【ノルウェー/フロム】美しい景色を目の前に、現実と頭が初めて紐付けられた
朝、目が覚めると、柔らかな光がカーテンの隙間から差し込んでいた。ノルウェーに来てから4日目の朝。オスロでは天気に恵まれなかったけれど、フィヨルドに来てようやく晴れの日が続くようになってきた。
同室のイギリス人が、「今日はどこに行くの?」と聞いてくれた。「まだ何も決めていないんだ」と返事をすると、散歩ルートを教えてくれた。でも地図を見ていると、完全なる登山コース... 体力に自信のない私は、「セ、センキュー」と苦笑い...(英語ですぐに伝えることもできなかったので。悲しき事態)
それでも昼過ぎまで暇なことは決まっていたので、登山コースを本気で検討した。結局、「大丈夫そうだったら、行こう」と適当な答えに行き着き、まずは散歩へ。ホステルからフィヨルドまでは歩いて5分。ホステル脇の小川さえ、世界遺産の一部に思えた。
まずは湾をまわってお散歩へ。だんだんと人がまばらになり、そこらじゅうで聞こえてくる中国語も聞こえなくなってきた。
ひたすらに歩いていると、急に目の前がひらけた場所があった。太陽の光が水面に反射し、きらきらとゆっくりと動く。
このときわたしは初めて心の底から「楽しい」と思えた。
目の前に広がる絶景。一人でヨーロッパにいること。足を前後に踏み出せば、どんどん進めるという当たり前の事実。
普段、感情を表に出さないわたしが気がつけば、笑顔になっていた(ひとりで笑って歩いてるとかかなり不審者ですが。そんな人がいたら近づかない)。「あ、本当にヨーロッパに来たんだ」と初めて現実と頭がリンクした。この1年間、ずっと願っていたヨーロッパという土地へ。
そこからわたしの足取りはゆっくりとなった。わたしのカメラ技術ではこの景色を美しく写真に収めることはできないから、せめてわたしの目にしっかりと焼き付けておこうと。
もはや山に登るという選択肢はなくなった。目の前の景色をみたいのと、ただただゆっくりしたい気持ちに流されていた。
朝のフェリーが船着場から出発する。これから昨日わたしがみた絶景をみにいく人たち。もう一度あの景色をみたいと思ってしまう。けど、それを上回る景色をいまこの瞬間目にしている。その事実がわたしを幸せにさせた。気持ちはただただ穏やかだった。
ゆっくりと散歩して、観光地へと戻ってきた。あとは列車の時間まで待機。先ほどの余韻にひたりながら、ただただ列車の時間を待っていた。その時間され楽しいひと時となった。
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