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酒のし
いやしいにんげんは、よるになると酒をのむ
まじめなにんげんは、月明かりにてらされてビールをのむ
このよにいやけがさしたにんげんは、ほしぞらをのみこんでくびを吊るなわを結びワインをのむ
ふだんはぜんにんぶるにんげんは、よがふけるとみちばたに大量のげろとがらすを撒き散らして梅酒をのむ
みんながみんな、酒をのんでいる、お酒は全てを逸脱させる、わたしはみんながさけをのんでいればいいのだ、とおもう、よるもひるもなくとわに
おせろがひっくりかえるときみたいにみんながとつぜん沸騰するのを、わたしはいつもみていられない、肉と肉のあいだ、そんなものがみちみちと瑞々しくつまっているなんて考えたくないのだ、まじめなかおをしてつっ立っている鶏、白いビロードのしたにはたぎるちしおがねむっている、それをほんものだとするとせかいは獣臭くなるだろう、それでいい
みんなにわらっていてほしい、そのなかにわたしは含まれていない。酒は脳をまひさせる、訂正、あるこーるが脳を鈍らせて、まっくろでしあわせなものにしてしまうのだ、と。
色彩なんて、しらなくてよかったのに
すぐれたにんげんは、みずをのみながら、よる船出する前にウイスキーをのむ
ひとをころしたいにんげんは、しこうのなかで何度も肉を刺しながら、チェリーキルシュをのむ
みんなからしたわれているあのこも、みんなからきらわれているわたしも、さいのうをもつたからもののあいつも、ごみみたいなにおいのするわたしも、酒をのんでいるあいだは世界が乾いている、でもそれは、選び取らなくてすむってことなんだよ。