見出し画像

新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響~最新・有効求人倍率 比較グラフ付き (全国・北海道・東京都・沖縄県)~

企業からの求人数(有効求人数)をハローワーク(公共職業安定所)に登録している求職者(有効求職者数)で割った値が『有効求人倍率』。

景気が良くなると、求人数が増えて倍率は高まります。逆に、不景気になれば求人数が減って倍率が下がるもので雇用状況から景気を知るための統計資料の一つだ。

●「1」より大きくなるほど求人数(仕事の数)が多い(売り手市場)
●「1」より小さくなるほど求職者(仕事をしたい人の数)が多い(買い手市場)

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)が世界中に広がり終息の目途がたっていない今、日本の経済に甚大な影響を及ぼしている。当然ながらその影響は雇用にも及ぶ。

コロナウイルスとよく比較されるのが2008年9月15日に米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻から始まったリーマンショック(金融危機)は記憶に新しいだろう。

リーマンショック時の厚生労働省「雇用動向調査結果の概況」を確認すると、「会社都合」が多い。つまりリストラだ。

自らの意思で退職するのではなく、会社の都合で退職せざる負えなかったということだ。

ではリーマンショック時の有効求人倍率はどうだろうか。
2000年から現在(2020年4月時点)の有効求人倍率をグラフにしたものだ。

最新・有効求人倍率 比較グラフ

画像1

リーマンショック直後の数値は「0.4」倍。

2007年までの有効求人倍率は、堅調に右肩上がりで推移してきたが、リーマンショック以降、約3年ほどは1倍を割り込んだままだった。
つまり、求職者数が求人数を上回る状態が続いていたということだ。
この時期、「派遣切り」「内定取り消し」という言葉が日本中に飛び交った。

では、コロナウイルスではどうだろうか。
2020年1月中旬に日本でも耳にするようになり、緊急事態宣言が4月7日に発令された。
4月時点の有効求人倍率をみてみよう。
2020年4月28日に公表された3月時点の有効求人倍率だ。

画像2

少なからず減少に転じているのがわかる。
少し話の角度を変えてみよう。

今回の有効求人倍率の比較グラフには私が事業を展開している北海道、東京都、沖縄県の数値を比較しているが、各地の状況によっては求人会社の特徴も異なる。

北海道であれば地場に根付いた人材会社が既に存在しており、既に上場も果たしている。北海道、東北エリアを強みとし、地域の産業や強みを理解し展開を図っている。大手人材会社とも差別化ができている印象がある。

東京都は、みなさまのご承知おきの通り、人材会社は多く存在し、世界展開も行っている大手人材会社も数多くいる。

一方、沖縄県においては、WEBを活用した求人サイトが近年になり多く誕生してきている印象だ。
沖縄県で初めて動画と求人サイトの連動を実現した動画求人サイトオキナビもその一つだ。しかし、それは最近の話であり、古くから沖縄県の求人市場を支えているのが求人情報誌だ。

今回のコロナウイルスの影響により、多くの地場人材会社のサービス見直しが行われると予想している。(特に沖縄)

掲載料金型(求人掲載費用)がサービスに対する報酬と変化する。

既に北海道や東京では当たり前に存在する考え方だが、求人掲載する一つの目的は人材確保だ。(応募や採用決定)
少子高齢化となり労働力人口が減少してきている今、各事業者のPRを求職者へ届けることに工夫が求められている。SNSや動画の活用などもその一つだ。企業同士の採用競争が激しくなるのは当然である。

採用コスト

採用における話をするときに忘れてならないのが、『採用コスト(人材採用にかかる経費)』だ。
これは「外部コスト」と「内部コスト」の2つに分類できる。

■外部コスト
採用活動における求人広告費や会社説明会の会場費、パンフレット制作などの経費だ。世間一般的には、外部コストの大部分は求人広告費が占めているケースが多いのも事実だ。

■内部コスト
人事(採用に関わる従業員)にかかる経費だ。
自社従業員に対する宿泊費・交通費などだ。入社後の研修費用や求人広告や説明会出展時における打ち合わせ関係、当日の運営、面接などの業務にかかる時間などが内部コストだ。計算式で表すと【社員の時給×時間】であるともいえる。

上記を踏まえて、新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響を考えてみる。

採用手法の変化

画像4

日本全体は中小企業で構成されているため、各地で求人数が減少してきているのがグラフで読み取れるだろう。
求人情報誌、求人サイトも減少している考えてよい。

面接においては従来から「対面」を重視してきた企業も多くいるのも事実。

今回のコロナウイルスはSTAY HOMEと言われるように外出自粛が叫ばれている中、当然ながら「対面」は感染リスクも感じ敬遠されている。

当然ながら「対面NG」なら「WEB活用」という選択がでてくるだろう。しかし、これもまた企業・応募者のWEB面接ができる環境・設備の問題もあり、スムーズに進んでいないのも事実。

とある求職者からの相談として、これまで事務系の派遣で就労していたが、今回のコロナウイルスの影響もあり契約が突然打ち切られた。その後、就職活動をしたものの企業側のコロナウイルスによる採用不安もあり採用に至らず。20社ほど求人に応募したが面接すら受けられない状況であった。結果的にこれまでのキャリアとは異なる宅配サービスの配送職として勤務スタートしている。

画像3

話を戻そう。

間違ってはいけないのが、リーマンショックとコロナウイルスは全くの別物ということだ。

リーマン・ショックは金融機関に起因、今回はウイルスに起因している。

簡単にいえば、リーマンショックは、金融機関が危機的な状況に陥り信用収縮が発生したことで金融システムの機能は大きく低下し、世界的に株価が暴落したことで経済活動が停滞した。

経営資源でもあるヒト・モノ・カネでいえばカネが回らなくなったということだ。

一方、コロナウイルスは「ウイルス」という目に見えないものに対する恐怖と感染力の強さであり、経営資源でもあるヒト・モノ・カネの中におけるヒト・モノの行き来が停滞し実体経済に甚大なダメージを与えている。
それに加えてコロナウイルスは「ステルス感」が最も恐ろしい。インフルエンザと違い、無症状感染があり得るからだ。

リーマンショックと違いコロナウイルスの流行が経済に与える影響は計り知れない。

金融緩和や補償などで”カネ”が回るようにしても”ヒト”と”モノ”が動かない限り経済が息を吹き返すことが見込みにくい。

しかしながら、回らないからといって経済活動自体が破滅してしまうのは元も子もない。

収束の時期が見えず不安ではあるものの、withコロナと言われるように、コロナウイルスの存在を前提に経済を回すように日本政府も舵を切るタイミングが可能性としてあるだろう。

現在、日本ではコロナウイルスで影響を受けた事業者に対して新型コロナウイルス感染症特別貸付、持続化給付金など補償・支援策を講じている。

日本は、大企業0.3%、中小企業99.7%とほぼ中小企業だ。更に、従業員5名以下の小規模企業は日本の全企業数の9割弱を占め、雇用の1 /4占めている。

しかし、先が見通せない現状では、新型コロナウイルス感染症特別貸付、持続化給付金など活用しても企業の経営不安は取り除くことは難しく、限定的な補償では2ヶ月も持たない事業者は多いのも現実だ。

有効求人倍率は景気を知るための統計資料と冒頭に説明したが、上述の内容から今後状況は好転するのは考えにくく、むしろ悪化する傾向になるだろう。

その中で、店舗型の飲食店はデリバリーサービスに展開を拡げ、自宅にいても買い物ができるネットショッピングなどの非接触型ビジネスが急成長してくるようになる。

世の中が急速にIT化が進むと共にアプリケーションエンジニアという職種需要が急速に伸びたように、従来、当たり前だった「職種」がなくなる、または減少に転じ、これまで馴染みがない、もしくは全く新しい「職種」が誕生することもあるだろう。

いずれにしても有効求人倍率は世の中の一つの指針ともなるので、今後もどのように推移していくのが注視が必要だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?