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パーム油は、私たちの暮らしや、生物多様性、環境、気候危機とどう関連しているのでしょうか?
パーム油(パームオイル)は、私たちの生活に深く関わる植物油の一つで、多くの製品に使用されています。その生産過程で生物多様性や環境、社会にさまざまな問題を引き起こしています。一体何が起きているのでしょうか?
私たちの暮らしとどう関係しているのか事実を知り、何ができるのか、見ていきましょう。
パーム油とは?
パーム油とは何ですか?
パーム油は、「アブラヤシ」という植物の果実から採れる油です。果肉からはパーム油、種からはパーム核油が取れます。これらは成分が異なり、さまざまな製品に使われています。
※ココナッツ油もパーム油も、どちらもヤシ科の植物から採れる「ヤシ油」です。 しかし、ココナッツ油は「ココヤシ」、パーム油は「アブラヤシ」から採取されます。
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パーム油はどこで生産されていますか?
アブラヤシは高温多湿な熱帯地域で育ちます。特に、インドネシアとマレーシアが世界のパーム油生産の80%以上を占めています。
パーム油はどのように使われていますか?
パーム油は、食品や日用品など数多くの製品に使われています。例えば、インスタント麺、スナック菓子、チョコレート、アイスクリーム、マーガリン、洗剤、シャンプー、口紅などです。
日本でも非常に幅広く使用されています。
パーム油の生産が環境や社会に与える影響は何ですか?
パーム油の需要が増えると、アブラヤシの農園(プランテーション)を作るために熱帯雨林が伐採されます。これにより、野生動物の住む場所が失われ、絶滅の危機に瀕する種もいます。また、森林火災が発生し、煙害(ヘイズ)として周辺の人々や生態系に悪影響を及ぼすこともあります。
また、パーム油の生産が進むことで、環境だけでなく社会にも問題が生じています。例えば、熱帯雨林の伐採により土地を失う先住民の問題や、プランテーションでの過酷な労働環境が挙げられます。一部の地域では、児童労働や低賃金労働が問題視されています。これらの問題は、持続可能で公正な生産体制を整えることで解決が求められています。
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パーム油の生産が進む理由は何ですか?
パーム油が世界中で広く使われている理由は、その生産効率の高さとコストの低さにあります。アブラヤシは他の油料作物と比べて、少ない土地で多くの油を生産できます。そのため、安価で多用途な油として需要が高いのです。また、食品に使われる際には味や香りに影響が少ないため、さまざまな商品に適しています。さらに、保存性が高いことも特徴です。
なぜ熱帯雨林を守ることが重要なのですか?
熱帯雨林は地球の「肺」とも呼ばれ、私たちが呼吸する酸素を生み出しています。また、多種多様な動植物が生息している場所であり、生物多様性を支える重要な役割を果たしています。さらに、森林は二酸化炭素を吸収することで地球温暖化を防ぐ働きもしています。しかし、パーム油の生産によって森林が減少すると、これらの恩恵が失われるだけでなく、気候変動が加速する原因にもなります。
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パーム油と気候危機の関係はどのようなものですか?
パーム油の生産は気候危機に大きな影響を与えています。どのような関係があるか見ていきましょう。
森林破壊による二酸化炭素の増加
パーム油を生産するためには、熱帯雨林を伐採してアブラヤシの農園(プランテーション)を作る必要があります。森林は二酸化炭素(CO₂)を吸収し、酸素を供給する役割を果たしています。しかし、森林を伐採すると、その吸収能力が失われるだけでなく、切り倒された木々が蓄えていたCO₂が大気中に放出されます。これにより、地球温暖化が進む原因となります。泥炭地の開発がもたらす影響
パーム油の生産地は泥炭地(炭素を多く含む湿地)が多い地域にも広がっています。泥炭地は長い年月をかけて炭素を蓄えた土壌ですが、この土地を乾燥させてアブラヤシを植えると、土壌に蓄えられていた炭素が大量に放出されます。このプロセスで放出されるCO₂は、森林伐採よりもさらに深刻な影響を及ぼします。森林火災の増加
熱帯地域では、伐採した土地を焼き払う「焼畑」という手法が使われることがあります。この方法で起きる森林火災は、大量の煙とCO₂を発生させます。特にインドネシアでは、乾季に森林火災が広がり、大気汚染や健康被害を引き起こしています。さらに、森林火災は気候変動を悪化させるだけでなく、周辺国にも煙害(ヘイズ)として悪影響を与えています。生態系の崩壊が気候危機を加速
パーム油生産による森林破壊は、生物多様性の損失にもつながります。森林が失われることで、そこで暮らす動植物が生息地を失い、多くの種が絶滅の危機に瀕しています。生態系が崩れると、気候を安定させる働きが弱まり、気候変動がさらに加速します。
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日本の状況と私たちとの関連は?
日本におけるパーム油の用途
日本では、パーム油は食品から日用品、さらには工業用途に至るまで、非常に幅広く使用されています。一人当たり年間4-5kg消費していると言われています。
食品
パーム油は、安価で安定性が高く、食品の品質や保存性を向上させるため、多くの食品に使用されています。
スナック菓子:ポテトチップスやスナック類の揚げ油として使用されています。酸化しにくいため、長期間の保存が可能です。
インスタント麺:麺を揚げる際に使われ、香ばしい風味を与えると同時に保存期間を延ばします。
マーガリンやショートニング:パーム油は固まりやすい性質があるため、パンや菓子作りに使われるマーガリンやショートニングの主成分として使われています。
チョコレートやアイスクリーム: パーム油は、口溶けを良くしたり、食感を安定させるために使用されます。
調理油や加工食品:カレーのルー、レトルト食品、冷凍食品など、多くの加工食品にも利用されています。日用品
パーム油は、日常生活で使われるさまざまな製品の原料としても重要です。
石鹸や洗剤:パーム油を原料とした界面活性剤が、洗浄力を高める成分として使われています。
シャンプーやボディソープ:保湿性を高めるための成分として利用されます。
化粧品:パーム油由来の成分が、口紅、ファンデーション、ハンドクリームなどに使用され、滑らかさや保湿性を与えています。工業用途
パーム油は、食品や日用品だけでなく、工業製品にも広く使われています。
バイオマス発電:日本では再生可能エネルギーとして注目されるバイオマス発電の燃料としても、パーム油が使用されています。
プラスチックの原料:パーム油は、植物由来の原料としてバイオプラスチックの生産にも活用されています。
潤滑油や塗料:工業用の潤滑油や塗料の一部にも、パーム油が使用されています。外食産業
日本の外食産業では、揚げ物や調理油としてパーム油が広く使われています。特にファストフードチェーンや飲食店で使用される油の多くにパーム油が含まれています。これには、コストの低さと品質の安定性が大きく関係しています。医薬品
パーム油由来の成分は、カプセル剤の被膜や軟膏の基材など、医薬品の製造にも利用されています。
日本における特徴と課題
日本ではパーム油の用途が非常に多岐にわたるため、その影響を消費者が意識するのが難しい状況にあります。食品ラベルに「植物油脂」と表示されることが多く、具体的にパーム油が含まれているかどうかを知るのが難しいのも特徴の一つです。持続可能なパーム油を選ぶ取り組みを進めるには、消費者がその用途や問題点を理解することが重要です。
持続可能な選択を広めるために、消費者だけでなく企業や政府も積極的に取り組む必要があります。
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日本におけるパーム油の問題とは何ですか?
輸入依存による環境影響の間接化
日本はパーム油を主にインドネシアやマレーシアから輸入しています。そのため、パーム油生産による森林破壊や環境問題が海外で発生しているため、国内での意識が低い傾向があります。しかし、日本が大量に輸入することで、結果的に熱帯雨林の減少や温暖化を助長していると言えます。日本の消費が他国の環境にどのような影響を与えているかを考えることが重要です。バイオマス発電での利用
近年、日本では再生可能エネルギーとして「バイオマス発電」が注目されていますが、その燃料として大量のパーム油が使われています。この背景には、パーム油が安価で手に入りやすいという事情があります。しかし、持続可能でないパーム油を発電に利用すると、森林破壊やCO₂の排出を助長し、結果的に環境負荷を増大させてしまいます。特に環境NGOからは、バイオマス発電用パーム油の利用が「再生可能エネルギーとして適切ではない」と指摘されています。製品に含まれるパーム油の見えにくさ
日本では食品や日用品にパーム油が多く使われていますが、商品ラベルに「パーム油」と明記されることは少なく、原材料名として「植物油脂」などと書かれることが一般的です。そのため、消費者がどの商品にパーム油が含まれているのかを把握しづらく、持続可能な選択をすることが難しい状況です。持続可能なパーム油の認知度の低さ
RSPO認証の持続可能なパーム油を選ぶことが環境保護につながるといわれています(最近の分析では、その基準を疑問視しているものもあります。)が、日本では認証制度の認知度が低く、その普及が進んでいません。また、企業による取り組みも一部に限られており、持続可能なパーム油への切り替えが進んでいないのが現状です。
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私たちにできること
私たちにできることを紹介しています。知ることも大事なので、情報や動画、読み物も掲載しています。
商品選びを工夫する
持続可能なパーム油を使った製品を選び、環境に配慮する企業を応援しましょう。RSPO認証ラベルを探すことが一つの方法です。私たちが責任を持って製品を選び、使用する必要があります。情報を広める
パーム油に関する問題や持続可能な選択肢について、家族や友人と話し合うことも大切です。企業に働きかける
持続可能なパーム油を採用している企業の商品を選ぶことで、企業の取り組みを支援し、より多くの企業に持続可能な方法を採用する動機を与えられます。政府の政策に注目する
バイオマス発電や輸入規制など、政策レベルでの変化を求める動きに注目し、自分の意見を発信することも一つの手段です。
データ
日本における認証パーム油の調達状況 ( 農林水産省)
日本の輸入量の推移、パーム油の流通工程に関係する企業の状況などパーム油白書(ボルネオ保全トラスト・ジャパン)
国内では唯一のパーム油白書を発行している団体。バックナンバーを無料で閲覧できます。平成26年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書(環境省)第1部>第3章>第4節 グリーン経済を支える自然資本
動画
森をふたたび(ウータン・森と生活を考える会) 中井信介監督(17分)2015年、インドネシアでは大規模森林火災により東京都9つ分以上にあたる広さの森が焼失。たくさんの命が失われている貴重な熱帯林を、かつて違法伐採や違法採掘をしていた村人が再生しようとしています。
読みもの
リジェネラティブな解決に向けて
ネクサス(気候危機と地球の生態系の再生に取り組む世界で最も包括的な解決策と課題のリスト)ネクサス
▲左上で日本語に切り替えて読むことができます。
ネクサス(Nexus):Project Regenerationのウェブサイト
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