「目が不自由な人に出会った時、“あなた”が困ることは何ですか?」に質問を変えてみた話。
見ることが不自由な方のサポートを仕事にしている関係で、視覚障害者について学ぶ、といった講習会の講師をお願いされるときがありまして。
以前は「目の不自由な方は、何に困ると思いますか?」という問いで始め、典型的な困りごとを紹介し、街で見かけたら声をかけてくださいね!といったところを落とし所にしてました。
しかし講師をする度にモヤモヤしはじめます。どうにも反応がイマイチなんですよね。私の方も的を射ている気がしません。
理由を考えた結果は「受講者の本当の疑問に答えてない」でした。
受講者にしてみれば、言われることはごもっともで分かるけど「でも・・」や「そうはいっても・・」が残ってるんですよね。よく見たら講習後の顔にそう書いてありました(笑)。この「でも」や「そうは言っても」と言いたくなる事情や気持ちこそ、目の前にいる受講者の問題であり、コトの本質です。
じゃあどうしたらいいか・・と悩みました。そして幸いある方法が天から降りてきたので実行してみます。
天から降りてきたのは、問いを変えることでした。「目の不自由な方は、何に困ると思いますか?」ではなく、主語を入れ替え「目が不自由な方に出会った時、あなたが困ることは何ですか?」という問い、つまり講習会は、目の不自由な人の理解をしましょう等ではなく、今日はみなさんの疑問や不安にお答えしますよ、というスタンスにしたのです。
結果は・・効果テキメン。受講者にしてみれば、出会ったこともなかったり、街で見かけた程度だったり、テレビの中で見る「空想の目が不自由な人」ではなく、ご自身の疑問を考えればいいので、出てくる困りこごとはとても自然で具体的です。何度かやってみると、困りごとの多くは次のようなものでした。
いつ声をかけていいか分からない
そもそも声をかけてもいいのか分からない(声をかけるのは失礼じゃないか?)
色の話をするのは失礼?
道案内を頼まれてもどうしていいか分からないので困る
盲導犬を持ってる人には声をかけなくていい?
この疑問に答える形で、講習会を進めてみました。
※困りごとを生む理由の一つである「目の不自由さの多様性」に関わる話題も足しています。
その結果「視覚障害者を理解しましょう」というお題目的なものではなく、流れも自然になり、手応えを感じられるようになりました。
最終的には「以前よりも声をかける勇気が出た」と言っていただければ、私としてはうれしいです。
障害者理解はとかく「理解して欲しい」「〇〇してほしい」という、啓発的というか一方通行な話になりがちですが、それを受け取る側の「でも・・」や「そうはいっても・・」と言いたい事情を解決できなければ、動いていただけないですよね。
目の不自由な方自身が直接語られるならまだしも、私は「見える人」です。専門家とはいえ、目の不自由な方の「代弁」は、出来るならしたくありません。代弁ではなくご自身から直接語っていただけるよう、それこそ背中を押すのが私の役割だと思ってます(でもとかく代弁を求められるのです。この件はまたいつか別の投稿で・・)。
なので講習会では、「以前は同じく勇気が出ず声がかけられなかった見える人」であり、今は目の不自由な方に接することが多い専門家として、受講者(=見える人)の背中を押す形で「見える人」と「見えにくい・見えない人」の距離を少しでも縮められたら、と思っています。
「目の不自由な人に出会った時、あなたが困ることは何ですか?」は、それを形にできる、ちょっとしたマジックワードでした。
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