刺激の棚卸
はじめに
この記事は、[Board Game Design Advent Calendar 2021] の第18日目の記事として書かれました。
Board Game Design Advent Calendarには3回目の寄稿となります。
過去の記事は以下のリンクから読む事ができます。
- 目指すべきゲームとは?
- 繋ぐゲームデザイン
お時間ありましたらこちらもよろしくお願いします。
自己紹介
皆様こんにちは。
ワンモアゲーム!の梶野です。ボードゲームのルールを考えています。
これまでの代表作品です。
- SCOUT!
- Reputation(国内ではBidders!として制作したゲームのリメイクです)
動機
前回作品から2年間、新作を構想しているものの、全く成果が出ていない状態です。誰か助けて欲しい。
締切を設けることで自分を追い込み、ゲーム制作のきっかけにできればと思い、今回のBoard Game Design Advent Calendarに参加しました。不純な動機ですが、ご容赦いただければと思います。
刺激の棚卸
過去作品を振り返ると、自分のゲーム制作には刺激的な仕組みと出会うのが一番良いことがわかりました。これまでの2年間で刺激を受け、メモを取ったゲームや出来事をピックアップして振り返ります。
どんな刺激を受けたのか、感情を抱いたのかを、ここと同じ"引用"書式で記載していきます。
1.アナログゲーム
なかなか名作が出ないスポーツテーマのボードゲームの中で、名作と謳われたバスケットボスをプレイする機会に恵まれました。
6シーズンの間、競り落とした選手をチームに加え、チームの総合力でトロフィー(勝利点)を稼ぐシンプルなゲームです。
このゲームの凄さは、試合をステータス比較のみで完結させ、バッサリと切り捨てたところだと思います。
スポーツゲームにおいて、試合はゲームの中のメインに置かれて当然とも言えるのですが、そこが冗長になると切り捨てた視点は、見習うべきところがありました。
過去作品のBidders!をリメイクしたReputationと言うゲームがあります。
この制作の際に、リメイクを受けてくれたNinja Star GamesのDanさんから相談されていたことがありました。
その相談に対する解決のアイデアは結局提案できなかったのですが、テストプレイ会で、その問題点を見事に解決しているゲームに出会いました。それがサーオボロスです。
競りを行う際、競り値で少ない数字を言っても上乗せされてしまうので、一気に競り値が上がってしまう事象が、Bidders!にはありました。
サーオボロスは、競り上げる際に特定の競り値を言うこと自体がプレイヤーの利益になり、競りの価格が一気に変動しない様に制御できるルールを持っていました。
自分が解決できなかった問題点を、解決したゲームが目の前にあること。
こんな刺激的な経験は無いと思いました。
2.デジタルゲーム
リンク先の動画を見て一目で興味を抱きました。動画を観ていただくのが一番早いのですが、紹介文には以下のように書いています。
「上面見下ろし型パズル」と「サイドビュージャンプアクション」の2ゲームを組み合わせたパズルゲームです。
あるボタンを踏むまでは倉庫番(上面見下ろし型パズル)、踏んだ後は動かした荷物が重力で下に落ち、1段だけジャンプできるマリオ(サイドビュージャンプアクション)になるイメージです。これでゴールを目指します。
目的達成のために、後半のルールを意識しながら、前半のルール上でプレイさせる。アナログゲームにもいくつかありますね。
このゲームの良いところはプレイヤーに物事の見方を変えさせている点です。このアイデアだけでもプレイヤーに面白そうだと思わせる、魅力的なゲームに見えました。
画面上にランダムに発生する街(+移動したい客)を路線で繋いで、目的の街に連れて行くだけのシンプルなゲームです。プレイしているとチクタクバンバンを思い出します。
注目したのは一度引いた路線をノーコストで引き直せる部分です。
電車を引くゲームの中で、コスト無しで引き直せるゲームに出会ったのは初めてで、その時点の最善の路線を考えて、ストレスなく実現できるのは私の中で画期的でした。
3.出来事
史上初めて原油先物取引でマイナス価格が発生しました。詳細はリンク先を読んでいただくとして、売り手は、買った原油を誰かにお金を支払って原油を引き取ってもらった事になります。
過去作品Futures!で先物取引を題材にゲームを制作しましたが、ここまでの出来事をイメージすることは出来ませんでした。
もしリメイクする際には、こういった出来事をメモしておいて、新しい要素として組み込むのも面白いかもしれません。
普段は趣味でサッカー観戦ばかりですが、オリンピック・パラリンピックではバスケットボールばかり見ていました。非常に魅力的なスポーツです。
車いすバスケの最大の特徴は「持ち点制」。選手は、障がいが重い順に1.0点から0.5点刻みで4.5点までクラス分けされていて、コート上の5人の持ち点の合計が14.0以下になるようにしなければならないため、チーム編成も重要な戦略になる。
もちろん同じクラスの選手の中でも優劣はあるのですが、このルールのために重度の障害を持つ方も含めた戦術があります。これが面白い。
井上雄彦さんの「リアル」と言う漫画でも、このあたりに触れています。
振り返り
こうやって棚卸してみると、なかなか悪くない刺激を受けていますね。インプット大切です。
私はこういった刺激をメモ帳に書くのが好きです。
文字を書くのが苦手なので億劫ですが、その億劫さによって自分の記憶に残りやすく、メモ帳なのでまとめて振り返りやすいからです。
いくつかは今もアイデアがゲームになりそうなので構想していますが、ひとつも形になっていない。のが現在の進捗です。何か形になればいいな…。
インプットは悪くないのにアウトプットできていない問題は、今回棚に置かせていただいて、一緒に筆も置かせていただきたいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。