完全5度と複音程・転回音程
1倍・2倍ときたら、次は3倍である。5度に関係ありそうだとタイトルでバラしている気がしないでもない。
今、220HzのAの音をテノールが出したとする。テノールは実音の1オクターブ違いでト音記号表記するのでややこしいが、ヘ音記号でいえば上の方のAである。その3倍の660Hzの音をソプラノが出したとする。テノールの3倍音が660Hzになるので、これとソプラノのピッチがずれているとうなりが聞こえる。うなりが聞こえなくなったところがハモった状態である。
この時にソプラノの音が何に聞こえるかというと、ト音記号の上の方のEになる。つまり、5度は5度でも1オクターブと完全5度である。それもそのはず、オクターブが2倍で、3倍はそれを超えているので、1オクターブより広い音程になるわけだ。
これをただの完全5度にしたければオクターブ下げればよい。オクターブ上げるのが2倍だったので、オクターブ下げるのは1/2である。つまり、完全5度は周波数でいうと3/2倍(1.5倍)になる。テノールが220HzのAを、アルトが330Hzの音を出すと、これはト音記号の下の方のEの音になる。
この場合、テノールの3倍音とアルトの2倍音が同じ660Hzになるので、これがずれているとうなりが聞こえ、うなりが聞こえなくなった状態がハモった状態である。今までと違うのは基音対倍音ではなく、倍音対倍音が比較の対象になる点である。
テノールのAに対し、最初のソプラノのEのように1オクターブを超える音程を複音程という。一方、アルトのEのように1オクターブ以下の音程を単音程という。
さて、オクターブ、5度が分かったわけだ。ラシドレミ、と数えれば5度だが、ミファソラ、と数えれば4度である。つまり、5度が分かったので、1オクターブに対して反対側の音程である4度も音程が判明したことになる。このような関係にある音程を転回音程という。転回音程の数字を足すと9になる。実際には減・短・完全・長・増を調整する必要があるが、機を見て解説…できるかなぁ。
ここからは小学生の算数の問題。1オクターブが2倍で、完全5度が3/2なのであった。残りの音程は完全4度になるが、これは周波数で何倍になるだろうか? これは3/2を何倍したら2になるかを考えればよく、答えは4/3倍で、これが完全4度の周波数比になる。実際、3/2×4/3=(3×4)/(2×3)、約分して分子・分母の3が消えて4/2=2である。
これはアルトが330HzのEを出しており、ソプラノが440HzのAを出している状態に相当する。この場合、アルトの4倍音とソプラノの3倍音がどちらも1320Hzになり、このうなりをなくすことでハモった状態になる。
以前、「転調まとめ」で完全5度は完全8度の次に重要な音程と書いたのはこういう事情による。つまり、完全5度が3倍音に相当するのに対し、完全4度は完全5度の転回音程であり、4/3倍は分母に2・4・8…以外の数字を持つため、いくらオクターブを調整しても3が約分できず、相当する倍音はない。
これで完全系の音程は終わりである。