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【SS】驚いた一瞬の出来事

 それは、太陽が西に沈もうとしている時に起きた。沈みかけた太陽はその輝きを増し、正面から運転している僕の車のフロントガラスを直撃していた。眩しくてたまらない。だが、サンバイザーを下ろすのは何となく視界が狭くなるから使いたくない。もう少し走ればカーブが待っているから街路樹の影の中に入ることができるだろうと思っていた。

 今日は平日のせいかどうかは分からないが車が少ない。後ろから来ている車もいない。眩しいのでスピードも落としているから煽られなくていいとさえ感じていた。太陽の光が差し込まなければドライブを楽しめるのになと思ってはいたが、まぁ、仕方ない。自然の摂理に逆らうことはできない。運転している方が注意するだけだ。時に、横断歩道や信号の無い交差点は、太陽で見づらくなっているので注意して進まないといけないな思っていた。だが、人影も車もなかった。

 後ろには妻がいい気持ちで太陽の光を避けてうつらうつらしている。気持ちよさそうだ。ラジオから流れる音楽のボリュームを下げる。ちょっとだけ静かになった。あまり静かすぎると僕の方が眠くなるので要注意だ。ラジオではかかっていた楽曲が終わり軽快なおしゃべりが始まった。これでちょっとは眠気から遠ざかれるなと思った。

 と、その時、右後ろの窓に何かがぶつかったような感触を感じた。そう、妻がうつらうつらして座っている席の窓だ。ドン、バサッという音が聞こえたが、急に停車するわけにもいかない。サイドミラーで確認してみるが特に異常を感じない。地面に障害物があったわけでも無い。ましてや、車や自転車の類の音でもなかった。もっと軽い音だったのだ。

 車を停められる場所で確認してみたが、傷も凹みもない。外観を見る限り何事も起きていなかった。しかし、僕の耳には、ドン、バサッという音が確かに聞こえていた。一瞬ではあったが。何がぶつかったのかは今となっては解りようがないのだが、推測するには、鳥だろう。蝙蝠ではない。蝙蝠ならぶつからないだろうし明るい時間帯には飛んでいないだろう。僕の車は黒いフィルムが貼ってあるので外から中はほぼ見えない。ということは、黒いものが見えてそこに向かってきたと仮定すると、もしかするとカラスだったのかもしれない。軽く当たったので、そのまま羽ばたいて飛び去っていったのか。そうであることを信じたい。

 車を止めたところで「ドン、バサッ」って音がしたよねと妻に問いかけると、そこで目を覚ましたようで「知らない」という回答。やはり、謎のままで終わってしまったびっくりした出来事であった。まさか運転中に一瞬眠りに落ちて夢を見たのではないだろうかと背筋が寒くなった。


※注釈
事実をベースにしたフィクションのショートショートです。
タイトルの画像は話の内容とは関係ありません。


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