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一冊でも多くの本を世の中に届けるために。書店発信でムーブメントを巻き起こす!

株式会社アスコム 営業局販売促進部 菊山 清佳

【ワンパブ・オープン社内報】は、ワン・パブリッシングで働く人を通して、会社・雑誌・メディアが今どのような新しいことにチャレンジしているかをお伝えしている連載です。今回は、グループ会社の株式会社アスコムで営業として働く菊山さんを取材しました。

【プロフィール】

菊山 清佳(きくやま さやか)
第二子出産後にパートの募集を探していたところ、アスコムの東海エリア書店販促スタッフ募集を発見。2014年9月に採用される。その後、2020年3月末に本社配属に。現在は、大手取次店、書店法人、東海地区書店、書籍ごとの販売促進など多岐にわたって担当している。


書店販促によってベストセラーが誕生することも。だからこの仕事はやめられない

いつもお世話になっている紀伊國屋書店新宿本店の担当者さんと打ち合わせ。 

―プロフィールを拝見しました。最初は名古屋で東海エリアの書店販促スタッフとして働いていらっしゃったのですね。

はい、2人目を出産した後に少しずつ働きたいなと思っていたところ、アスコムのパート募集を見つけて応募しました。もともと読書が趣味で、書店さんを巡るのも大好きだったので、書店さんで働く方々と本の話ができて、しかもお金ももらえるなんて最高だ!と思って(笑)。当時名古屋に住んでおりまして、東海三県の書店さんの営業を担当していました。

―その後、正社員採用となって東京のアスコム本社に異動になったとのことですが、現在の具体的なお仕事内容を教えてもらえますか。

大きくわけて二つあります。ひとつは、大手取次店さん、書店法人さん、東海地区の書店さんの担当です。仕事内容は、書店法人として一括で仕入れてくださる本部のバイヤーさんとお話をして、法人全体の売上促進や販売強化などを行うというもの。

もうひとつは、書籍ごとの販売促進です。具体的には、新しく発売する書籍の新聞広告をエリア限定で出してみて、その反応を見ながら、全国でどのように展開していくか社内で話し合います。それらのデータをもとに、書店さんの担当者とどのくらいの冊数を仕入れてもらうか、店頭での陳列や見せ方をどうするかなど決めて行く感じです。

最近の売れ行き状況やお客様の様子などを、詳細までヒアリング。 

また、書店さんの売上をより伸ばしていけるような施策を考えることも重要なミッションです。じつは、全国的にコツコツ売れている商品なのに、店舗によっては一定数補充できていなかったり、目立たない場所に置かれていたりするケースが意外とあるんです。そういった売り逃しがないように、世の中の流れやシーズン、各書店さんの特性に合わせて、フェア企画などもご提案しています。

―これまでに、「予想とは違った売れ方をして驚いた」といったエピソードはありますか?

少し前の話で恐縮ですが、2017年に丸善名古屋本店さんでビジネス書フェアをやっていただいたことがありました。広告を出している本とか新刊が売れて行くなかで、2014年に発売された『「話のおもしろい人」の法則』(野呂エイシロウ・著)という一冊がものすごく売れたんですよ。フェア開催中、一番売れたんじゃないかな。

ビジネス書フェアの様子。(画像:本人提供)

その情報を東海エリアの他の書店さんにお伝えして販促したところ、それぞれの店舗でもどんどん売れて行き、結果、2017年から2019年の間に12回重版しました。さらに、2019年に三省堂書店名古屋本店さんで実施された「ビジネス基本書チャンピオンシップ」にも選出されて……。すごく印象的な展開でしたね。
 
―ということは、最初に丸善名古屋本店さんのビジネス書フェアでピックアップされなかったら、12回も重版されなかった……?
 
そうなんです。確かにすごくおもしろい本なんですが、発売当時は広告など大々的なプロモーションを行っていなかったこともあり、日の目を浴びるチャンスが少なかったのだと思います。それが、書店さんでの販促によって売れたことをきっかけに、雪玉を転がすように他の店舗にもムーブメントが広がっていき、実際に売上増に繋がって、重版が決定する。しかも、発売3年後に。こういう成功体験があると、販促の仕事はやめられないな!と思います。

特技は「目を引く拡材を作ること」。資料にも職人技が光る!

―他にも、書店さんでの印象的なエピソードがあれば教えてください。

担当法人の丸善ジュンク堂書店さんで発売直後から売れ行きが良かった『心療内科医が教える本当の休み方』(鈴木裕介・著) という本があるのですが、特にビジネス街の店舗で売れていたんです。そのことから、「働いている現役世代に受けている」と予想しました。頑張り方は知っているけど、休み方を身につけられていないビジネスマンが買っているのではないかと。

そこで、新年度の疲れが出る頃や五月病の時期にあわせて、猫のぬいぐるみを使った目立つ拡材(書籍などを売るために、売り場に飾るポスターやPOP、のぼりなどのこと)を制作して置いてもらったところ、今年(2024年)5月度の同法人アスコム書籍ランキングで1位になりました。

猫のぬいぐるみとゆるりとした雰囲気の拡材に惹かれて、癒しを求めるビジネスマンたちが手に取っていく。(画像:本人提供)

―なるほど! これは目を引きますし、本の内容がイメージしやすいですね。思わず手に取ってしまいそうです。こういった販促物や拡材は、菊山さんが考えているのですか?
 
そうですね。書店さんからリクエストされる場合もありますし、他の営業メンバーから相談されて制作することもあります。決してクリエイティブなことが得意なわけではないんですが、いろいろなものを作っているうちに、気づいたら職人みたいになってしまっていて。いまでは「拡材の人」として知られています(笑)。意識しているのは、「五感に訴える拡材」です!

「うさぎとかめ」の世界観をあらわした、キュートな拡材。(画像:本人提供)
同僚みんなでディスプレイ用の偽札(笑)を作ったことも良い想い出!(画像:本人提供)
推し活ブームにヒントを得た拡材。うちわが目を引く。(画像:本人提供)

―これまでのお話を聞いていると、普段から書店さんに足繫く通われているのですね。基本は在宅ではなく出社ですか?
 
はい、毎日9時半には出社しています。出した広告に応じて急に商品が動くことがあるので、在庫確認や、追加分を何冊発注するかといったことを同じ部署のメンバーと顔を合わせて話し合いながら進めています。午前中はメールチェックや発注処理などの業務が中心、午後からは書店さんを訪問して打ち合わせをして、社に戻ったら資料作成……といったスケジュールです。
 
―そういえば、拡材だけでなく資料にもこだわっていると聞きました。
 
変な効果を入れたりわかりにくいボケを交えたり、怒られないレベルでふざけるのが密かな楽しみなんですよ。売上5万部を突破したときの注文書には、「波に乗っている感」をイラストで表しました。本の良さを担当の方に伝えるために、書店さん向けの注文書はできるかぎり文字情報だけでなく、視覚的にも伝わるように工夫しています。

注文書の一部を抜粋。波に乗ってます!
注文書の一部を抜粋。QRコードを読み取ると、本書に載っているレシピが見られる。すべて菊山さんの自作。

いろいろやっていますが、最終的なゴールはやっぱり「本が売れること」。私は営業として、編集が心を込めて作った本が一冊でも多く売れるためにあの手この手で動きます。編集が行ってくれる著者発信などのプロモーションと合わせて、書店さんにより良い場所を確保してもらえるようアプローチしていくわけです。アスコムみんなの頑張りと書店さんの協力が、最終的には実売数として表れることを目標に、日々頑張っています。

仕事もプライベートも全力で楽しむ。これが菊山流・仕事の流儀

大好きな本に囲まれて仕事をするのは、本当に楽しい! 

―ここからは、菊山さんご本人のお話も聞いていきます。仕事をしていて一番うれしい、楽しい瞬間と、大変だと感じる瞬間、それぞれ教えてください。
 
うれしいときは、やっぱり本が売れたときですね。星の数ほど商品があるなかで、限られた売り場をアスコムの商品のために使わせてもらっているので、書店さんの売上に貢献できることが一番うれしいです。
 
一方で、10年前の入社時ですでに出版不況と言われていて、実際に年々書店さんが閉店していき、お世話になった担当者さんが退職されていき……市場がシュリンクしているのをひしひしと感じます。消費者の可処分所得が減り、なおかつ広告で物を買う人も減っているなかで、ほかのコンテンツと比べて手間と集中力が必要な「本」という商品をどう届けて行くか。これがやりがいでもあり、悩ましい部分でもありますね。
 
―今後チャレンジしたいことや夢は何でしょうか?
 
アスコムってミドル世代やシニア向けの実用書が強い出版社だと思っているので、あえて若い人にリーチしていくために何ができるかを常々考えています。WEB広告なのかSNSなのかインフルエンサーさんなのかはまだわからないんですが……20代30代に本を届ける手段をもっと模索していきたいですね。
 
プライベートでは、一年半前にインド映画にハマって以来、英語字幕で映画を観ることが増えたので、英語の学び直しをやりたいです。ちなみに、先日は新潟までインド映画を観に行きました。私のデスク周りもすごいことになっていて。インド料理作りにもハマってます。あまりにインドの話ばかりするので、同僚から「インド愛の圧が強い」とクレームが来るくらいです(笑)。

(左)菊山さんお手製のインド料理。(右)菊山さんの推し俳優が並ぶ「やる気が出るデスク」。(画像:本人提供)

―最後に、これからアスコムに入りたいという方に向けて、メッセージをお願いします。
 
基本的に褒め合う文化がある会社です。頑張ったことはちゃんと評価されます。お互いの良さを認め合って働いている。でも過度に干渉し合わない。心地良い距離感でのびのび働ける会社ですね。あとは、自主性を尊重してくれます。自分からやりたいことをどんどん提案すれば、みんなが応援してくれますよ!
 
本が好きで、書店さんが好きで、アスコムが好き。菊山さんのお話から、そんな熱い想いが伝わってきました。これからも、書店を訪れた人をあっと言わせるユニークな拡材を期待しています! 菊山さん、ありがとうございました。
 

(取材:水谷映美/撮影:鈴木謙介)