IV→I(アーメン終止)とsus4(ドファソ)
和音の仲間を紹介して、終止形の話を書いていて、大変大事な和音を紹介し忘れていることに気がついた。それがsus4と書かれる和音である。suspended 4thのことで、よくサスフォーと呼ばれる。三度堆積の3度の音を半音上げて4度にしたものなのでこの名前がある。和音の構成音としてはドファソである。
この和音は第4音が文字通り「浮いた」感じがして、半音下がって第3音になろうとする力がとても強い。したがって、ドファソ→ドミソ(Isus4→I)という終止はよく使われる終止形のひとつであり、讃美歌の最後の「アーメン」に合わせられることも多い。
前回の最後の方でIV→Iという終止もあると書いたが、この終止も「アーメン」に合う終止で、この終止のことをまんま「アーメン終止」と呼ぶ。
このふたつの終止を比べると、最初の和音がソかラかの違いしかないので、大変よく似ている。というか、IVの和音に9度を加えるとラがあるかどうかの違いしかなくなる。Isus4にも6度を加えれば、構成音はまったく同じになる。
IVに9度を加えたのなら、Iに加えたって構わないだろう。実際、Isus4add9(この9度はsus2と呼ばれることもある)→Iadd9のような進行も大変よく見る。IVの和音側で見れば6度の音を加えたことになるので、結局、Isus469とIV69は同じ構成音で、この中からいくつか音を選んで使うことになる。
全音階上にあるsus4は、I(ドファソ)、II(レソラ)、III(ミラシ)、V(ソドレ)、VI(ラレミ)の五つである。sus4は同じ根音の長三和音に進みたがるので、それぞれ、ドミソ、レファ#ラ、ミソ#シ、ソシレ、ラド#ミに進みたがるわけだ。
Iは今やった通りで、これの短調版がVIsus4→VIである。この場合、終和音がラド#ミと短調の主和音ではなく長三和音になるため、同主調に転調して終わることになる。よく、レ→ド→シ→ド#と動くアレで、ぱーっと明るくなって終わる感じになる。
Vは長調の属和音だから、Vsus47→V7という進行はサビの前でよく使われる。「翼をください」のサビの直前の進行、といえばピンと来る人も多いのではないだろうか。この曲に大変合った、何か希望を感じさせる進行になる。
9度まで入れてVsus49とすることも多く、構成音はソドレファラになるが、ちょっと並び替えて、ソ+レファラドの形で使われることも多い。いわゆるオンコードというやつで、Dm7 on Gなどと書かれる。9度のないVsus47と比べると、スケールの大きい展開を予感させる進行になる。
これの短調版がIIIsus47→III7(短調の属七和音)である。どちらも和声的短音階に含まれるので、このあと普通にVIm(短調の主和音)にもつながるし、VI、つまり同主音の長調にそのまま転調することも多い。こちらはVsus4と比べて、何かを予感させるドラマチックな雰囲気になることが多い。
IIIsus4に全音階から第9音を加えると、これは長9度ではなく、短9度、つまりIIIsus4♭9になる(ミラシレファ)。これはVsus49と同じようにオンコードで読むとBm7♭5 on Eのように読めるから、減五短七の和音が入っていることが分かる。こちらは不安の中を勇気を持って突き進め! 的な進行になる(ほんまかいな)。
IIsus4は…あまり思いつかないなぁ。