12月8日 太平洋戦争開戦記念日 【SS】勘違い・因果応報
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【今日は何の日】- 太平洋戦争開戦記念日
1941年(昭和16年)12月8日午前3時19分(現地時間7日午前7時49分)、日本軍がハワイ・オアフ島・真珠湾のアメリカ軍基地を奇襲攻撃し、3年6ヵ月に及ぶ大東亜戦争・対米英戦(太平洋戦争)が勃発した。
この日は「太平洋戦争開戦記念日」のほか、「太平洋戦争開戦日」や「対米英開戦記念日」などとされる。
1941年12月2日、大本営より機動部隊に対して「12月8日午前零時を期して戦闘行動を開始せよ」という意味の暗号電報「ニイタカヤマノボレ一二〇八(ヒトフタマルハチ)」が船橋海軍無線電信所から送信された。ニイタカヤマ(新高山)は当時日本領であった台湾の山の名(現:玉山)で当時の日本の最高峰で標高3952m。
奇襲攻撃の結果、戦艦アリゾナなど戦艦11隻を撃沈、400機近くの航空機を破壊して、攻撃の成功を告げる「トラ・トラ・トラ」(我奇襲ニ成功セリ)という暗号文が打電された。
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【SS】勘違い・因果応報
北の国は、自分たちの国の強さを世界に向けて誇示し、立場の逆転を狙っていたのだ。不意打ちの威嚇は見事な奇襲攻撃としての成功だった。北の国の国王は非常に満足し、そのまま世界征服の野望を実現しようと考えてしまった。人工衛星も地球の周回軌道に載せることができ、これで地球は自分たちの国が支配できるものだと確信していた。
「皆の者、今回の作戦は実に見事だった。世の中が、クリスマスなどというお祭りムードに浸っている時を狙うとは我ながら素晴らしい作戦だった。大成功だったな。きっと世界中の首脳は震え上がったことだろう。そして、我が国から発射されたミサイルが自分たちの国の首都の夜空を彩る花火だったとは度肝を冷やしたことだろうな。はっはっは、愉快愉快。これで、地球上で一番強い国は我が北の国だということを知らしめることができただろう」
北の国の王様は一人で喜びに浸っていた。打ち上げた攻撃用の衛星があれば世界中の国は何もできないと自信満々だった。しかし、北の国の王様に逆らうことができない側近や国民は、一様に心配していた。
「遂にやってしまったな。このままでは絶対にすまないぞ。どうするみんな」
「今の王様のやり方では北の国は消滅してしまうかもしれないな。なにしろ全世界に向かって宣戦布告をしたようなものだから」
「そうだよな。開戦記念日になってしまったよな。経済封鎖が始まるのも時間の問題だろう。そうなると資源を持たない我が国は完全に行き詰まってしまう。おそらく一ヶ月も持たないだろう。それに打ち上げた衛星も果たして機能するかどうか。急いで作った上に利用する無線の周波数は探せばすぐに分かってしまうものだ。暗号化もできていないみたいだし」
「じゃあ、やはり我々は、密かにバックアッププランを実行するしかないな。王様には悪いけど」
こうして王様の側近は密かに反旗を翻し、まだ国境の道が通過できるうちに隣国へと亡命してしまった。そのことに王様が気がついたのは二日後の朝だった。世界から次々とメッセージが届き始めたのだ。メッセージは示し合わせたかのように、全ての国が国交を断絶するという内容だった。陸海空の交通は遮断され、インターネットも遮断された。北の国が持っている海外の銀行口座は凍結され、換金もできなくなり、物資を運び入れることもできなくなった。普通なら、人道上の理由から生活必需品に関しては貿易を継続するのだが、今回は全てを遮断されたのだ。その代わり、国境を通過する道路で、北の国の一般市民は出国に限り許可するという策も並行して実施していた。王様の孤立は日に日に強くなっていった。
気の短い王様は世界の対応に激怒し、すぐさま衛星からの攻撃を開始せよと命令を出した。だが、軍の上層部や政府関係者が軒並み亡命したあとだったため、王様を守るための警護部隊が対応せざるを得ない。しかし、そこにも世界の各国は手を打ち始めていた。
「王様を警護する部隊のみなさんへ 貴国の王様は世界を相手に無謀な計画を実行してしまいました。全世界から見れば貴国の王様は裸の王様同然になっています。このまま警護を続けるか、それとも王様を宮殿内に軟禁状態にするか決断をお願いします。世界中の国は武力を持って制圧することを望んでいません。貴国の内部の問題は内部で解決していただくことが肝要だと考えているのです。打ち上げられた衛星も機能しないでしょう。みなさんに差し上げられる時間は、二十四時間のみです。賢明な対応をお願いします」
一瞬だけ封鎖されていたインターネット回線が接続され、警護部隊のスマホにメッセージが表示されたのだ。警護部隊は一瞬パニックに陥りそうになったが、王様を見限ることに反対する隊員は一人もいなかった。それだけ、これまでの王様の独善は酷かったようだ。
北の国からのクリスマスのとんでもない贈り物を受け取った各国は、その時だけは緊張感が走った。まさかこんな暴挙に出てくるとは誰も予想していなかったのだ。その後、各国が結束するのに時間はかからなかった。空の警備体制の強化、経済封鎖の準備、国境警備の強化がわずか数日のうちに実施されていったのだ。北の国を除き、世界が一つになった瞬間だった。しかし、北の国の国民には罪はない。先導した王様一人に責任を負ってもらおうということもすぐさま合意できた。そのための難民受け入れの準備も並行して実施された。これまで、世界中がこれほど一致団結して素早く行動したことはなかった。世界中の最後の懸念だった攻撃型の衛星に関しては、衛星が受け取る信号の周波数に対し、ノイズを送り続けることで電波を遮断することはそれほど困難ではなかった。打ち上げを察知し、軌道に乗った瞬間には、すでに電波障害を起こすノイズを衛星に向かって送り始めていたのだ。その効果を見極め、世界は、一斉に経済封鎖を実行に移したのだった。政府高官や軍司令部のメンバーが亡命することも予想の範囲内であり、国境を越えた瞬間に逮捕されていた。王様を止めることができなかった責任だけは取ってもらう必要があったからだ。全ての行為が、スピーディであり、ミサイル発射を許してしまったという教訓が隅々まで生かされ、あっという間に王様を孤立させることに成功したのだった。
自分の警備隊によって軟禁された王様は反省することはなかった。無能な部下を持ったせいで世界征服が失敗したのだと軟禁されても主張を続けたようだ。それから三十年。王様は一歩も王宮の一室から外に出ることもなく静かに息を引き取り、無縁仏として埋葬された。寂しい最後だった。王様が軟禁された後の北の国は世界中の国の共同の場所として活用されることが決まり、農業、水産業を中心に発展することになった。そのうちに、国外に逃れた人々が次第に戻ってきて法治国家の様相を成し始めてきたを確認した世界は、北の国で選挙を実施してリーダーを決めるように促し、新しい平和を愛する北の国が誕生することになっていったのである。
了
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