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世界の物流を大きく変えた大発明〜コンテナ
「20世紀最大の発明とは何か?」という質問があったら、皆さんはどう答えますか? よくある候補としては、飛行機、原子力、コンピューター、抗生物質などがあります。
生活への影響力を考えると、携帯電話やインターネット、さらには日本のインスタントラーメンという候補も挙げられますね。
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しかし最近、大穴として取り沙汰されているのは「海上コンテナ」です。えっ?と思いますよね。「コンテナってただの箱じゃない?」と思う方もいるでしょう。確かにその通りですが、この海上コンテナによる物流システムが世界を大きく変えることになったのです。
それはあっという間に世界に広がり、私たちの生活を支えるなくてはならないものとなっています。今回は、そんなコンテナにまつわる話をお届けします。
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◆盗難あたりまえ。海上コンテナが生まれるまで
古来から人間は船を使って様々な地域に荷物を運び、交易を行ってきました。物々交換から貨幣による信用取引制度が発明されて、貿易は一気に盛んになりましたが、その運搬の仕方はどうだったのでしょうか。
麻なら麻、豆なら豆という単位で、それぞれが用意した木箱や布に梱包し、積み荷として上げ下ろしを行っていました。ですので、大きさも重さもバラバラで不揃いなものでした。これは1,000年以上も変わらずに行われてきました。
船が港に到着したら、この荷物を人夫が人力で担ぎ下ろし、馬車などの陸上の輸送手段に積み込む。これが貿易の当たり前、常識となっていたのです。
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「ヴィンランド・サガVinland_Saga」より
18世紀末の運河時代になると、規格化された箱を作り、そこに不揃いな荷物を詰めて輸送の便宜を図るようになってきますが、空箱を送り返す手間や、箱自体の重さもあり、なかなか普及しませんでした。
戦後、ブルドーザーやトラックなどの荷役作業用の重機械が普及すると、今までの荷役作業は改善されてきました。
そして、鉄道・自動車・船の間での積み替え作業を省略するためにコンテナの発想が生まれましたが、それはまだ、それぞれの会社や国の規格で独自のものだったのです。
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◆全世界の統一規格のコンテナの誕生
今日につながる船舶用のコンテナの発明者はマルコム・マクリーンという人物です。1956年にアメリカ最初のコンテナ専用貨物船を就航させました。
この当時、クレーンなどの機械はすでにありましたが、まだ補助的なもので、港湾労働者たちが大勢で人力で数日かかりで積み下ろしを行っていました。そのため、岸壁で順番待ちをしている無数の本船が無駄な時間を過ごしていました。
トラック運転手だったマクリーンは、この船から岸へ、そして岸から倉庫やトラックへの積み下ろし作業に膨大な時間がかかっているのを見て、トラックごと船に積んでしまえば時間の大幅な短縮ができると考えたのです。
その後、彼は経営者となり、このアイデアを実用化させるにあたり、トラックごとではなく、荷物の入った箱部分を規格化し、「コンテナ」とすることを発案しました。
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海上輸送は、コンテナになり、船に積んだコンテナを別の港で規格化された車台を持つトレーラーに下ろせば、そのまま客先まで運べるという、海陸一貫輸送システムが完成します。
時代もちょうどベトナム戦争が勃発し、兵站の物資輸送も増大したこともあり、このコンテナ化のシステムはアメリカ国内の同業者やヨーロッパ、日本の船会社も追随し、あっという間に普及していくことになります。
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これによって物流に関するコストと時間が劇的に削減されることになりましす。
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◆コンテナのその効果
クレーンが使える港を開発へ
コンテナの登場は世界の都市の構造スタイルも一変させました。「物流コストが下がる」ということに気づいた人や企業は、「従来型の輸送に適した立地」から「海上コンテナをもっとも有利に使える立地」へと移動することになります。
そして、このイノベーションに気がつかなかった人や企業、コンテナ埠頭が開発できない港は逆に廃れていき、大きな格差が開いていくことになります。
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コンテナ自体がセキュリティの高い倉庫になる
さらに、このコンテナ化には副次的効果として、積み荷の盗難、「荷抜き」を抑えることにも成功しました。
それまでは、むき出しの袋などに入ったままなので、中に何が入っているのかが分かりやすく、人手で運べる大きさだったため、作業員による盗難が多発していました。送り主は盗難による損失をあらかじめ10%くらい見込んで送ったともいいます。盗まれるのは当たり前というのが常識・・・。
しかし、コンテナだとそうはいきません。中身の貨物は運送中も確実に保持・保護され、積み重ね可能で、野積みの状態でも倉庫代わりになり、荷抜きの問題も解消されることになります。
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コンテナの普及に伴い、当然、今までの大量の港湾労働者たちが必要なくなりますので、大きな抵抗、反発、反対運動も起きますが、世界の港には続々とコンテナ専用の埠頭が完成していきます。
1960年代後半には、日本の神戸港がコンテナ取り扱い個数の世界一を誇っていたこともあります。
このコンテナ化はわずか60年あまりのことですが、あまりにも当たり前になってしまい、その便利さや恩恵に気づいていない人が多いかもしれません。
もし、コンテナの標準化がされていなければ、今日の物流のAmazonの配送や翌日配達、格安な運賃などは、まだまだ先のことだったのは確実と言われています。
欲しいものが届くって、当たり前のようだけど、本当はありがたいことなんですね。
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<参考資料>
『コンテナ物語』、日本港運HP、「コンテナ、コンテナターミナル、コンテナ船、物流のWikipedia」など
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