4536進行(王道進行、ファーソーミーラー)

コード進行はこれで最後にしようと思う。他にもたくさんあるが、たくさんあるだけに際立って目立つ進行というのはそんなに多くない。ただの素人が細かく分類して解説したところで、ボロが出るに決まっている。

そんな数多くのコード進行の中で4536進行は大変よく耳にする進行である。もしかするとカノン進行よりも多く、ダントツのトップだったりするかもしれない。別名を王道進行とも呼び、次のような進行が基本である。

IV(ファラド)
V(ソシレ)
IIIm(ミソシ)
VIm(ラドミ)

ベースラインは大抵ファーソーミーラーに聞こえる。街中でファソミラが聞こえたらだいたいこの進行である。

この進行は、この進行だけを延々と繰り返すこともできるし、最初のふたつがIV→Vなので、ひたすら繰り返したあと、IV→VのあとにI(ドミソ)やVIm(ラドミ)につなげるのも容易である。この場合は曲のフレーズが一段落することになる。

逆に、頭がIV→Vなのを短調のiv・v、つまりIIm(レファラ)→IIIm(ミソシ)に変えることも容易で、繰り返しの2回目をIIm→IIIm→VImのように展開していくことも容易である。ベースラインはファソミラ、レミラに聞こえる。

個々の和音のバリエーションも比較的多い。まず、すべての和音は全音階上のセブンスを付けられる。

IVmaj7(ファラドミ)
V7(ソシレファ)
IIIm7(ミソシレ)
VIm7(ラドミソ)

V7はVIIm7-5に変えることもできるし、V9に変えることもできる。ベースラインがファーファーミーラーならたいていはVIIm7-5(シレファラ)だろう。

その後のIIImとVImはどちらか一方、あるいは両方を長和音にすることも可能である。属七を付けてもいいし、VIの方は9度も付けられる。IIIの方は第3音をさらに半音上げてsus4も行けるのではないかと思う。

これらを組み合わせると無限とは言わないまでも比較的多くの組み合わせができる。音の組み合わせによって受ける感じがだいぶ変わるので、曲のイメージに合わせて簡単に和音を微調整できる。このあたりがよく使われる理由なのかもしれない。

電車の中なので実際にこの曲の何分何秒からという説明はしないが、例えばコアラモードさんの「七色シンフォニー」(四月は君の嘘オープニング)はベースがソに上がらないパターンで、しかもサビはカノン進行から半音下行(ただし、前回説明したやつではなく、VIm→Iaug→Iみたいな進行)、出だしはI→Iaug→I6のような半音上行が入っている。

あとは最近の曲だとOfficial髭男dismさんの「Same Blue」(アオのハコオープニング)のサビは5/4と6/4の混ざった変拍子に王道進行が乗っていて、スピード感が半端ない。サビの1回目はソに上がらないパターン、2回目はIIIが長和音でベースはファソソ#ラと上がっていく。

進行とは関係ないが、この曲は「歌詞がすげーはっきり分かるのにリズムがさっぱり分からん」という不思議な現象が起きている。普通は逆で、「リズムカッコいいけど歌詞がさっぱり分からん」である。

特に「青のまま募る心」の部分。腕に覚えのある人は楽譜に起こしてみるといい。これはこの部分の音程とリズムが歌詞に合っているからで、「つのる」は「の」にアクセントがあって、音程は上がり、リズムの強拍に来ている。「思い」も同じ。

Bメロはどうも曲が優先のように感じるが、他は随所にこういう配慮が見られるように思う。気をてらって変拍子にしているわけではなく、きちんと考えられている印象を受ける。

…とにかくカッコいい。

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