解説《ドイツ・レクイエム》第2楽章~「諸行無常・盛者必衰の理」をブラームスに見る


2008年03月31日 | ブラームス《ドイツ・レクイエム》

ブラームス《ドイツ・レクイエム》第2楽章


日本人としてこの楽章のイメージを受け止めるのに
最適と思われる文章があると思うのです、それは、



祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理を現す
奢れる者も久しからず
ただ春の夜の夢の如し



これは『平家物語』の有名な冒頭の一節、この内容に
ヨーロッパの19世紀を生きたクラシック音楽作曲家
ブラームスの《ドイツ・レクイエム》は
つながるものがあると思われるのです。


冒頭のテクストを抜き出してみますと、


  Denn alles Fleisch, es ist wie Gras
  und alle Herlichkeit des Menschen wie des Grases Blumen
  (全ての肉体は、まるで草のよう、
  そして人間の全ての栄華は、まるで草の花のよう)



テクストは続きます


  Das Gras ist verdorret
  und die Blumen abgefallen
  (草は枯れ、花は散り落ちる)



「諸行無常」「盛者必衰の理」は、
国境と時空間を越えたあらゆる世界に
生きているものなのだと痛感いたしました。

「諸行無常」の心は、西洋人ブラームスの中に
大きく居場所を構えていたのでしょう、
この《ドイツ・レクイエム》はその
確たる証拠と言えるのではないでしょうか。


静かにコーラスによって始めに歌われる上記のテクストは、
一通り静かに歌い終わると、今度はホルンの警告音とともに
不気味に忍び寄るティンパニーの足音(♪トトトトンは、
ベートーヴェンのあの有名な「運命の動機」とも重なる)
に誘われて、次第に音量と緊張感を増してゆきます・・・

それらはまるで絶望の国の使者のよう!?
再び、大音量で全オーケストラとコーラスが戦慄(わなな)きます、


Denn alles Fleisch, es ist wie Gras!!
(全ての肉体は、まるで草のよう)


つづく

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