解説《ドイツ・レクイエム》第2楽章「中間部」~だから今は耐え忍びなさい 

2008年04月01日 | ブラームス《ドイツ・レクイエム》

ブラームス《ドイツ・レクイエム》第2楽章 中間部


  So seid nun geduldig, lieben Brueder,
  bis auf die Zukunft des Herrn
  (だから今は耐え忍びなさい、愛する兄弟達よ、
   主の未来のおとずれるまで)


冒頭の諸行無常の「絶望」の淵から(ここではこの理をポジティブには受け止めていないと言えましょう、付随する音楽の暗い性質上から)
ここ中間部では
がらりと雰囲気を変え、変ト長調という
♭(フラット)の六つもついた温かな調性で
(シューベルトの《Impromptu即興曲 op.90-3》がこの調性)
やさしく、前向きにテンポが動きを持ち(Etwas bewegterという
ブラームスの指示が楽譜に書き込まれている)
現世を耐え忍び、
いつか幸福の果実の実るのを待ちましょう、
とポジティブな雰囲気の音楽となります。


「南無阿弥陀仏と唱えなさい、
さすれば極楽浄土へ行くことができるでしょう」


このような教えが、仏教にもあったのではなかったでしょうか?
この中間部にはそんな雰囲気があるのかもしれません。
テクストは更に続きます。


  Siehe, ein Ackermann wartet auf die koestliche Frucht auf die Erde,
  und ist geduldig darueber,
  bis er empfahe den Morgenregen und Abendregen.
  (見なさい、農夫が地上から美味なる果実の実るのを待つ様子を、
   彼は耐え忍ぶ、彼が朝の雨と夜の雨をもらい受けるまで)



この中間部の最後では、
ハープの美しいアルページオが、
「雨」を彷彿させてくれます。

ところで、
同じブラームスによって書かれたこの他の「雨の音楽」があります。
歌曲《雨の歌》、そして、そのメロディーが反映されている
《ヴァイオリンソナタ第1番 ト長調 op.78》もまた
「雨」を思い起こさせる美しい音楽達です。


今年の2月、豊橋にてヴァイオリンの松山冴花さんと
この《ヴァイオリンソナタ“雨の歌”》をご一緒させていただいたのですが、
その演奏に際し、この《ドイツ・レクイエム》における「雨」の描写が
実に多くの想像力をかき立たせてくれたのでした。

《ヴァイオリンソナタ》では、I楽章冒頭からしばらくして、
ヴァイオリンが朗々と歌う背景で、
ピアノが両の手のアルページオがきらきら彩ります。

まさしく「雨の描写」であることを、
この《ドイツ・レクイエム》を勉強したことで
気付くことができたのでした。これはもうけものでした!!


雨が降ることで、果実はいよいよ熟すのです、
・・・雨は恵みの雨・・・
では、我々人間にとっての恵の雨とは・・・?


つづく

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