……。
じゃあ続けて。
だ、だからそんなことにならんように、
鬼が今から、
会話を続けさせるテクニックを教えたる。
ほぉう……
これでおまえは、
会話が続いて続いて止まらんで!
オスウサギは、
おまえとしゃべってたら
会話がとぎれへんから
めちゃめちゃ楽しなる!
そうなったら、
オスウサギはなんかあったら
すぐにおまえんとこに言いに来よる!
クラス中のオスウサギがそうなったら……!
メスウサギは嫉妬で狂いまくりよるわ!
ぬあ!
ミミ子、鬼の目にえんぴつを刺す。
ぎゃー! ……な、なんや?!
ええやないか!
嬉しかったんか!
感情表現がややこしいな……。
ぐふ、ぐふふ……続けて!
あんな、
会話を続けるんに使える技に
「バックトラッキング」
っていうテクニックがあるんや。
バ、バ、バック、バック、バックトラ、
バックトラやのようかんや!
会話を続けるのに必要な技って
なんやと思う?
え?
ハ!
……習字や!
なるほどな……。
字きれいやったら、
「わーミミ子さん、字きれいやな!」
って話しかけられやすいもんな……。
普通のヤツは、
《話をおもしろくしゃべる能力》
やと思ってるんやけどな……。
あほや。
せや年!
そんなん全然ちゃうねん!
ちなみに、習字もちゃう!
ええ……?
話をおもしろくしゃべる能力なんか、
身につけんの難しすぎるやん。
だからそこで挫折して、
それで会話を続けることも諦めてまうねん。
で、せめてもの防御法で、
ヘラヘラしながら
「ボク、コミュ障なんで
うまくしゃべれないんでぇ……」
とか言うてまうんよ。
なんやそいつ?
ダサい言い訳や。
ほんまに大切なんは、
話を聞く力なんや。
話を聞くちからやと?
例えば
「ボク、ブロッコリー好きやねんなー」
って言われたら、
「へー! ブロッコリー好きなんや!」
ってちゃんと話を聞いてあげることが
一番重要なんや。
ブロッコリー……(メモする)
そこじゃなくて。
相手の言ったことを《くり返す》
ってのが大事やねん。
え?
相手の言った情報《トラック》を、
戻す。
これが、バックトラッキングや。
ふう~ん。
人は話をしてる時、
相手がほんまに自分の話を聞いてくれてるか
不安に思ってるねん。
だから
「ボク、ブロッコリー好きやねん~」
って言ったとき
「へー。なんで?」
って言われるより、
「へー。ブロッコリー好きなんや!
なんで?」
ってくり返してもらえたら、
「ワー! ちゃんと話、聞いてくれてる!」
って嬉しくなって、
もっと話したくなるねん!
ブロッコリーは葉っぱのとこがモサモサしておいしいねんなぁ……
そこじゃなくて。
くり返すとこ注目して!
え?
でも
これだけやったら
そこで会話が終わってまう。
相手の言ったことをくり返して、
それから、
《質問》してあげるねん。
質問やと?
例えばやってみよか。
おまえ、なんか喋ってみ。
えっ…………
なんでもいいわ。
なんか、しゃべってみ。
……(考えている)
ううっ、うううっ……
アッ、ごめん!
自由すぎたら逆に不自由や
ということを忘れてたわ……!
ほなおまえ、
今日の朝あったこと、1個言うて。
えー……。
ほら。
朝、起きた。
何見えた?
朝、起きたら、サボテンが、枯れてた。
すごい話題あるやんか!
そう言われたらまず、くり返す。
「えー! サボテン枯れてたんや!」
で、質問する。
「え、そのサボテン誰のなん?」
……
……答えて!
あ。
えー……
お父さんの。
へー!
お父さんのサボテンなんや。
いつから育ててはったん?
えー……
2年ぐらい前から。
あー、
2年ぐらい前から育ててはったんや。
なんで枯れたんやろな。
なんでやと思う?
んー……
お父さんが「呪いの言葉」を
よくサボに言ってたから。
え?
……へー……
「呪いの言葉」言ってたんやぁ……
……どんな?
この世のすべての生き物が
互いに争い、
殺し合い、
崩壊するように
やっちゃってください……
やめて!
なんでそんなことサボテンに言うの!
そら枯れるわ!
フウ……。
……でもま、会話は、無限に続くやろ?
……(うなずく)
《質問する》って、
すごい、いいねん。
相手が会話を続けやすいし、
何より、こっちの好感度が上がるねん!
こここここ、好感度が上がるやと?!
せや。
アメリカのハーバード大学でな、
男女の会話を研究した結果があるんや。
ハーバード大学やと……?
集まってもらった男女に、
男女に15分間会話してもらってな、
その15分の間で、
質問の回数が9回以上の人は好感度が高くて、
質問の回数が4回以下の人は好感度が低かったんや!
ガーン!
好感度は、質問の回数で変わるんや!
好感度を下げたかったら、
質問せんかったらいいし、
好感度を上げたいんやったら、
質問の回数を増やしたらいいねん!
あわ、あわわ……(震えながらメモする)
好感度って実は、
自分で操作できるもんなんやでぇぇ!
……ア! 鬼!
言わんでいい!
わかるど……!
おまえ今、
「質問って、何を質問したらいいん?」
って思ってるんやろ?!
バッタの親子おんで!
バッタええねん!
……ア! 別々に!
親子が別々になってもた!
質問の仕方にな!
簡単なんがあるんよ!
かんたん……?
お、おお! せや!
簡単っていいよなぁ!
簡単が一番いい。
やんな?!
質問はな、
5W1H(5ダブリュー1エイチ)を
利用したらいいんや!
めっちゃ簡単やろ!
ヒョオォォォ!!!!
ご、ご、ご、ご、ごだびゅる……?
5W1Hは、英語の授業で出てきたはずや。
「いつ、WHEN」
「どこで、WHERE」
「誰と、WHO」
「何を、WHAT」
「なぜ、WHY」
「どうやって、HOW」
ってやつや。
質問は、それ使えばいいだけなんや!
な?!
おまえにもできそうやろ?
……(うなずく)
ほんまか?
……
ちょっと、おまえ、練習してみよか。
え?
鬼がしゃべるから、
バックトラッキングで会話してみ。
……(姿勢を整える)
フゥ。
……。
鬼な、昔、
心理学の勉強しとったときにな、
好きな鬼女がおったんやけどな。
その鬼女には夫がおったんや。
……へー。
……
……
おいい!
くり返して! まず!
あ……あ……
いくで。
鬼な、昔、
心理学の勉強しとったときにな、
好きな鬼女がおったんやけどな、
その鬼女には夫がおったんや……
へ……へー!
…………
心理学の勉強しとったんやぁ……
そこくり返す?
まあええ。
自分が興味あるところを
広げたほうがええからな。
……
なんか、質問して!
あ、あ、えーと……
勉強、どこでやってたん?
そこ気になった?!
えー、大学でやっとたんや……
へー……
大学でやっとた、ん、やあ……
ええど。
……ええと……
どこ……誰と……
あ、
誰と、勉強してたん?
そこ気になる?!
まあええか。
おもに鬼はずっと一人でおったよ。
へー……
ひとりやったんや……。
ほな、どうやって鬼女と知りあったんや?
お!
いい質問やんか!
鬼女はな、学食でご飯を作る人やったんや……
へー……
学食の人やったんや……
学食に、トン汁あった?
そっち行く?!
あったと思うわ!
へー……
トン汁あったんやあ……
なんの具、入ってた?
そっち行ってまうんやなぁ!
じゃがいもと、にんじんと、
こんにゃくとかちゃうか?
ねぎとか!
多分!
…………うううう……
ど、どないした?
我、こんなに会話が続いたこと、なかった……
そうなんか……。
じゃあもっと練習してな、
スムーズに質問、出てくるようにしよな!
これができて使えていったら、
のちのちは5W1Hに縛られんと、
もっともっと複雑な質問も
できるようにしていこ!
最初のうちは、無言になるより、
5W1Hを利用したる、
ぐらいの気持ちでやっていこな!
大丈夫や!
もっともっと楽しく話せるようになるで!
バッタや!
ミミ子、バッタを追いかけながら去る。
……
(空を見上げて)
……あの鬼女……
今ごろ、どうしてるやろなあ……
〈続く・・・〉
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今日のまとめ
★無限に会話を続けるテクニックは、
「バックトラッキング」や!!!!!!!
★「バックトラッキング」っていうのは、
相手の言ったことをくり返すってことや。
★人は、相手が、
自分の話を聞いてくれているかどうか、
つねに不安に思ってんねん!
だからこっちが
「ちゃんと聞いてる」
っていうサインを送らなあかん!
そのいい方法が
相手の言ったことを繰り返す
バックトラッキングや!
★バックトラッキングのあと、
質問してあげたら、会話が続くで!
★質問するのはモテの基本や!
★質問する人は、質問しない人より
「圧倒的に好感度が高い」
という実験結果もあるで!
★質問は、5W1Hを利用した質問でオッケーや!
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