1.02 Weekly Report Vol.645

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１． DELTAの目線　～ホームランテラス設置は中日を強くするのか～

1月28日、キャンプを前に大きなニュースが飛び込んできた。中日の本拠地であるバンテリンドームナゴヤ（以下、バンテリンドーム）が改修され、2026年から外野フェンス前にテラス席が設置されることが報道されたのだ。バンテリンドームは広大なフィールドと高いフェンスの影響で、本塁打が出にくい球場として知られている。中日の慢性的な得点力不足はこのバンテリンドームの特性に原因があるとされてきた。今回の改修は、こうした本塁打の出にくさを改善し、攻撃力向上につながることが期待されている。

中日　バンテリンドーム外野フェンス手前にテラス席を増設　2026年から使用予定 - スポニチ Sponichi Annex 野球

このニュースに対して、ファンや関係者からはさまざまな意見が寄せられている。特に近年の得点力不足を見てきた中日ファンの中には、今回の改修を歓迎する声も多いのではないだろうか。では、もしバンテリンドームにテラスを設置したとすると中日は強くなるのだろうか。DELTAアナリスト宮下博志にインタビューを行った。

なお、今回の内容は外野テラス席設置による収入の増加という商業面でのメリットは考慮せず、純粋にフィールドの形状がゲームにどのような影響を与えるかのみに焦点を絞っている。

テラス設置でも得点の入りにくい球場のままの可能性も？

―詳しい話に入る前に、まず大前提としてバンテリンドームがどのような球場なのかを改めて確認したいと思います。データから見ても、やはり得点が入りにくい球場なのでしょうか。

宮下：はい。ここ数年のデータを遡っても、バンテリンドームは非常に得点が入りにくい球場と言えます。各球場におけるプレーの起こりやすさを示すパークファクター（PF）を見てみましょう。バンテリンドームの得点PFは昨季0.86。つまり、セ・リーグ本拠地の平均に比べて得点が14%少ないことを意味します。これはセ・リーグの他の球場と比べても、かなり低い水準です。バンテリンドームは確かに得点が入りにくい球場と言えるでしょう。

1.02 Essence of Baseball

セ・リーグ各球団本拠地の得点PF（2024年）
ヤクルト 1.17
DeNA 1.04
広島 1.02
読売 0.98
阪神 0.94
中日 0.86

―この得点の入りにくさは、やはり本塁打の出にくさによるものなのでしょうか。

宮下：最大の要因は間違いなく本塁打の出にくさです。先ほどのパークファクター（PF）の本塁打版である本塁打PFを見ると、バンテリンドームは0.72。つまり、セ・リーグ本拠地の平均と比べて本塁打が28%少ない環境です。外野が狭くなり、本塁打が出やすい環境になれば、おそらく得点は入りやすくなると考えられます。

セ・リーグ各球団本拠地の本塁打PF（2024年）
ヤクルト 1.53
読売 1.10
広島 0.92
DeNA 0.85
阪神 0.78
中日 0.72

ーなるほど。ちなみに、過去にもホームランテラスを設置した球場はいくつもあったように思います。これらの球団では実際に本塁打の増加が見られたのでしょうか。

宮下：はい。ホームランテラスの先駆者であるソフトバンクの本拠地みずほPayPayドーム福岡（以下PayPayドーム）の例を見てみましょう。PayPayドームでは2015年にホームランテラスを設置しました。DELTAでは過去3年間のデータをもとにPFの算出を行っていますので、純粋なホームランテラス設置の影響が反映されているのは2017年からです。それを踏まえてみると、PayPayドームは2014年の本塁打PFが0.75だったのに対し2017年はなんと1.35。それ以降も1.2-1.3で推移しており、テラス設置後はパ・リーグで最も本塁打が出やすい球場となっています。

PayPayドームの本塁打PF推移（2014-24年）
2014 0.75
2015 1.08
2016 1.22
2017 1.35
2018 1.24
2019 1.20
2020 1.19
2021 1.28
2022 1.24
2023 1.27
2024 1.22

ーなるほど。ではバンテリンドームもテラス設置後は本塁打が出やすくなり、以前よりかなり得点が入りやすい球場になるということですね。

宮下：実はそうとも言い切れないのです。もちろん本塁打は増えるでしょうし、得点も以前よりは増えると思われます。ただ、大きく増加するかと言われると何とも言えないのです。というのも、バンテリンドームはその広さ以外にも得点が入りにくい要因があると考えられるからです。