一魁随筆 一ツ家老婆
浅茅ヶ原の鬼婆伝説。武蔵国(現在の台東区花川戸)に住む老婆が旅人を殺して金品を奪い生計を立てていたが、ある日稚児が泊まったときに娘は母の行いを諫めるために稚児に変装し犠牲となって戒めた。実はこの稚児は浅草寺の観音菩薩の化身であり、老婆に人道を説くために現れたのだった。その後、老婆は悔い改めて仏門に入って死者を弔ったとも、近くの姥ヶ池に身を投げたとも伝わる(出典)。
芳年はこの伝説を尾上菊五郎 一つ家老婆や月百姿の孤家月のように度々描いている。本作では老婆と娘の表情が際立つ。
浅草寺の観音菩薩にまつわる伝説は、江戸時代以降、演芸や芝居で広く知られ、浮世絵にも多く描かれた。台東区花川戸は浅草寺の東側、隅田川沿いの江戸時代の町人町があったあたりで、北に進めば裏浅草へと繋がる。
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