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月百姿 月宮迎 竹とり

平安時代初期に成立した日本最古の物語文学・竹取物語より、かぐや姫の昇天の場面。月を描いた最も有名な場面にして、月百姿でも屈指の名作。

満月の夜、昼のように周囲が明るく輝き、天から天人たちが雲に乗って降りてくる。五尺ほど浮かんで並び天人を前に人々は不思議な力に圧倒され、身動きが取れなくなる。天人たちのうち一人がかぐや姫を迎えに来たと告げるが、翁は涙を流しながら必死に姫を引き留めようとする。かぐや姫も翁との別れを惜しみながら手紙を書き残し、形見の品を渡して別れを告げる。だが、天人が天の羽衣を姫に着せると、かぐや姫の心から人間界への愛情が消え去り、翁への情愛さえもすっかり忘れ去られた。かぐや姫は何の未練もなく、天人たちに囲まれて空を飛ぶ車に乗り込み、静かに月の世界へと昇っていく。

この場面は、別離の切なさと天上界と人間界の断絶を象徴しており、翁の情愛が羽衣によって消える悲劇が美しさと共に幻想的に描かれた。竹取物語はかぐや姫が天へと昇る光景をもって、儚くも壮麗な幕引きを迎える(出典)。

翳(長い団扇)
これは珍しい銀色の変わり摺りが施されていた
本作では着物は空摺り、内輪が金色が使われる
後刷りだが面白いので入手した
巧妙に悲しみを表情ではなく全身で描写する翁

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