【SS】穴の中の君に贈る #毎週ショートショートnote
12/04-12/10 お題 穴の中の君に贈る 410文字
ある集落に海女がいた。若い娘からお婆ちゃんまで総勢五十人位だ。毎日海に潜りサザエやアワビを採って市場に持って行く。彼女たちの一日はとても賑やかでおしゃべりが止まることがない。常に集団行動なので若い海女にとっては異性と出会う機会も少ない。
海女たちが集まる小屋の代わりに天然の洞窟が使われ続けていた。西向きの洞窟と東向きの洞窟の二種類があり、季節によって使い分けられていた。今は冬なので西陽が入る洞窟が利用されている。冬潜るのは午後から。戻ってきた時太陽の光が暖かいからだ。近くには海女テラスと呼ばれるカフェもある。
そんな海女の娘に恋をした若者がいた。しかし求婚するタイミングがない。若者は考えた。海女たちは誕生日に洞窟の中でお祝いをする習慣がある。若者は娘の誕生日の朝、海女たちが来る前に洞窟に入り文を入れた指輪を置いてきた。
「海女の祝いと贈り物。明日朝、海女テラスで君を待っています」
娘はクスッと笑った。天岩戸と天照ね。
410文字
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