3度の飯より協和音程
タイトルに特に意味はないです…
3倍音の次は4倍音、といきたいところだが、4倍音は2倍の2倍なので2オクターブ上である。次に出てくる新しい音程は5倍音である。
バスが110HzのAの音(ヘ音記号の下の方のA)を出し、ソプラノがその5倍の550Hzの音を出すと、ト音記号の上の方のCisに聞こえる。つまり、2オクターブと長3度である。
テノールが220HzのA、アルトが550Hzの1オクターブ下、つまり周波数が半分の275HzのCisの音を出すと、テノールの5倍音とアルトの4倍音がどちらも1100Hzとなり、周波数がぴったりあっていればうなりがなくなってハモる。
5倍音が2オクターブと長3度上なので、2オクターブ下げる、つまり4で割ると、5/4=1.25倍が純正長3度の周波数比になる。
長3度の転回音程は短6度になる。長短系の転回音程は、度数を9から引いた上で、長は短に、短は長に書き換えればよい。音程の幅は短よりも長の方が常に半音広い。オクターブから引いてしまうと音程の幅が逆になってしまうので、長短を入れ替えるわけだ。
転回音程は上げを下げにしてから1オクターブ上げればいい。つまり、長3度下げて1オクターブ上げたものが短6度である。周波数の話になおすと、上げを下げにすると掛け算が割り算になるので逆数にすればよく、オクターブ上げるのは2倍すればいいので、純正短6度は8/5倍=1.6倍である。1.25×1.6=2なので確かに合っている。
もうひとつ、音程の計算で分かる音程がある。我々は純正完全5度の周波数比を知っている。ドミが長3度で、ミソが短3度なのだから、長3度と短3度を足せば完全5度になる。
つまり、完全5度から長3度を引けば短3度が分かる。純正完全5度は3/2倍、純正長3度は5/4倍なので、3/2を5/4で割って(小学算数)6/5倍が純正短3度である。分母に2・4・8…以外のものが混ざるので、オクターブを調整しても一致する倍音はない。
テノールが220HzのAなら、アルトが264Hzを出せば、テノールの6倍音とアルトの5倍音が1320Hzになる。これがうならなければハモった状態であり、アルトはCを歌っていることになる。
そして、短3度の転回音程は長6度である。6/5の逆数の2倍だから、純正長6度は5/3倍である。長6度から長3度下げると完全4度になる(ド[完4]ファ[長3]ラ、だから)。実際、5/3を5/4で割ると4/3になり、これは純正完全4度である。
これで、
完全1度
短3度・長3度
完全4度
完全5度
短6度・長6度
完全8度
の周波数比が判明したことになるが、ここに挙げた音程(と、その複音程)を協和音程という。特に、完全が付いているものを完全協和音程、長短が付いているものを不完全協和音程という。これ以外の音程、たとえばここに挙がっていない2度と7度(と、その複音程)は不協和音程である。
…なんで完全・不完全かは聞かんといて。昔はハモるといったら完全5度(とその転回音程の完全4度)だけで、3度でハーモニーを作るようになったのはもう少し時代がくだってから、というのが関係ありそうだけど。
これで協和音程もすべて終わりである。
この先の倍音だが、第6倍音は第3倍音の2倍なので2オクターブと完全5度である。7倍は飛ばして8倍は4倍の2倍だから3オクターブになる。したがって7倍はその間の音程ということになる。
金管楽器を吹いてる人は薄々気づいたであろう。ここまで出てきた倍音を並べると、
基音 完全1度
2倍音 1オクターブと完全1度
3倍音 1オクターブと長3度
4倍音 2オクターブ
5倍音 2オクターブと長3度
6倍音 2オクターブと完全5度
7倍音 ?
8倍音 3オクターブと完全1度
になる。これは金管楽器で、指遣いを変えずに、下から上に音程を上げていった時に出る音程そのものである(トランペットはペダルトーンが出にくい楽器なので、基音に相当する音は出ないですけど)。つまり、金管楽器の指遣いは、倍音列を、スライドやバルブで管長を長くして音程を下げる、という原理になっている。
したがって、金管楽器奏者なら第7倍音は超低い短7度と予想がつくだろう。そしてそれが正解である(自然短7度と呼ぶらしい)。半音の1/3くらい低いのでこれが通常の演奏に使われることはなく、倍音列から分かる音程もこれでだいたい終わりである。
まぁ、金管奏者ならその上の9倍音が長2度というのも知ってるわけですが。これが純正長2度かというと、実は長2度には色々(でもないか)種類があるのでそんなに簡単ではないのです。
次回はそのあたりの話になるかな。