生まれて以来1度も「見た」ことがない視覚障害者にプロ野球ファンが少なくないのはなぜ・・?
私の知る先天(生まれつき)の全盲視覚障害者の中には、プロ野球ファンが少なくありません。生まれて以来1度も野球を「見た」ことがないのだから、物理的に野球道具に触れたり球場を歩いてみたりといった経験から楽しめているのかと思いきや、そんな経験ゼロで熱狂的(笑)に推しのチームを応援し熱く語られる方も少なくないのです。青眼者(見える人)な私からすると、とても興味深い事実です。
以来、目で見る情報はもちろん、触れるなど直接の感覚を伴わずともテレビやラジオの音声での実況や、ニュースや雑誌などからの情報だけで熱狂できる理由やその意味をずっと考えてます。
そんな中、科学雑誌「ニュートン」2023年10月号のChatGPTに関する特集に「実物のネコに触れたことも見たこともないのにChatGPTはネコという概念を獲得してる(ネコの特徴は?と聞くと妥当な答えが返ってくる)」という例が出ていました。これを読んで真っ先に思ったのが、先天全盲視覚障害者とプロ野球の関係でした。共通点がある気がするのです。
ニュートンの特集曰くそれは「記号接地問題」と言うらしいです。初めて見る言葉です。面白そうなので検索したら、今井むつみ・秋田喜美 著「言語の本質」という本がヒット。今年5月初版。書店に行ってみると積んでありました。話題の本だったんですね。目次を見るとAIやヘレンケラーの文字があり「あたり」感。読み始めてみると、お堅めのタイトルに反して結構読みやすそうです。はい、まだ読み始めたところです。楽しみです。
視覚障害者の知り合いが出来てから20年以上、視覚障害者支援が仕事になって20年弱ですが、以前から先天の全盲視覚障害者には共通して、青眼者(見える人)である私が全く持ってない感覚や独特の雰囲気を感じます。でもそれが何なのか未だうまく説明できないんですよね。この本がそれを言葉にしてくれないかなとちょっと期待しているところです。そしてそれが自分のより良い仕事につながればうれしいです。
見える人も、生まれてこのかた見たことがない人も熱狂するプロ野球。その魅力の本質は何なのでしょうね・・
余談ですが・・5月発行なこの「言語の本質」は、今日現在まだ点字や声の本にしている最中(=サピエ図書館で「着手中」の状態)です。つまり当の先天全盲視覚障害者が読むにはかなりの手間が必要な状態です。標準的には半年ほどかかるので、完成するのは11月頃でしょうか・・
「対等な関係」になるには同じ情報を持ってる必要があると思ってます。見える人が「助ける人」、視覚障害者が「助けられる」人になってしまうのは、視覚障害者が「障害者」だからではなく「アクセスできる情報に差がある」ことが理由のひとつ。私は視覚障害者を助けたいというより、対等な関係になりたいです。「言語の本質」という本に関しては、あと数ヶ月対等な関係になれないのが残念です。
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