つみのかじつは夢をみせる【編集版⑯】

 毎日昼くらいまで寝て起きて朝ドラ観て…とかいう夢みたいな生活、抜け出せない。4月から毎日朝起きれるようにとか絶対なれない。ほんの1週間前まではちゃんと朝起きていたのに不思議である。

 昨日の続き。今日は2枚ある「逆輸入」シリーズの中から2曲ずつ選んで書いたものをば。この4曲は書き始めるときの気分で選んだ。どこまでも気分。

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作家としての椎名林檎~『逆輸入~港湾局~』『逆輸入~航空局~』

 椎名林檎は、シンガーソングライター、東京事変のボーカル(このバンドにフロントマンという表現は似つかわしくないと思うのでこの表現)の他にも、作家(もちろん音楽面においてだが)の一面がある。自分で歌う楽曲を制作するだけではなく、松本隆のような作詞家や松任谷正隆のような作曲家といった裏方のような仕事も担う。記憶に新しいのは2016年開催のリオオリンピック閉会式で行われた東京大会への引継ぎ式において、佐々木宏を筆頭に、演出振付家のMIKIKO、映像ディレクターの児玉裕一といった名だたるクリエイターたちとともに、音楽を担当したのが椎名だ。あれから5年経った今でも物凄く記憶に残っている。
 そんな彼女の作家としての一面を存分に味わえるのが、2枚のセルフカバーアルバム『逆輸入~港湾局』と『逆輸入~航空局~』である。彼女はこれまで、栗山千明やともさかりえ、石川さゆりやTOKIO、SMAPなどといった有名人に楽曲提供をしている。それぞれの行く先に合わせた楽曲でありながらも、特に女性へ提供しているものには今まで自ら歌ってきた楽曲のように【女の子たちの人生に寄り添った】ものである。
 PUFFYに提供した「主演の女」は、人生そのものを楽しむ女性の主題歌のような楽曲である。
〈突き抜けたいの いいじゃない“生身の女” 曝露したいの 妬いているあなたは誰? ヤりかた次第で必ず楽しめるのよ 何故ならほら人生の主役はあたし 最優秀賞受賞!〉
 ラストのサビで歌われるこの歌詞はまるでレッドカーペットの上を堂々と歩いているような、満面の笑みを浮かべているような感じがする。人生の中で一番自分が映えているその瞬間を描いていて、『三文ゴシップ』収録の「流行」と同じような雰囲気を感じる。この楽曲を聴きながら人通りも多くてネオンサインが輝く道を歩くと本当に気分がいい。
 栗山千明に提供したのは「青春の瞬き」。この楽曲は2016年のNHK紅白歌合戦において、新宿の東京都庁の前で東京事変のメンバーとともに披露した楽曲でもある。
 アルバムの特設サイトに掲載された椎名のコメントに「千明ちゃんがまさに少女から大人になろうとしていた、あの美しい季節を彩りたくて書き下ろした曲です。」とあるように、子供から大人に成長していくその様を描いている楽曲だ。1番では、
〈美しさと正しさが等しくあると 疑わないで居られるのは若さ故なんだ 子供みたいに疲れを忘れて寄り掛かり合えば 僕らはたった独りでいるよりも有りの侭になる〉
と、子供という若さ故だからこそ感じる強さや曇りのない感情を、2番では
〈新しさと確かさを等しくもとめ 生命をほんのすこしだけ前借りしたんだ 大人になって恥じらい覚えて寄り掛かり合えば 僕らはきっと互いの重さを疎ましく思うだろう〉
と、成長してから感じる葛藤やもどかしさをそれぞれ描いている。それらをトータルして、子供から大人に移ろいゆくその瞬間はとても美しいと言えるのだ。
 声優の林原めぐみに提供したのは「薄ら氷心中」だ。アニメ「昭和元禄落語心中」の主題歌として提供しているだけあって、歌詞に使われている言葉の表記は旧かな遣いだ。
 後悔、孤独、めちゃくちゃになる感じ……。しかし独りで生きていくと決めたような、強い意志を感じる1曲である。
〈分かつてんの。仕合わせも、不幸も、刻一刻と消え失せる。冷やこいやうで温かいこの手が、味はひ尽くしたわ。これ以上は何も無いと思ふの。憎く可愛い人よ。痛いやうで気持ち良いお別れよ。過ぎ去つたあの日々。留めてゐるまゝの生命ごと終はらせて仕舞ひたい。〉
 後にリリースされる『三毒史』に収録されている「TOKYO」にも通じているように思えるこの歌詞が、先に記した孤独などをすべてひっくるめた上での強さを感じる1曲だと思わせる。
 テレビドラマ「カルテット」の主題歌としてDoughnutsHoleに提供したのは「おとなの掟」だ。エンディングでメインキャストでありDoughnutsHoleのメンバーである松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平の4人が歌う姿がとても印象的だった。
 大人は自由である。しかしそれに伴うものが自由の比じゃないくらい大きい。
〈好きとか嫌いとか欲しいとか 口走ったら如何なるでしょう ああ白黒付けるのは恐ろしい・・切実に生きればこそ・・ そう人生は長い、世界は広い 自由を手にした僕らはグレー 幸福になって、不幸になって 慌ただしい胸の裡だけが騒ぐ〉
 どうしたってこの世は白黒付けなきゃ生きていけないのだろうか。子供の頃はそんなことなかった気がする。大人は自由を手にした代わりに肉体的にはもちろん、精神的にも忙しなくなる。世界はこんなに広いのに、色々なものを手に入れて視野が狭くなる。それはもうすっと定められている掟なのだ。
 この枚のアルバムでは、彼女のオリジナルアルバムとはまた違ったアプローチの仕方で人生の喜怒哀楽や酸い甘いが表現されている。これは一度彼女の手を離れた楽曲だからこそ感じることであり、彼女の作家としての姿勢を垣間見ることが出来るのだ。

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アルバム1枚通して人生を感じさせる椎名林檎、やはり凄い。ところでしばらくファンクラブ内のブログどころか紅白以降我々の前に現れてくれないのだが、元気なのだろうか。一昨年も昨年も忙しすぎただろうからゆっくり休むついでにご家族と幸せに暮らしてくれていたらそれでいいのだが、一言元気かどうかだけ知りたい。

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おじゃまたくし
知識をつけたり心を豊かにするために使います。家族に美味しいもの買って帰省するためにも使います。