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偵察機の話〜その任務と歴史

◆任務の統合〜専用偵察機は消えていく

 前回の記事「飛行機に与えられた最初の任務とは?」の続きになります。
 生まれたての飛行機たちが、二度の世界大戦という、過酷な環境下に置かれたことによって、否応なしにその性能を大きく向上させることになりました。そして、戦場の任務の多様性に応じて、実に様々な種類の軍用機がつくられるようになります。

 そうなると、どんどんと機種が増えるんじゃないの?と思いますが、現実はそうはなりませんでした。一つの軍用機が複数の任務をこなせるようになって、逆に縮小するようになるのです。生命の自然淘汰みたいですね。
 その兆しが現れたのは、まずは偵察機からでした。

 偵察機は何よりも自分を撃ち落とそうとする敵機に追いつかれないように高速を求められます。また戦闘機もその偵察機に追いつくように速度が最優先になります。
 ということは、最速目的で開発している戦闘機から武装をとってしまえば、これはもう、とんでもない最速の偵察機になりますよね。実際、米英機では、戦闘機の武装を外してカメラを搭載した偵察機が活用されてきました。

 有名な例でいうとP-38ライトニング戦闘機のスピードと航続距離を活かした偵察機仕様のF4/5が有名です。
 「星の王子さま」の著作で有名なサン=テグジュペリ氏が乗っていたことでも知られていますね。
 また長大な飛行距離が必要で、搭載する機器が大きい場合や搭乗員が複数必要な場合等は、搭乗員が複数乗員する攻撃機などが、偵察の役割を兼務するようになります。

P-38戦闘機の偵察機型F-4,F-5

◆攻撃機と爆撃機も統合されていく流れに

 つぎに格納スペースが限られている空母において統合化が始まります。時代と共にエンジンの性能が向上し始め、馬力に余力が生まれてくるようになると、搭載している機種を統合しようという話が出てきます。

 当時の日米艦載機にはその任務に応じて、戦闘機、爆撃機、攻撃機、偵察機などを搭載していました。アメリカ海軍は偵察機は戦闘機が兼務しているケースがほとんどなので偵察機を除いた3機種がメインになります。
 爆撃機と攻撃機は、爆弾の搭載の種類や用途によって名称が違うのですが、爆弾を搭載するという点においては同じです。爆装を魚雷にして艦船に当てるのが目的なら攻撃機(雷撃機)、命中率の高い急降下で攻撃をするなら爆撃機とかですね。明確な違いは、時代や国によって曖昧になるのですが、それはまたの機会に。

アメリカ海軍の攻撃機(上段)と爆撃機(下段)

◆流星改とA1スカイレーダーの登場

 面白いことに日米海軍は同じようなことを考えてまして、以下のような流れで搭載機種は統合化されていきます。

【日本海軍】
・爆撃機(急降下爆撃も可能) 九九式艦爆→彗星→流星改
・攻撃機 九七式艦攻→天山→流星改
流星改の登場で爆撃と攻撃を兼務することに。
【アメリカ海軍】
・爆撃機 SBDドーントレス→SB2Cヘルダイバー→A1スカイレーダー
・攻撃機 TBDデバステーター→TBFアベンジャー→A1スカイレーダー
戦争には間に合わなかったもののA1スカイレーダーで統合される。

ちなみにSB2Cヘルダイバーは急降下爆撃も魚雷攻撃機もできる一応のマルチロール機なんですが、使い勝手が悪く現場の評判は良くなかったようです。
 分かりやすく表にしてみました。

日米海軍機の統合の流れ
A1スカイレーダーと流星改

◆日本の偵察機開発だけが残った訳は?

 さて、このように技術力の向上、とくにエンジン性能の向上で余力が生まれてきたことで、偵察オンリーという機体は、次第に開発されなくなっていきます。偵察という任務は、戦闘機や爆撃機など、他の機種からの改修・流用でほぼ足りていたのです。

 しかし、日本だけは違いました。戦争開始前から終戦間際まで、ずっと「偵察」専用機の開発に力を入れていたのでした。
 これは開発機の機数を見れば明らかで、日本は大戦中の試作機まで入れると16機種と、2位のアメリカの倍近くの偵察機を開発しており、世界でもダントツのトップです。
 中には、軍部の戦略計画で貴重な情報を収集するという「司令部偵察機」という新しいカテゴリもを作り、世界初の戦略偵察機である九七式司令部偵察機という飛行機も生み出しているのです。

 不思議ですよね。なんで日本だけがこんなに偵察機開発にこだわり、力を入れたのか?それは日本独自の事情があるからでした。→続きます。



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