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シティーとローカルを繋ぐ3分間のラブストーリー

魅力的な楽曲を初めて聴いた衝撃は、恋に落ちた瞬間とどこか似ている。

『丸ノ内サディスティック』『ラブ・スコール』『水の星へ愛をこめて』『Flashdance…What A Feeling』『All the Young Dudes』『Take Five』……。

そう、見ての通り私は惚れっぽい。

素敵な殿方とデートを重ねるよりも、気に入った曲をリピートして聴く回数の方がはるかに多い。音楽とは常にアツアツなのだ。

そして今、1981年にリリースされたこの曲と私は浮名を流している。



──イヤホンをはめ、そっと目を閉じる。
たったそれだけで、見知らぬネオン街へと降り立った気になるのだ。

「あら、いらっしゃい」
「こんばんは」
「いつものでいい?」
「あ……はい」

ちょっと敷居が高いスナックのママと、シャイな常連さんとの物語をつい想像してしまう。(そしてこのふたりはくっつきそうでくっつかない、見ていていじらしくなる関係性なのだ)

好きな曲を聴くと感じる心地よさは、美味しいお酒を呑んで酔いが回ってきた状態とも似ている。だから”スナック”という場面が頭に浮かぶのかもしれない。

「はい、○○さん」
「あぁ、ありがとうございます」
ふいに目が合って、照れながら笑い合う。

多分このふたりは、これを励みに一週間を乗り越えてきたんだろうな……。と考えている間に、『フライディ・チャイナタウン』は鳴り止んだ。

「あー、終わっちゃったよー」

パッと目を開くと、何かが始まる予感を彷彿とさせるイントロとは裏腹に、辺り一面見慣れた景色が広がっていた。

穏やかな時間が流れるこの街も好きだけど、今はもうすこしだけこの世界観に浸っていたい。

華やかな曲にしばらく身を任せていると、気付けば金曜日から土曜日へと日付が変わっていた。

Inspired by……
『フライディ・チャイナタウン』泰葉

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中山かず葉
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