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東錦浮世稿談 清草亭英昌 芸者小竹 小竹が兄熊吉

幕末の江戸、機密を聞いてしまった芸者の小竹が兄の熊吉の手にかかって命を落とす、という悲劇の物語のようだ。

因果は巡り小車の糸に世渡る唄ひ女が
操の節に糸音を含む名詮自性の
小竹が最期 兄の刃にかゝるとき 惜む命も千
束の塚の草葉の露と消えて行く 荼火の
煙や横雲にしのゝめ烏告げぬ間を 誰
しら浪と思ふよしなく 浪士の為に立聞
せられ 後の証と鳴る鈴を 盗むに耳を
ふさぐてふ 世の諺も宜なりかし

仮名垣魯文記

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因果の巡り合わせは車輪のように回り
芸で世を渡る芸者の
操を表す節回しに込められた想いの声
その名の通りの小竹の最期
兄の刃に倒れるとき
惜しまれる命も千束の塚の
草葉の露のように消えていく
火葬の煙は横雲となり
夜明けの烏が知らせる前の時間に
何者とも知れぬ浪人と思いもせずに
浪士たちに立ち聞きされ
後の証拠となる鈴の音を
盗み聞きする時は耳をふさげというが
世の中の諺もまことにその通りだったのだ

作:仮名垣魯文

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