記憶のなかの台湾旅〜台北散策〜
※これは2019年に一か月かけてゆっくり台湾を一周したひとり旅を振り返ったエッセイです。
ひそかな名所?珍袖博物館
台湾到着の翌日の朝、宿の近くのカフェでサンドイッチを食べながら、これからどこへ行こうかとグーグルマップを見ていると、宿から歩いて十分ぐらいのところに何やら博物館があるのを偶然発見した。
その名も珍袖博物館、変な名前だ。ガイドブックにも一切載っていない。調べてみるとミニチュアやドールハウスを集めた世界でも珍しい博物館らしい。両親の次にシルバニアファミリーに育てられたと言っても過言でない私は俄然興味が湧いてきた。アリエッティーの家とか大好きだし東武ワールドスクエアに住みたいぐらいだ。
グーグルマップの道順に従って辿り着いたところは、銀行のように見える建物だった。
ほんとにここか…?と疑っているとよく見ると「珍袖博物館」と書かれた小さな看板が出ている。中に入ってみるとエントランスの奥に地下に伸びる薄暗い階段があり、その横に看板が出ていた。階段の壁には「ようこそアリスの世界へ…」と角ゴシック体の日本語で書かれてある。怪しすぎる、日本だったら絶対近寄りたくない物件だ。でもここは日本ではないしな…と腹をくくって階段を下っていくと小さなエントランスが現れた。スタッフと思われるお姉さんがカウンターで暇そうにしている。
「大人二百元」と言われるがままチケットを買い、重いドアを開けて中へと入った。
平日の午前中だからだろうか、薄暗い館内には人の姿はまばらでカップルが一組いるだけだった。そんなガランとした中に大小のガラスケースが並んでいる。正直ここまで半信半疑だった私だったが(だって怪しいんだもん)ガラスケースの中を見るなりすぐに評価を改めた。ここに展示してあるのは子供の玩具などではない、精巧な美しい芸術品だった。
展示されているのは主にヨーロッパのミニチュア作家が作成した作品だ。私の背より高いドールハウスもあれば両手で持てるようなサイズのものもある。その細かさと「ある意味変態的」なまでのクオリティーの高さに私は幾度となくため息を漏らした。
元々ミニチュアとはモデルとなる物体を何分の一かのサイズに縮小し、模して造られるものだと思っていたが、なんというか…プロの作った作品のそれらはどうしようもなく本物なのだ。本当にそこに部屋、家があり、その場所に生きる人の生活が見えてくる。私の親指の爪ぐらい小さな椅子も、正真正銘の本物の椅子なのだ。
私は本当にすごいものを見ると「変態だ~!」と思ってしまう癖があるのだが(決して馬鹿にしている訳ではなく称賛の意味で)この時もそう確信した。きっと作者たちはドエムの変態に違いない。というか世の中のすごいものは全部変態によって作られているんだろうな。
なんて考えながら写真撮影可なのをいいことに大興奮で写真を撮りまくるのだった。嗚呼、年間パス欲しい。
その後は台北のトレードマークである台北101の展望台に昇ったり、宿の近くの夜市で初屋台飯を食べたりして楽しんだのだが、あまりに珍袖博物館が素晴らしすぎたのか写真があまり残っていなかった。すみません。