霜夜鐘十字辻筮 和本
霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら)
全五編、上中下巻の全15冊。明治13年。
武田交来・録、大蘇芳年・画。
本作は合巻形式に歌舞伎新報の連載内容をト書きなどを改めて再編集された。河竹黙阿弥のこの読み物は最初から舞台用の脚本としてではなく歌舞伎新報の連載作品として執筆されており、上演と同時期に活版和装の単行本が刊行された。上演時には内容をそのまま小説化した正本写やボール表紙の単行本、活字版の合巻などが浮世絵師によって手掛けられて次々と出版されて当時大きなブームとなった(出典)。
実際の舞台化は明治13年に新富座で行われた。紙面での評価の高さに比べ、舞台での評価は今一つだったようだ。当時歌舞伎の脚本は基本的に非公開で一般の人々が読むものではなかったが、京都や大阪での上演、講談や落語での口演など広く受け入れられた。本作は黙阿弥の散切物の中でも傑作と評価されたが五幕という長さもあり現代ではほとんど上演されていない。ただ、歌舞伎の脚本を一般読者に公開するという新しい試みは演劇史上で重要な位置を占める(出典)。