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なぜNPBでぜいたく税を導入すべきではないのか

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アンケートでは導入すべきが44.2%

 3月30日、日本ハムの新球場エスコンフィールド北海道で2023年のプロ野球が開幕した。DELTAでは開幕に先立ってTwitterで各球団の総年俸(推定)を公開している。今季を戦う戦力のためにどれだけのコストを支払っているか、把握するためだ。


 またこの総年俸の公開と同時にアンケートも行っている。問いは「NPBはぜいたく税を導入すべきだと思いますか?」。NPBでも時折、導入の議論が行われるテーマについて質問した。結果は「導入すべき」が44.2%、「導入すべきではない」が55.8%。やや「導入すべきではない」が優勢だが、それほど偏らずに分かれている。

 オフにはソフトバンクがアメリカ帰りの有原航平を獲得した際に、このテーマに関する議論が起こったこともあった。NPBにぜいたく税を導入すべきなのだろうか。考えてみたい。

ぜいたく税はなぜ生まれたのか

 まずぜいたく税という制度はなぜ存在するのだろうか。

 現在プロスポーツでぜいたく税が導入されているのはMLBやNBAといったアメリカのスポーツだ。世界一のスポーツビジネス大国アメリカでは、「スポーツを面白くするのは戦力均衡である」という理念がある。この戦力均衡を目指すためにリーグのシステムが設計されており、ぜいたく税もその理念のもとに生まれた制度の一つだ。NFLにもぜいたく税こそないもののサラリーキャップ制度が導入されており、戦力均衡を目指す制度を設けているのは同様である。

 対照的なのは欧州サッカーだ。日本のJリーグをイメージしてもらってもよい。リーグは1部、2部、3部……とヒエラルキー構造をとっており、成績によって上位下位のクラブが昇降格する。アメリカンスポーツの理念が「戦力均衡」であるならば、欧州サッカーの理念は「競争」だ[1]。

 そしてNPBはMLBをベースに、戦力均衡を目指すモデルで設計されている。ドラフトでの選手獲得、ウェーバー制、球団による選手の保有権など、すでに戦力均衡のための施策は実行されている。ぜいたく税もその延長と考えると、議論が出てくるのは当然だ。

 しかし現状のNPBの環境を考えた場合、ぜいたく税制度の導入を考えるべきではない。

目的の「戦力均衡」はすでに実現している

 なぜぜいたく税を導入すべきではないのだろうか。さきほどぜいたく税は戦力均衡のための施策であることを説明したが、そもそもNPBでは現時点で戦力が均衡しているのだ。

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