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トーストと青い春

1ヶ月半前から、バタートーストというチームを組んでいる。
このチーム名、居酒屋で何時間も卓を囲んだが決まらず、結局各々持ち帰り、ない知恵絞って意見し合った後の集まりで、私がちょっと遅刻している間にあっさりと決定していた。

「あの時間を返せよ」と思う暇もないほど淡白に、驚くほどの主観で決まったので、拍子抜けして出た言葉は「あ、そう」だった。別に怒っているわけでも腹立たしいわけでもない。ただただ、「あ、そう」という気持ちだった。

私に、この「あ、そう」を連発させてくれるのが、チームメンバーの藤田くんである。彼はとてもピュアで、そしてとても面倒くさい。どのように面倒なのか説明するのも面倒にさせる面倒くささがある。素晴らしき面倒くささ。
元々そんな彼から誘いを受けて始まったバタートーストは、私を含めメンバーは3名。

もう一人が紅一点、#tomomin。
彼女はチームの兄貴であり姉御である。言いにくいことをずばり言ってくれる特攻隊長。そして、そのプライベートは謎に包まれたONOFFの達人でもある。アイドル的な、聞いちゃダメ的な、そんな#tomomin。名前に#ついてる時点でもうすでに謎ではある。

会社以外で何かに所属するのは、実は3度目だったりする。元々劇団というものに憧れがあったが、結局2度失敗している。
一番最初は自分たちで劇団のようなものを作ったが、ワケあって失敗。そして2度目は健在している劇団に入ったが、ワケあってまた失敗。
私はチーム事においては、ことごとくの失敗野郎である。

よく言えば3度目の正直である今回。失敗原因は私なりに学んだつもりである。だからこそ、今回こそ、大切にしたいという気持ちは3人の中では一入だったりするのに、考えたチーム名が採用されないというこの精神的裏切られ方が、まぁ逆に心地良い。

世の中のどのくらいの人が気にしているかわからないが、トーストするという行為は、一度焼いたパンをもう一度焼き直すことだ。
きっと中には「もう一回焼くなんて、焼きすぎじゃないだろうか」と思ってそのまま食べる人もいるだろう。当たり前だが、焼いてもいいし焼かなくてもいい。
けど、私たちは焼かなくてもいいパンを、やっぱり焼くことにした。そんでもって、バターとかのっけてついでに味と風味もつけてみることにした。そっちの方がもっと美味しくなるから。多分。
そういう、普段あまり意識しないでやっていることを、あえて「私たちはやりますよ」と宣言したのが、”バタートースト”なんだって、無理やり解釈して自分を落ち着けた。

お互い迎合しないので、話し合いになると毎回気まずくなる。誰かが拗ねるが、理性があるので必ず誰かが取り持つ。なんだかんだで、まだ遠慮してるなぁと感じる。あと1年くらいしたら、気まずくなっても誰も取り持たくなると思っている。
けれど翌週までは気まずさを引きずるようなメンバーではない。自分で勝手に消化してくる。それが分かっているから、もうすでに少し寂しい。だって、距離が縮まる前がきっと一番面白い。この気まずい雰囲気を、私は今神妙な顔つきで実は楽しんでいる。

そんな、多摩川沿いでの日曜日。
こんな、大人の青い春。

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